2022年7月号
エムエスツデー 2022年7月号

Products Review
【図解】誰でもわかる
アイソレータの選び方 応答時間編
—高速アイソレータは高性能なのか?—
[拡大図]
アイソレーション方式の解説
同期スイッチング方式
絶縁素子としてトランスを使い、トランスの1次側と2次側を同時に一定周期でON/OFFすることにより入力信号を磁気エネルギーに変換して出力信号を得る方式を同期スイッチング方式といいます。動作の解説をSTEP1〜4で試みました。
このようにしてアイソレーションしています!
Step1.両スイッチ(S1、S2)がONになると信号電圧(V1)がトランスの1次巻線にかかり、同時に2次巻線に巻数比に応じた電圧が現れます。現れた電圧はONになっているスイッチ(S2)を経由してコンデンサ(C)を充電します。
Step2.次に両スイッチがOFFになると電圧(V1)は1次巻線にはかからなくなりますが、ON時に流れた励磁電流によって溜まった磁気エネルギーが放出されるためにON時とは逆極性の電圧が発生し、抵抗器(R)に電流が流れます。これによってトランス内の磁気がなくなり、トランス内のエネルギーがなくなるため初期状態にリセットされます。
Step3.このときには同時に2次巻線にも逆極性電圧が発生しますが、スイッチ(S2)がOFFなので電流は流れず、コンデンサ(C)の電圧はON時の電圧を維持します。
Step4.また両スイッチがONになってStep1からの動作を繰返すことになりますが、このときに電圧(V1)が変化していればコンデンサ(C)の電圧が更新されることになります。
変換器の応答時間
エム・システム技研の端子台形変換器 タンシマル M5・UNITシリーズの場合、応答時間は大きくわけて標準応答形、高速応答形、超高速応答形の3種類があります。通常は、標準応答形が使用されますが、同一形式で標準応答形と高速応答形が選択できるM5VSの場合、「高速用は高級品である」と思い違いをされて高速応答形が選ばれることが時々あります。しかし、ノイズ対策をしないで高速応答形を使用すると、トラブルの元になります。たとえば、変換器の出力信号が、ノイズの重畳した入力信号に追従してしまい、正確な測定結果が得られなくなることがあります。「変換器が異常である」とお客様からご指摘をいただき、調査した結果、応答時間に原因があったことは、少なくありません。
標準応答形が用意されている理由
変換器の入力配線には、配線途中で電源周波数のノイズやその他機器のノイズが混入します。標準応答形の変換器は、この電源周波数のノイズを除去するためのフィルタ回路が組込まれています。このフィルタを強力にすれば、電源周波数のノイズを除去する機能は大きくなりますが、信号に対する応答時間が長くなります(応答時間別 入力信号と出力信号の関係 応答時間0.5s以下、ステップ状信号を参照)。信号の応答時間と電源周波数に対するフィルタ効果の兼ね合いから、標準応答形の応答時間は 0.5s以下(0 → 90%)になっています。
高速応答形を使用するときの注意点
高速応答形が必要なときは、入力配線に注意を払う必要があります。この場合(応答時間別 入力信号と出力信号の関係 応答時間 約25ms、1ms以下を参照)は、ノイズを除去することができないので、入力配線の途中でノイズが混入しないように①、②、③のような対策を施してください。① 動力配線のような、高電圧、大電流の配線から距離を離して配線する。
②コンジット配管で配線する。
③ シールド付より対線(ツイストペア線)を使用する。
超高速応答形の場合は、高周波ノイズ対策などさらなる注意が必要です。
アイソレーション方式
エム・システム技研の変換器のアイソレーション方式には、大きく分けてパルス幅変復調方式と同期スイッチング方式の2種類があります。端子台形変換器 タンシマル M5・UNITシリーズの場合は、同期スイッチング方式を採用しています。同期スイッチング方式は、部品点数が少ないため回路が簡単でスペースを取らないことからタンシマルのような小さな変換器に適しています。