エムエスツデー 2012年4月号

Products Review
電動アクチュエータ サーボトップ ® Ⅱ
ターボコンプレッサは、小さな工場から大規模なプラントに至るまで様々な用途の圧縮空気源として使用されています。そして、中〜大型のターボコンプレッサの多くには空気吸入口に吸入制御弁の一種である「インレットガイドベーン(IGV)」というパーツが取り付けられていて、その開度を変えることによって負荷に追従した容量制御を行います。ターボコンプレッサは、本来、高効率を特長としていますが、IGVのきめ細かな開度調節によって、より一層の省エネ運転を実現できます。 ここでは、ターボコンプレッサにおけるIGVの開度調節に採用された、エム・システム技研の電動アクチュエータをご紹介します。
IGVによるターボコンプレッサの容量制御
IGVとは
IGVは、バタフライ弁などの調節弁に較べてエネルギー効率が高く省エネ効果があるパーツです。IGVは、コンプレッサの吸入口にくさび状のベーン(翼)を取り付け、インペラ入口の空気に対してインペラの回転方向と同じ向きにひねりを加えるものです。ベーンの角度を変えることによってインペラの空気吸入量を変えることができます。IGV用アクチュエータは、リンク機構を介してベーンと接続されていて、アクチュエータの直線運動がベーンの角度変化に変換されます。
ターボコンプレッサの省エネ運転
一般的なターボコンプレッサでは、ロード(負荷)・アンロード(無負荷)制御が行われます(図1参照)。この制御方式では、ロード時は吸入制御弁が開であり、アンロード時は閉の2位置での運転となります。ここで、吸入制御弁としてIGVを適用し、その開度を連続的に変えることにより、コンプレッサの吐出圧力を一定にしつつ、容量を調整させることが可能になります。これがロード・アンロード制御+定圧制御であり、ロード・アンロード制御単独の場合に較べて大きな省エネ効果を得ることができます。
エム・システム技研の電動アクチュエータの採用理由
IGVはターボコンプレッサの運転上きわめて重要なパーツであり、その開度を調節するアクチュエータには次のような特性が求められます。
(1)空 気 源 不 要 : | 電動アクチュエータ (コンプレッサの起動前は自給空気源がない) |
(2)連 続 動 作 : | アナナログ信号による連続動作(リニアモーション形) |
(3)高 分 解 能 : | 制御性を向上させるためにも、少なくとも1%以下 (フルスパンに対する)の高分解能が好ましい |
(4)高 速 応 答 : | 急激な圧力変動にも追従させるために高速応答性が必要 |
(5)速 度 可 変 : | 組み合わせるIGVのサイズやターボコンプレッサの仕様に応じて、開閉速度(最高速度)の設定変更ができること |
(6)高信頼性、長寿命 : | 長時間の連続運転にも安心して使用できる信頼性が確保されていること |
エム・システム技研の電動アクチュエータ 「サーボトップII(代表形式:PSN)」は、上記の特性をすべて備える製品として採用されました。
PSNの主な特長を以下に挙げます。
PSNの特長
(1)DCステッピングモータの搭載:
高分解能1/1000(フルストロークに対して)を実現
(2)非接触形角度センサ:長寿命、高信頼性に貢献
(3)マイクロプロセッサの搭載によるインテリジェント化
ゼロ点、スパンの調整:ゼロ点、スパン(ストローク)の調整がデジタル方式で直接設定可能
開閉速度設定:開閉速度が現場で容易に設定変更可能
不感帯設定:モータのハンチング防止
再起動制限タイマの設定:モータの過熱防止
(4)停電バックアップ機能(オプション)
(5)CEマーキング対応:輸出案件にも適応
電磁両立性指令(EMC指令)(2004/108/EC):EMI EN 61000-6-4、EMS EN 61000-6-2
低電圧指令(2006/95/EC):EN 61010-1 設置カテゴリⅡ、汚染度2、最高使用電圧300 V
冷凍機用ターボコンプレッサにも採用された電動アクチュエータ
ターボコンプレッサは、圧縮空気源装置としてだけでなく空調装置用のコンプレッサとしても汎く適用されています。空調装置においては、ターボコンプレッサが冷媒の圧縮を目的として設置されますが、基本的な原理や構造は圧縮空気用のものと同様です。空調装置用のターボコンプレッサにおいては、IGVだけでなくコンプレッサ出口の絞り機構(DDC:Discharge Diffuser Controller)の開度調節も重要な制御要素となります。エム・システム技研の電動アクチュエータ「ミニトップ(代表形式:MRP)」、ならびに「サーボトップII(ロータリモーション形 代表形式:PRP)」がDDC用のアクチュエータとして採用されています。