2009年7月号
エムエスツデー 2009年7月号

JIS C 5381-1 クラスII対応!
三相一体形電源用避雷器(形式:MAT)
(株)エム・システム技研 開発部
は じ め に
平素は、エム・システム技研の避雷器(M・RESTERシリーズ)をご愛顧いただきありがとうございます。
エム・システム技研では、このたびクラスⅡ(JIS C 5381-1)に対応した、三相一体形電源用避雷器を開発しましたので、その概要と特長についてご紹介します。
1.三相一体形
三相一体形とは、三相電源ラインのすべての線間、対地間の雷保護機能を1つの筐体に収納した避雷器です。
三相電源だけでなく、単相2線、単相3線にも対応できるオールインワンタイプです。
2.外 観
図1にMATの外観と寸法を示します。電灯分電盤用協約形配線用遮断器注1)の2極幅(50mm)寸法に仕上げていますから、分電盤にすっきり収納できます。また、W50×H98×D60mmのコンパクトサイズであるため、分電盤に限らず設置場所を制約されません。
取付方法はDINレールと連接取付板の中からお選びいただけます。
図2にMATの前面パネル図を示します。
3.仕様の選定
表1 MATの選択仕様一覧
使用電源電圧 |
・AC 240V |
・AC 440V |
電源系統 |
・単相2線/3線・三相3線(AC 240Vのみ) |
・単相2線/3線・三相3線/4線 |
放電耐量 |
・放電耐量20kA(8/20μs) |
・放電耐量40kA(8/20μs) |
警報出力 |
・あり |
・なし |
表1に選択可能な仕様の一覧を示します。
電源は200V系と400V系、系統は三相4線式非対応と対応、放電耐量は20kAと40kA、警報出力はありとなしが、それぞれ形式コードで選定できるため、低圧電源の広い範囲にわたってご使用いただけます(電源100V系に使用されるときは、200V系をご選定ください)。
4.機能と特長
MATの数多い機能と特長を以下に記します。
●JIS C 5381-1 クラスII対応
安全性を主として要求するJIS C 5381-1のなかで、低圧引込口や分電盤での設置を対象とするクラスⅡに準拠させました。
JIS C 5381-1の要求内容については表2を、クラス分類については表3をご参照ください。
表2 電源用避雷器への要求内容
要求性能 | 内 容 |
一 般 | 表示(製造業者名、形名、定格、仕様など) |
電 気 | 制限電圧の測定、定格電圧課電状態での放電試験、切離回路の評価、 絶縁距離の保持、過電流制限装置との協調 |
機 械 | 端子接続の信頼性(配線の緩み・抜け、端子の破損など) |
環 境 | 規定した環境条件下で満足に動作するか |
安 全 | 感電保護、TOV特性、漏れ電流、筐体の機械的強度・耐熱性・耐火性 |
表3 電源用避雷器のクラス
クラス | 試験波形 | 設置場所 |
I | 直雷波形(10/350μs) | 外部雷保護を施した建築物の低圧引込口 |
II | 誘導雷波形(8/20μs) | 低圧引込口近辺、分電盤 |
III | コンビネーション波形 (電圧1.2/50μs+電流8/20μs) |
機器の直前 |
また、同等規格である国際規格IEC61643-1や中国GB規格にも対応していますから、海外でのご使用に対しても広く対応いただけます。
●国土交通省標準仕様書準拠
国土交通省が監修する公共建築工事標準仕様書に準拠していますから、公共工事にもご採用いただけます。
●高耐量20kA
高耐量仕様として、放電耐量については20kAを標準仕様としました。長寿命タイプとして、激雷地区でもご使用いただけます。
なお、電気学会の論文に掲載された、サージ電流実測値分布(図3)注2)では、電力会社が提供する低圧配電線に現れる雷サージ電流の平均的な大きさは1~2kA程度であるため、20kAは十分な耐量といえます。
●超高耐量40kA
超高耐量仕様として、放電耐量40kAが選択できます。20kA品よりさらに高耐量、長寿命を望まれる場合にご選定ください。
●感熱切離し回路
劣化時のリスクを最小限に抑えるため、感熱切離し回路を内蔵しました。避雷素子は、劣化すると絶縁能力が低下し、そのままでは、洩れ電流によって発熱します。温度ヒューズが電源と避雷素子を切り離し、避雷素子の発熱を制止します。
また、温度ヒューズとしては避雷素子と一体構造になったタイプを採用することによって、感度よく発熱を検知するとともに、速やかな切離しを実現しています。
図4にMATのブロック図を示します。
●モニタランプ、警報出力
モニタランプおよび警報出力を装備しました(ただし、警報出力はオプションになります)。警報出力はドライc接点で、AC250V/DC24V_1A(抵抗負荷)の接点容量をもつため、負荷を制限しません。
●端子カバー
端子カバーは、本体分離形でなく、本体一体形の扉タイプにしました。配線工事の際に、端子カバーの脱落・紛失を予防するための配慮です。
5.分電盤用避雷器の必要性
電力機器の一般的なインパルス耐電圧は、5~8kVといわれています。
一方、電気学会の論文に掲載された、低圧配電線の雷過電圧の電圧発生頻度(図5)注3)では、10kVを超える雷サージ電圧が10%程度あることを示しています。
もし、避雷対策を施さなければ、電力機器が雷害を被るのは時間の問題といえます。
MATを設置すれば、200V系なら1.5kV以下に、400V系なら2.5kV以下に雷サージ電圧を制限します。これは前述した電力機器のインパルス耐電圧以下であるため、優れた避雷対策になります。
おわりに
雷サージによって、電気設備が破壊すると、事務作業や工場の操業が停止することさえあります。そのような事態では、単に設備の修繕費だけでなく、その何倍もの損害を被ることになります。現代社会を維持していくためには電気設備の避雷対策は欠かせないものと考えます。
ぜひ、三相一体形電源用避雷器MATの採用についてご検討ください。
注1)JIS C 8370「配線用遮断器」の附属書5の解説参照。
注2)引用文献:堀、松岡、野澤:「低圧配電線の雷サージ電流の実測と観測について」、昭62電気学会全国大会、No.1071(1987)
注3)引用文献:今井、佐藤:「低圧配電線に発生する雷過電圧の観測」、昭64電気学会全国大会(1989年)
*M・RESTERはエム・システム技研の登録商標です。