エムエスツデー 2018年10月号

富士市上水道の遠隔監視制御システムを
エム・システム技研のIoT機器を使用して経済的にリプレース
静岡県富士市の上水道の遠隔監視制御システムに採用されたSCADALINXpro®とWebロガー2
(株)エム・システム技研 システム技術グループ
今回は静岡県の富士市上下水道部を訪問し、上水道遠隔監視制御システムのリプレースに採用されたHMI統合パッケージソフトウェアSCADALINXpro(形式:SSPRO5)、現場設置形データロガー Webロガー2(形式:DL30)、リモートI/O R3シリーズについて、上下水道部水道維持課の飯田 和浩 様、建設部施設保全課の木村 圭 様、同設備の元請けとして通信回線を提供されたNTT西日本静岡支店の秋田 和俊 様、同設備の制御・監視システムの構築および制御盤類の納入をされた(株)堀内電機製作所の高木 君夫 様、川口 浩平 様にお話を伺いました。
既設システムの1/6の金額でリプレースに成功
[エム・システム技研、以下エムと略称]本システムを導入された経緯についてお聞かせください。
[飯田様]既設のテレメータ監視システムは運用開始から20年以上が経過していました。重電メーカーによる堅牢で優れたシステムでしたが、専用機であったため機器費やシステムの軽微な変更に対してコストが高いことなどが運用の負担になっていました。
機器の老朽化に伴い、新しい監視システムについては、必要な機能を十分に満足していることはもちろん、維持管理が容易であること、地元業者が機器の設定やメンテナンスができること、そして何より長期の安定した継続運用ができることを条件に検討しました。
エム・システム技研製品に関しては、すでにテレメータや変換器などの使用実績がありました。監視ソフトとしてSCADALINXproが用意されていてセミナーの講習も受けられるため、SCADALINXproを使用すれば地元業者と協力して新しい監視システムが構築できると判断しました。なによりも最終的な採用の決め手は「廃型しません」という会社のポリシーですね。
IoT技術を使用することによりシステムの効率化に成功
[エム]システムの概要や構成についてお教えください。
[飯田様]管理センターと約90拠点ある各水道施設の間のIoT化を図るため、専用回線ではなくNTT西日本のフレッツ・VPNワイド(*1)を採用してVPN(バーチャルプライベートネットワーク)接続としました。この結果、ランニングコストを専用回線と比べて2/3に抑えることができました。
各水道施設には水位や流量などの信号の取込みを行うためR3シリーズを設置し、R3シリーズへ入力されたデータは管理センター内に設置したPLCで収集し、さらにPLCからの信号をSCADALINXproが受取り、管理・監視を行っています。なお、PLCとSCADALINXproサーバはいずれも2重化しています。
また、配水池の水位の情報を送水ポンプがある水源地へ伝送して、ポンプの運転制御を行うためWebロガー2の「I/Oマッピング機能」を利用しています。この機能はR3シリーズに取込んだ信号を同じネットワーク上にある別のR3シリーズへ出力する機能で、今回のようにVPNを経由して別の拠点へ伝送することができます。
水道というインフラの性質上、想定しうる様々な障害が発生した場合にも、管理センターの監視機能が停止することなく稼働し続けることに重点を置いて新システムは設計されました。SCADALINXproにはサーバ2重化機能とPLCとの通信2重化モード(*2)が用意されていて、PLCの2重化機能と組合せて設備の冗長化を図ることができました。
[秋田様]今回の約90箇所の監視制御をフレッツ・VPNワイドで実現したことは、NTT西日本としても大きな実績になりました。貴重な経験をさせていただいたと思っています。
静岡県富士市の上水道の遠隔監視制御システムに採用された
SCADALINXpro®とWebロガー2 システム構成図
[拡大図]
エム・システム技研のサポート
[エム]システム構築にあたりご苦労された点はありますか。
[川口様]既設で運用していた画面を、できる限り継承する必要があり苦労しました。画面作成に当たり電話サポートのみではなく、サンプルの提供などをしていただき助かりました。
[高木様]セミナー講習に際して普段から打合せをしている担当者に講師をしてもらったり、ホットラインによる電話サポートも面識のある方に対応していただき大変心強かったです。
[木村様]今回の更新では新システムと旧システムを同時に動かしながら信号を切替える必要があったため、一定期間は平行運用する計画をたてました。
約90拠点に対し監視信号はパラレルに取出し、制御信号は新システムに切替えていくという作業を設備運用に影響を与えないよう連日にわたり注意深く迅速に作業を行う必要があり、大変な労力を伴う作業でした。
[エム]今後の計画についてお聞かせください。
[飯田様]自営線を使用して信号を伝送している箇所が残っているため、エム・システム技研製品の920MHz帯マルチホップ無線機器「くにまる」などを使用して、無線通信を行いバックアップ回線の強化を行い、災害などに対して堅牢性を高めたいと考えています。
[エム]本日はお忙しい中をありがとうございました。
採用された製品のご紹介
-
SCADALINXpro®
形式 SSPRO5
プロフェッショナル システムエンジニア向けHMI開発ツールです。
①高品質な画面を作成できます。
②各社PLC 約70機種と接続できます。
③遠隔から監視、制御が行えます。
④Webブラウザ(IE)での運用、VBなどの
開発言語に組込みができます。
Windows 10に対応した新製品 SCADALINXpro®(形式:SSPRO6)も発売しています。 -
Webロガー2
形式 DL30
小形ユニットに以下に挙げる便利な機能を内蔵しているIoT時代を担う現場設置形のデータロガーです。
①ロギング機能
②帳票作成機能
③遠隔監視 Webサーバ機能
④メール通報機能
⑤通信制御機能
⑥I/Oマッピング機能
-
パトレイバー®ミニ
形式 IT60SRE
PLCからの制御信号、リモートI/Oの入力信号により表示ランプの点灯/点滅出力やブザー音の出力ができます。
-
リモートI/O R3シリーズ
接点入出力カード
対応ネットワークの種類や入出力カードの種類など最も充実したリモートI/Oです。プログラムレスで、ホットスワップ(活線抜挿)機能もあるため、故障したI/Oのみ交換できて便利です。
静岡県富士市のご紹介
富士市は、本州のほぼ中央太平洋岸、静岡県東部に位置し「世界遺産 富士山」の南麓に広がり、海から富士山を間近に望む景勝地です。古くは東海道五十三次の宿場町があり、陸上交通や水運の拠点として、現在では市内を横断する東名、新東名高速道路や東海道線、東海道新幹線、あるいは駿河湾を望む田子の浦港など、良い立地、そして温暖な気候と豊富な地下水に恵まれています。
上水道施設は80本の深井戸を含む125箇所が市内に点在し、給水人口は約24万人、総配水量の99%が地下水によるものです(2018年3月現在)。
(株)堀内電機製作所のご紹介
堀内電機製作所は静岡県富士市に本社を置き、1949年の創業以来、制御盤・配電盤・受変電設備の設計・製造・施工を行っています。盤制作だけでなくシステムの提案、PLC、PCなどの設計、現場立ち上げ、メンテナンスまで一貫して行い、数多くの現場に納入実績があります。
本システムについての照会先:
(株)堀内電機製作所
製造部 高木 君夫 様
静岡県富士市今泉花の木622-1
TEL:0545-52-3978 FAX:0545-52-3968
(*1)NTT西日本エリアのフレッツ光ネクストなどを利用して、複数拠点を接続することが可能な
VPNサービスです。オプションサービスの契約により、NTT東日本エリアの拠点との接続などが可能です。
サービス利用に関する制約や各種契約条件は、NTT西日本のホームページで確認できます。
(*2)PLCとの通信2重化モードとは、メイン側、サブ側(待機側)の2台のPLCが接続されている環境において、
メイン側に障害が発生した場合にサブ側のPLCに接続先を切替える機能です。