エムエスツデー 2007年3月号

Interface & Network News 2
No.10

PLC(電力線通信)を使用した データ通信について

 PLC(電力線通信)とは、Power Line Communications の略で、電気エネルギーを供給する電力線に高周波の通信用信号を重畳して伝送させることにより、電力線を通信ケーブルとしても使用する技術のことです。今回はこのPLCについてご紹介します。

 都市部において電力線の地下埋設方式が一般に採用されている欧州やアメリカなどでは、PLCはすでに実用化されている技術です。しかし電柱を使用した架空配線が一般である日本では、2006年10月、建物内の屋内配線の利用に限定して、PLCの実用化が認められることになりました。

PLCのしくみ

 PLCでは、通信用と電源用に電力線を共用します。電源用として交流電力(50/60Hz)を供給する目的で使用されている電力線に、2~30MHzの周波数の高周波搬送波信号を重畳させることによって高速通信用信号伝送を実現しています(図1)。

 ネットワークにつないで使用したい機器にPLCモデムを接続し、コンセントに差し込むだけでシステムの構築は完了します。PLCモデムが電力線に重畳されている情報信号だけを取り出して機器に渡すことによって、電力線がネットワークとして機能するようになります。

 PLCには屋外利用と屋内利用があり、屋外利用では、いわゆる電力会社の配電線網を利用してデータ伝送を行うことが可能になります。もしこれが実用化されれば、光ファイバやADSLの敷設が困難な場所でもネットワークの伝送路が確保できることとなり、大きい効果が期待されています。しかし既設の電力線はもともと通信を目的として敷設されているものではなく、また、電力線の架空配線が一般の我が国では、屋外電力線を使って高調波信号を伝送した場合、高周波信号が電波となって空中に放射され、短波放送やアマチュア無線など、既存の無線システムに影響を及ぼす恐れがあるため、その実現性は極めて薄いものと考えざるを得ないでしょう。

図1 PLCのしくみ

PLCを使用した通信のメリット

 既存の電力線を信号伝送路として利用するため、屋内配線の利用に限定されるとはいえ、端末をPLCモデム経由でコンセントに接続すればネットワークへつなげることができます。したがって、新たに通信線を敷設するための材料費および工事費を必要としません。工場や、ビル、一般家庭など、我々が生活するあらゆる環境においては電力線の存在しないスペースを探す方が難しいくらいで、コンセントさえあればどこからでもネットワークにつなげることができます。無線LANと比べても、約4倍近い実効通信速度の優位性や電波が届かないなどの心配がなく、システムの安定性などのメリットが考えられます。

 エム・システム技研では、WebロガーリモートI/O など、Ethernetを通信媒体として使用することができるネットワーク商品を多数ご提供していますから、PLCを利用する様々なアプリケーションにお役立ていただけます。

 たとえば、多店舗ビルでの各店舗毎の電力監視に、リモートI/OR3シリーズ)とPCレコーダを組み合わせた構成を実現する場合などには、従来、膨大な費用をかけて実現していたインフラの整備が、PLCモデムとその設置だけで実現できることとなり、大幅なコストダウンが期待できます(図2)。

 以上ご説明したように、PLCを利用すればシステムの構築を安価に、しかも短期間に実現できると期待されます。

図2 PLCを使用したシステム構成例

【(株)エム・システム技研 システム技術部】


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