エムエスツデー 2009年9月号
FOMA回線を利用したWebロガーの納入事例
今回は、Webロガーの導入事例として、FOMA回線を利用した段々畑のスプリンクラー散水/監視システムについてご紹介します。
従来の散水システムでは、測定している現場の温度を定期的に管理人が確認し、その値によって畑に散水するか否かを判断していました。散水は、現場に設置されているスイッチを押すことで実施しています。この温度の確認、および散水操作を畑から離れた管理棟から実施したいとのご要望がありました。しかしながら、現場が山間部であることから、電話回線あるいは通信ネットワークの新規敷設が困難であることがわかりました。上記ご要求および環境を考慮してご提案し、ご採用いただいたのが今回ご説明する納入事例です。現場に設置したWebロガーによって温度情報を収集し、FOMA回線を使用して管理棟に送信する遠隔監視システムです。加えて、本システムでは、管理棟に送られた温度データを元に散水処理の操作を行います。
システム構成
図1に、今回導入された遠隔監視システムの構成を示します。段々畑の気温情報を収集するためにFOMA回線用Webロガー(形式:TL2R2-S12)を設置し、収集した気温データを管理棟に送信する回線として、NTT docomoが提供するFOMA回線を使用します。WebロガーのデータをFOMA回線で送信するためのFOMA網通信端末(モデム)としてサンデン(株)製「モデルノ」注1)を使用します。このFOMA網通信端末(モデム)もWebロガーと共に設置します。
遠隔監視を行う管理棟には、監視用パソコンを設置しています。このパソコンはFOMA回線に接続するためにISDN専用回線の契約をしています。また、Eメール通報を行うためISP(インターネットサービスプロバイダ)とも契約しています。
Webロガーの主な機能
今回使用したWebロガーはI/O内蔵形で、アナログ信号8点とデジタル信号12点の監視および接点信号4点の出力が可能です。アナログ信号は各点ごとに4段階(上々限、上限、下限、下々限)の閾値を設定して異常発生/正常復帰の通報をEメールによって宛先最大8箇所まで送信できます。また、WebロガーはWebサーバ機能を備えているため、パソコンからアナログ信号およびデジタル信号の現在値をWebブラウザを使って確認できます。なお、Webロガーには独自のグラフィック監視画面を作成できるWeb画面作成ツールであるWeb画面ビルダ(TL2BEANS)が付属しています。このTL2BEANSを使用すれば、お客様独自のWeb画面を構築して、監視画面上から接点信号を出力することが可能です。
段々畑の気温が設定した閾値を上回ると異常通報をEメールにて送信します。Eメールを受けた管理者は、管理棟のパソコンでWebブラウザを介して気温を確認します。気温の確認後、Webロガー組み込み用Web画面内からWebロガーのDo端子向けに接点信号を出力し、散水処理の操作を行います。また、Web計器ビルダ(TL2POL)を利用して簡単な演算と論理制御をWebロガーに対して設定することができます。このTL2POLの機能を使用すれば、気温上昇に伴う散水処理を自動的に実施することができます。これらの機能を組み合わせることで、たとえば、常時は自動散水、また必要に応じて手動でもWeb画面上から散水を実施できます。
以上のように、FOMA回線用Webロガーを使用すれば、電話回線あるいは通信ネットワークの新規敷設が困難である現場であっても、遠隔監視システムおよびEメールを使用した通報を実現できます注2)。
注1)「モデルノ」のお問合せ先:
サンデン(株)電子事業部モデムグループ
〒110-8555東京都台東区台東1-31-7 TEL:03-3833-7492
注2)関連記事の『エムエスツデー』誌2008年4月「Webロガー(形式:TL2R2)の CIPL対応、およびFOMA端末を使用した Webロガーへのアクセスについて」および2008年2月「Webロガー(形式:TL2R2-□)のFOMA対応について」をご参照願います。
本稿についての照会先:
(株)エム・システム技研
カスタマセンター システム技術グループ TEL:06-6659-8200
【(株)エム・システム技研カスタマセンターシステム技術グループ】