1996-1997年計装豆知識
- 配線とノイズ(2)/1997.12
- 配線とノイズ(1)/1997.11
- OPC(OLE for Process Control)/1997.10
- 変換器の歴史/1997.9
- 旧アナログ形コントローラの諸機能/1997.7
- 超スロー接点パルス入力用変換器/1997.6
- パソコンのキャッシュ・メモリ/1997.4
- デジタル調節計の処理周期に注意/1997.3
- 一次遅れ要素と時定数/1997.2
- 変換器の応答時間の表示方法/1997.1
- フィールドバスの現状と問題/1996.12
- 電源配線が要らない2線式伝送器/1996.10
- 電源配線がいらないアイソレータ/1996.9
- 電流信号の端子の+と−/1996.8
- 熱電対で狭い温度レンジを測定/1996.7
- アナンシエータ(ANNUNCIATOR)/1996.5
- ワンループ・コントローラと温調計の違い/1996.4
- 流速計による流量測定方法/1996.3
- 全二重通信と半二重通信方式/1996.2
エムエスツデー 1996年3月号
流速計による流量測定方法
流量計は、一般に口径が大きくなると、急激に価格が上がります。したがって、大口径管路の流量を測定するとき、流量測定に要する費用は相当多額になります。高精度の測定を行う必要があるときは、これはやむを得ないことですが、さほど測定精度を必要としない場合には、流速計を使用する方法が現実的な選択の1つとなります。また、流速計を使用する方法は、流量測定に伴う圧力損失が少ないので、省エネルギーにもなります。
管路内の1点の流速を測定して、全体の流量を求める場合には、まず管内の流速分布について知らなければなりません。
管路内の流速分布
管路内の流速分布は、流れが十分な直管部分を通ったあとでは、中心対称の流れとなります。また、流速が遅いときは流体の分子が層状となって整然と流れますが、流速が速くなると流体の分子が入り乱れた状態となります。前者を層流、後者を乱流と言い、この分かれ目は式(1)で定義されるレイノルズ数によって決まります。

層流から乱流に移るところは、レイノルズ数が2,000~4,000の間にあります(気体、液体、蒸気とも同じ)。
乱流の場合、管路内の流速分布は、下記の指数法則の式に従います。
ここで、Vmax は管中心の流速、Vx は管中心からγx の位置にある点の流速、R は管の半径です。
式(2)のn は、前述のレイノルズ数RD の関数であり、実験により求められています。これを表1に示します。このnの値を使用して、式(2)を図化したものを右図に示します。
表1 レイノルズ数RDとnとの関係 | 表2 平均流速点の位置 | |||||||||||||||||||||||||||
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平均流速点の位置
上記のデータより、平均流速と中心流速の比や、平均流速が得られる位置(平均流速点)を求めることができます。後者の結果を表2に示します。ただし、γxm は平均流速点の管中心からの距離です。
これを見ると、レイノルズ数すなわち流速が大幅に変わっても、平均流速点の位置はあまり変化しないことがわかります。つまり、管壁から管直径の12%の位置に流速計を挿入すれば、おおむね平均流速を知ることができます。
ただし上記の方法は、流速分布の乱れがないことが前提となっています。したがって、流速計の上流側に弁や曲がりがある場合には適用困難です。そのときは、複数の流速計を使う方法がありますが、これについては別の機会に説明します。
(引用文献)
1)松山 裕:実用流量測定、省エネルギーセンター(1995)