2014-2015 計装豆知識
エムエスツデー 2015年7月号
デジタル簡易無線
2008年に新設された「デジタル簡易無線」について、その概要をご説明します。
計装システムにおけるテレメータ装置の通信媒体として、最近「デジタル簡易無線」の利用が活発化してきましたので、今回はその「デジタル簡易無線」について概要をご説明します。
デジタル簡易無線とは
デジタル簡易無線は、既存のアナログ簡易無線の利用者増などによる周波数不足の解消、システムの小形化による利便性の向上、違法電波の排除などを目的に、2008年8月に制度化されました。
アナログ簡易無線では周波数帯に関わらず「無線局免許の取得」が必要でしたが、デジタル簡易無線のうち351MHz帯を使用する無線局では「局免許の取得」は必要でなく、簡単な申請によって登録をするだけで運用することができます。レジャー目的で使えるトランシーバのラインアップが増えてきており、最大5W出力の無線機を申請・登録するだけで使用できます。
また、主に業務用として154MHz帯、467MHz帯を使用するデジタル簡易無線もありますが、こちらは、「無線局免許の取得」が必要です。
なお、デジタル簡易無線の新設にともない、小エリア簡易無線(348.5625〜348.8MHz)、アナログ簡易無線の400MHz帯(465.0375〜465.15MHz、468.55MHz〜468.85MHz)は廃止が決定され、2022年11月30日までしか運用できず、そのため、この周波数帯を使用する小エリアおよびアナログ簡易無線機は期限までに使用を停止する必要があり、その代替えとしてデジタル簡易無線への移行が、総務省から推奨されています。
デジタル簡易無線の概要
アナログ簡易無線、およびデジタル簡易無線はいずれも音声通信のほかにデータ通信(映像、ファクシミリも含む)に使用されますが、前者が振幅変調方式や周波数変調方式の音声通信であるのに対し、後者ではデジタル変調方式の音声通信であるために「デジタル簡易無線」と呼ばれます。
デジタル簡易無線は、従来のアナログ簡易無線に比べて以下の利点があります。
• 雑音のないクリアな音質
• 通信内容の漏洩防止が図れる
• データ伝送に適している
• チャネル数が多いことによる、混信可能性の低減
デジタル簡易無線における無線局の区分には、下表のとおり「免許局」と「登録局」の2種類があります。
無線局の開設に当たっては、無線局の常置場所を管轄する地方総合通信局へ局免許、または登録の申請を行い、免許状または登録状の交付を受けて運用する必要があります。
無線局の区分 | 免許局 | 登録局 | ||
---|---|---|---|---|
割当周波数 | 154.44375〜 154.61254MHz |
467〜 467.4MHz |
351.2〜 351.38125MHz |
351.16875〜 351.19375MHz |
チャネル数 | 19ch + 9ch*1 | 65ch | 30ch | 5ch |
伝送情報 | 音声、データ、 映像、ファクシミリ |
音声、データ、 映像、ファクシミリ |
||
最大電力 | 5W | 5W | 1W | |
使用できる区域 | 全国の陸上 | 全国の陸上及び日本周辺海域 | 全国の陸上及び日本周辺海域 | 全国の陸上及び日本周辺海域並びにそれらの上空 |
呼び出し名称 記憶装置*2 |
要 | 要 | ||
キャリアセンス*3 | 不要 | 要 | ||
レンタル使用 | 不可 | 可 | ||
レジャー使用 | 不可 | 可 | ||
不特定の者との 通信 |
不可(免許人所属に限る) | 可 |
免許局と登録局の違いと申請方法について
免許局は主として業務用通信に用いられる無線局です。従来のアナログ簡易無線と同様に、申請した免許人のみが無線機を使用することができます。通信相手は免許人所属に限ると指定されており、また、使えるチャネル数が多いため、混信や干渉の心配が少ないといえます。
一方、登録局は業務用およびレジャー用通信に用いられる、汎用性の高い無線局です。デジタル簡易無線の普及を目的に新設された制度で、申請時の審査が簡略化されており、短期間で開設することができます。登録人以外の者による運用が可能であり、無線機のレンタルや、不特定多数との通信が可能など、免許局と比べて利用範囲が拡大されています。免許局に比べて混信の可能性が高いといえますが、それを避けるために「キャリアセンス機能(同一チャネルで他者が送信中は送信できない機能)」が搭載されています。
免許局の申請方法はアナログ簡易無線と変わりません。登録局の申請方法には「個別登録」と「包括登録」があります。免許局、登録局共に有効期間は5年であり、1年ごとに電波利用料の納付が必要です。以下に申請の流れを示します。
● 免許局
無線局免許申請書、無線局事項書を、無線局の常置場所を管轄する
地方総合通信局に提出
→ 約1か月で免許状が届き、無線局開設
● 登録局(個別登録-無線機1台ずつ登録申請する場合)
登録申請書を、無線局の常置場所を管轄する地方総合通信局に提出
→ 約2週間で無線局登録状が届き、無線局開設
● 登録局(包括登録-無線機を2台以上一括して登録申請する場合)
包括登録申請書を、無線局の常置場所を管轄する地方総合通信局に提出
→ 約2週間で無線局登録状が届き、無線局開設
→ 開設から15日以内に開設届出書を地方総合通信局に提出
エム・システム技研のデジタル簡易無線対応製品紹介
エム・システム技研では、デジタル簡易無線をテレメータシステムの通信媒体として使用できる、下記の製品を用意しています。
● スーパーM・UNITシリーズ モデムインタフェース(形式:SMDM)
● テレメータ D3シリーズ モデムインタフェースカード(形式:D3-LR8)
デジタル簡易無線モデムU7000UJC181(登録局) 販売:サンライズテクノ(株) 製造:(株)CSRに対応しています(お客様ご用意となります)。
<参考文献>
総務省HP デジタル簡易無線(登録局)
http://www.soumu.go.jp/soutsu/kyushu/ru/digital-cr.html
*1 9chはデータ通信専用。
*2 無線機に内蔵された、機器毎に割り当てられた識別信号を自動的に送信するための装置。
識別信号は、次の数字が使われています。免許局の場合は「1」から始まる9桁の数字。
登録局の場合は「2」から始まる9桁の数字。
*3 混信防止機能。電波送信時に、同じチャネルを使用した他の無線機の電波が送信されている時には、
送信を行わない機能です。
【(株)エム・システム技研 設計部】