2009年5月号
エムエスツデー 2009年5月号

電子機器専用避雷器
MDPシリーズのJIS対応
(株)エム・システム技研 設計部
は じ め に
近年、数多い雷の影響で電子・情報機器およびネットワークの被害が拡大しています。雷による国内の被害額は年間1000億円を超えていることが、新聞などで報じられています。すなわち、雷に起因する災害からこれらの機器を保護することは極めて重要な問題になってきています。
そのために使われる避雷器に関して、その性能や安全性を規定するJIS規格があり注1)、エム・システム技研では、すでにご愛用いただいている電子機器専用避雷器「エム・レスタ」MDPシリーズの全23機種(電源用避雷器4機種、通信および信号用避雷器19機種)について、関係するJISへの対応を実現しました。
今回は、関係するJIS規格(表1)について、またJISへの対応を実現した避雷器のクラスとカテゴリについてご紹介します(表2)。
表1 MDPシリーズが関係する雷保護関連のJIS
規格番号 | 規格名称 | 要 約 |
JIS C 5381-1 | 低圧配電システムに接続するサージ防護 デバイスの所要性能及び試験方法 |
低圧電源用避雷器の所要性能 と試験方法 |
JIS C 5381-21 | 通信及び信号回線に接続するサージ防護 デバイスの所要性能及び試験方法 |
通信及び信号用避雷器の所要性能 と試験方法 |
表2 今回対応した機種別カテゴリ、クラス対応表
形 式 | 用 途 | クラス | カテゴリ | |||
III | C1 | C2 | C3 | |||
電源用避雷器 | MDP-100 | 電源用 | ○ | |||
MDP-200 | ○ | |||||
MDP-D12 | DC電源用 | ○ | ||||
MDP-D24 | ○ | |||||
標準信号用避雷器 | MDP-24-1 | 電子機器専用 | ○ | ○ | ||
MDP-65-1 | ○ | ○ | ||||
MDPA-24 | 電子機器専用 (電池内蔵形、寿命モニタ機能付) |
○ | ○ | |||
MDPA-65 | ○ | ○ | ||||
センサ入力用避雷器 | MDP-TC | 熱電対用 | ○ | ○ | ||
MDP-RB | 測温抵抗体用 | ○ | ○ | |||
MDP-PM | ポテンショメータ用 | ○ | ○ | |||
MDP-LC | ロードセル用 | ○ | ||||
MDP-JS | セルシン用 | ○ | ○ | |||
MDP-SP | スローパルス信号用 | ○ | ○ | |||
ネットワーク/回線用避雷器 | MDP-4R | RS-422/RS-485用 | ○ | ○ | ||
MDP-PA | PROFIBUS-PA用 | ○ | ○ | |||
MDP-LWA | LONWORKS用(FTT-10A) | ○ | ○ | |||
MDP-DM | データム用 | ○ | ○ | |||
MDP-DM3 | MsysNet用 | ○ | ○ | |||
MDP-EC | エコノケーブル用 | ○ | ○ | |||
MDP-FT | テレメータ用(3.4kHz用) | ○ | ○ | |||
MDP-MFA | テレメータ用(50bps用) | ○ | ○ | |||
MDP-TL | 電話回線用 | ○ | ○ |
雷保護に関連する規格について
高圧配電システムに使用される避雷器については、JISやJEC注2)で性能などが規定されていましたが、低圧配電システムや通信・信号回線に使用される避雷器に関しては、従来性能を規定するJIS規格がありませんでした。
2004年に、IEC規格をそのまま取り入れた形で、新しく雷保護関連のJIS規格(表1)が制定されました注3)。
以下、MDPシリーズ避雷器に適用すべきこれら2つの規格、「JIS C5381-1」と「JIS C5381-21」についてご紹介します。
(1)電源用避雷器のJIS規格(JIS C5381-1:2004)
この規格は、電気回路および機器に接続するサージ保護デバイスに対する性能試験を規定していて、その試験分類には3種類(クラス I 試験、クラス II 試験、クラス III 試験)があります。
試験波形と一般的な設置場所を表3に示します。今回、電源用避雷器に適用したのは「クラス III 試験」です。MDPシリーズの通信用および信号用避雷器を同じ制御盤に並べてご使用いただけるようにクラス III を選びました。
表3 電源用避雷器 クラス表
試験分類 | 試験波形 | 一般的な設置場所 |
クラス I | 直雷波形(10/350μs) | 外部雷保護を施した建築物の低圧引込口 |
クラス II | 誘導雷波形(8/20μs) | 低圧引込口近辺、分電盤 |
クラス III | コンビネーション波形 (電圧1.2/50μs+電流8/20μs) |
機器の直前 |
この試験方法によって試験した避雷器は、保護すべき設備または機器の直前に設置し、一般に雷過電圧から設備および機器を保護します注3)。
(2)通信及び信号用避雷器のJIS規格(JIS C5381-21:2004)
交流1000V(実効値)以下または直流1500V以下の公称電圧の通信および信号回線に接続するサージ保護デバイスの性能特性、試験方法について標準化を行い、生産および使用の合理化、品質の向上を図るために制定されたものです。
通信及び信号用避雷器の試験条件を選定するため、カテゴリを表しています。ここで、カテゴリCについてご説明します。
C1は平均的な誘導雷サージを300回、C2は電磁遮蔽のない悪環境で発生する強力な誘導雷サージを10回、C3は低レベルで電流波形の長い誘導雷サージを300回受けても、それぞれの避雷器が劣化することなく処理できる能力を要求しています。
この規格ではほかにも7つのカテゴリが規定されていますが、C1、C2を満たしていれば耐量と耐久性に優れた避雷器であり、C3を満たしていれば耐久性に優れた避雷器であるといえます(表4参照)注4)。
表4 通信及び信号用避雷器 カテゴリ表
カテゴリ | 試験の種類 | 開回路電圧 | 短絡回路電流 | 最小印加回数 |
A1 | 非常に遅い 上昇率 |
≧1kV 0.1~100kV/sの上昇率 |
10A 0.1~2A/ms(上昇率) ≧1000μs(持続時間) |
適用しない |
A2 | 交流 | 0.1~20Armsの範囲から試験を選択 | 単サイクル | |
B1 | 遅い上昇率 | 1kV 10/1000 |
100A 10/1000 |
300 |
B2 | 1kV又は4kV 10/700 |
25A又は100A 5/300 |
300 | |
B3 | ≧1kV 100V/μs |
10A、25A又は100A 10/1000 |
300 | |
C1 | 速い上昇率 | 0.5kV又は1kV 1.2/50 |
0.25kA又は0.5kA 8/20 |
300 |
C2 | 2kV、4kV又は10kV 1.2/50 |
1kA、2kA又は5kA 8/20 |
10 | |
C3 | ≧1kV 1kV/μs |
10A、25A又は100A 10/1000 |
300 | |
D1 | 高いエネルギー | ≧1kV | 0.5kA、1kA又は2.5kA 10/350 |
2 |
D2 | ≧1kV | 1kA又は2.5kA 10/250 |
5 |
JIS C5381-21 : 2004より
おわりに
MDPシリーズは、標準信号用、測温抵抗体用、熱電対用、ポテンショメータ用、ロードセル用、パルス信号用などに加え、NTT専用回線用など、電子機器に必要な避雷器はすべて取り揃え、小形・軽量・プラグイン構造の避雷器としてロングセラーになっています。
今回JIS対応にすることができ、従来以上に安心してお使いいただけるようになったと思います。
MDPシリーズ避雷器およびそのJIS規格対応についてご意見、ご要望などございましたら、どうぞエム・システム技研のホットラインまでお気軽にご連絡ください。
注1)関連するJISについては、『エムエスツデー』誌2006年1月号の「計装豆知識」でご説明していますので、ご参照ください。
注2)(社)電気学会の電気学会電気規格調査会標準規格。
注3)JIS規格、電源用避雷器のクラスについては、『エムエスツデー』誌2007年8月号の「JIS対応になりました! 並列接続形電源用避雷器(形式:MAK2)、N-PE間保護用避雷器(形式:MAKN)」でもご説明していますので、ご参照ください。
注4)カテゴリについては『エムエスツデー』誌2006年9月号の「わずか7mm幅! 薄形避雷器 MD7シリーズの開発」でもご説明していますので、ご参照ください。
*エム・レスタは(株)エム・システム技研の登録商標です。