2004-2005計装豆知識
- UPS(無停電電源装置)/2005.12
- 空電変換器/2005.11
- 電空変換器/2005.10
- 超高速アイソレータ/2005.9
- FL-net(OPCN-2)/2005.8
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- PROFIBUS-PA/2005.6
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- PROFIBUS-DPV1/2005.3
- CC-Link Ver.2.0/2005.2
- WEEE指令とRoHS指令/2005.1
- ハウジング材質/2004.12
- 絶縁抵抗および耐電圧/2004.11
- 供給電源(設置仕様)/2004.10
- 信号変換器の応答時間/2004.9
- ディストリビュータ(2)/2004.8
- ディストリビュータ(1)/2004.7
- レンジ設定可能な信号変換器の精度/2004.6
- 信号変換器のゼロ・スパン調整/2004.5
- 冷接点補償精度/2004.4
- 信号変換器の温度係数/2004.3
- 信号変換器の精度(許容差)/2004.2
- 信号変換器の精度/2004.1
エムエスツデー 2004年5月号
変換器の仕様書の読み方について(5)
信号変換器のゼロ・スパン調整
今回は、信号変換器の入力信号あるいは出力信号の範囲に関する「ゼロ」、「スパン」とその調整機能について説明します。
1.ゼロ・スパンとは
入力信号、出力信号などの信号の範囲を表すには、一般にレンジという用語を用います。レンジとは、対象となる変量の上限値と下限値によって表されるその変量の範囲です 注1)。レンジという用語は、一般にどのような変量を対象にしているかを示す修飾語と一緒に用いられます。たとえば、入力信号の範囲を指す場合は入力信号レンジ、出力信号の範囲を示す場合は出力信号レンジと呼び、それぞれの信号の範囲を特定します。
信号レンジの下限値はゼロ点とも呼びます。また、スパンとはレンジの上限値と下限値の差を意味します 注2)。
表1 レンジとその上下限値およびスパンの関係
レンジの例 | レンジの下限値 | レンジの上限値 | スパン |
0~ 5V DC | 0V DC | 5V DC | 5V DC |
-3~ 7V DC | -3V DC | 7V DC | 10V DC |
1~ 5V DC | 1V DC | 5V DC | 4V DC |
4~20mA DC | 4mA DC | 20mA DC | 16mA DC |
2.ゼロ・スパン調整の目的
ゼロおよびスパンを調整することで、経年変化などで生じる機器の誤差を補正することができます。
あるいは、現場のセンサと計器室の受信計器(指示計など)の間に変換器を取り付け、変換器のゼロおよびスパンを調整することによって現場のセンサの測定値と受信計器の指示値の差を最小に調整することができます。
3.ゼロ・スパン調整の特徴

(1)ゼロ・スパン調整の特性
ゼロ調整は入出力特性曲線に平行移動的変化を起こし、スパン調整は入出力特性曲線に勾配の変化を起こします(図1参照)。
(2)ゼロ・スパン調整機能の適用
変換器の種類に対応してゼロ・スパン調整機能を入力信号に適用する変換器と、出力信号に適用する変換器があります。
直流入力変換器(形式:SV)を代表とする、エム・システム技研のほとんどの変換器は、出力信号にゼロ・スパン調整機能を適用しています。出力回路にゼロ・スパン調整機能を適用すると、入力用のセンサの種類やレンジが違っても、ゼロ・スパン調整を操作する感覚を揃えることができます。
他方、ポテンショメータ変換器(形式:PMS)やロードセル変換器(形式:LCS)のように、入力信号にゼロ・スパン調整機能を適用する変換器もあります。ポテンショメータ変換器でゼロ・スパン調整機能を入力回路に適用する背景は、設備ごとにセンサ(ポテンショメータ)の取り付け位置(角度)や設備の可動範囲が違うため、とくに広い調整範囲を要求されることにあります。このため、入力回路にゼロ調整機能を適用することで、ゼロ調整とスパン調整の干渉を最小限に抑える方式を採用しています。
4.仕様書での表現方法

エム・システム技研では、ゼロ・スパン調整範囲を仕様書の機器仕様の項に下記のように記述しています。
●直流入力変換器(形式:SV)の例
ゼロ調整範囲:−5~5%
スパン調整範囲:95~105%
(ゼロ調整を操作することで、出力信号を±5%変化させられます)
●ポテンショメータ変換器(形式:PM/PMS)の例:
ゼロ調整範囲:全抵抗値の0~50%
スパン調整範囲:全抵抗値の50~100%
(入力ポテンショメータの機械的なゼロ点位置が電気的信号の0~50%の範囲内であればゼロ調整を操作することで、出力信号を0%に調整することができます)
注1、注2)JIS B 0155 参照。
【(株)エム・システム技研 開発部】