2018年7月号
エムエスツデー 2018年7月号

IoT用端末「データマル®」の「I/Oマッピング機能」の活用により
経済的にシステムの更新ができました
沖縄市水道局の水道監視に採用された
IoT用端末 データマル®(形式:DL8-D)
(株)エム・システム技研 システム技術グループ
今回は沖縄県沖縄市の沖縄市水道局を訪問し、配水ブロックの管理・監視のために採用されたデータマル(形式:DL8-D)について、工務課の上原 光史 様、管理課 配水係の山城 英樹 様および屋宜 宣一郎 様にお話を伺いました。
[エム・システム技研、以下エムと略称]データマルを導入いただいた経緯についてお教えください。
[上原様]以前は、流量計に付いている特殊な通信機能を使用して中央監視室で集中監視を行い、各配水ブロックに配水している流量を管理し、本市における漏水発見に大いに貢献していました。これらは、プログラミングが必要で複雑なシステムになり、メンテナンスに苦労していました。機器の老朽化に伴いシステムの更新を検討していたところ、エム・システム技研からデータマルをご紹介いただきました。
[エム]導入していただいたシステムの概要や構成についてお教えください。
[上原様]配水減圧弁や量水器(水道メータ)がある38箇所の監視場所にデータマルを設置して、そこにある流量計からの積算パルス信号を変換器で2分配し、一方の信号を積算値として、もう一方をパルスアナログ変換器で瞬時値に変換してデータマルに入力します。当初は、中央監視室は光回線、現場は携帯電話回線(モバイル回線)を利用して相互にインターネットに接続し、監視ソフトがインストールされた監視用パソコンからデータマルに通信を行う方法を検討しました(図1)。
しかし、図1のようにパソコンから38箇所もあるデータマルと通信を行うためには、プロバイダと38箇所分の固定IPアドレスを取得する契約が必要になり、固定IPアドレスを取得しない契約より月々のランニングコストが高くなります。また、インターネット回線で障害が発生したとき、通信のリトライ処理などでパソコンに負荷がかかり監視画面の表示が遅くなるなど懸念がありました。
通信費を安価にするため、上位の中央監視室側(パソコン)から下位の現場側(データマル)にアクセスしてデータを収集するというシステムではなく、逆に現場のデータマルから中央監視室側へデータを書込みにいくという発想をしました。しかし、パソコンにはデータを受信する機能がないため、現場のデータマルの情報を中央で集約する装置を用意する方法を検討しました。PLCなどを設置する案を考えていましたがプログラムが必要になります。検討した結果、中央監視室側にもさらにデータマルを設置して、データマルをパソコンと現場のデータマルの橋渡しとすることにしました。データマルはアクセスされる数が4つまでの仕様になっています。データマル1台で現場3台のデータマルと中央監視パソコンから受信するようにしたため、中央監視室側には全部で13台のデータマルが必要になりました(図2)。
沖縄市水道局の水道監視に採用された
IoT用端末 データマル®(形式:DL8-D)システム構成図
[拡大図]
データマルの「I/Oマッピング機能(*1)」を活用
[エム]具体的にどのような仕組みで遠隔監視を行っているのですか?
[上原様]これが実現できたのは、データマルに「I/Oマッピング機能」というデータ伝送機能が搭載されているおかげです。この機能はデータマルに取込んだ信号を別のデータマルやリモートI/Oなどの機器へ出力する機能で、今回のように中央監視室にあるデータマルにもインターネットを経由して伝送することができます。
中央監視室側で固定IPアドレスを1回線だけ契約して、設置した13台のデータマルはポート番号を変えて接続しています。
現場のデータマルからはこの固定IPアドレスとポート番号を指定し書込みを行います。固定IPアドレスが1つでもポート番号が異なっているため、指定したポート番号に接続されている中央のデータマルへアクセスできるようになります。これにより、現場には固定IPアドレスが不要になります。
また、各現場のデータマルが正常に稼働しているかどうかを確認するため、データマル内部で接点が1分ごとにONとOFFを繰り返す機能を使用しました。この信号を中央監視室のデータマルへ書込み、この接点信号が1分以上変化しなければ異常があったと判定しています。
通信費は現場1箇所あたり月額1,000円
[エム]運用されてみていかがでしょうか?
[山城様]以前は、1時間ごとに各現場と通信してデータ収集を行っていたため、現在値が確認できませんでした。新しい監視システムでは、データの更新周期が早くなり現在値をほぼリアルタイムで確認することができます。常時通信でも、通信費は現場1箇所あたり月額1,000円程度でおさまりました。
また、監視ソフトが入ったパソコンを介さなくても、パソコンからデータマルに直接アクセスし、ブラウザソフトを使用してデータマルに標準で搭載されているトレンドグラフやイベントなどのWeb画面を見ることで、各現場の状況を把握できます。休日や緊急時にもインターネットに繋がった端末があれば、どこからでも現場の状況を確認することができます。
[エム]今後はどのようなことを検討されていますか?
[上原様]さらに配水ブロック5~6箇所の監視を追加することを検討しています。
[エム]本日はお忙しい中をありがとうございました。
採用された製品のご紹介
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形式 DL8-D
基本価格:80,000円 ~
Web画面による遠隔監視機能、データロギング機能、イベント通報機能などを備えたIoT用端末です。
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●基本機能
- 簡易Webサーバ(トレンド画面など)
- データロギング
- メール機能
- FTP機能
- Modbus/TCP通信機能(I/Oマッピング機能付)
●用途例
データマル®
沖縄市のご紹介
沖縄市は、沖縄本島の中央部に位置し、沖縄県で那覇市に次いで2番目に人口が多い市です。沖縄都市圏を構成する中心都市で、また鉄道のない市としては、日本一人口の多い市でもあります。1974年にコザ市と美里村が合併して沖縄市は誕生しました。琉球諸島の西側海域を北流する黒潮の影響をうけ、温暖で四季の寒暖差が小さい亜熱帯海洋性気候に区分されており、一年を通じて温暖な気候に恵まれ、年間平均気温は約22℃です。沖縄県内で最もエイサー(本土の盆踊り)が盛んな地域で、沖縄最大規模のエイサー祭り、沖縄全島エイサーまつりは毎年沖縄市で開催されています。2007年6月13日には「エイサーのまち」宣言をし、エイサー文化の更なる発展に取組んでいます。
本システムについての照会先:
(株)エム・システム技研
カスタマセンター システム技術グループ
TEL:06-6659-8200
(*1)I/Oマッピング機能については『エムエスツデー』誌2015年4月号
「新機能①・②搭載でさらにパワーアップ! データマル®タイプD新登場!」をご参照ください。