エムエスツデー 2007年8月号

JIS対応になりました!
並列接続形電源用避雷器(形式:MAK2)、
N−PE間保護用避雷器(形式:MAKN)
(株)エム・システム技研 開発部
は じ め に
近年、雷保護関連のJISについて改正および新規制定が行われ、社会的に関心が高まってきています。これら一連の規格は、雷保護関連の「新JIS」注1)と呼ばれ、皆様も耳にされたことがあるのではないかと思います。
エム・システム技研は、創業時以来、低圧用避雷器の開発・製造・販売に従事し、多くの実績を上げてきました。また近年は、避雷器についてJISへの対応を精力的に進めてきました。
今回は、ご好評いただいている並列接続形電源用避雷器について、新たに N-PE間保護用避雷器(形式:MAKN)を追加するとともに、「新JIS」への対応を実現しましたので、以下にご紹介します。
1.新JISの内容
「新JIS」としては、おおむね表1に列挙した規格が対象になります。これらのうち、JIS A 4201(建築物等の雷保護)以外はすべて新規に制定されました。また、ほとんどの「新JIS」はIEC規格を翻訳し、技術的内容を変更することなく作成されています。
表1 雷保護関連の新JIS一覧
規格番号 |
規格名称 |
要 約 |
JIS A 4201 | 建築物等の雷保護 | 建築物の外部保護(避雷針まわり)、 内部保護(等電位ボンディング)、 外部保護と内部保護間の離隔距離 |
JIS C 60364-4-44 | 妨害電圧及び電磁妨害に対する 保護 |
雷及び電気設備開閉による電源系統の過電圧、 低圧電気機器に求める耐電圧 |
JIS C 60364-5-53 | 断路、開閉及び制御 | 電気設備に設置する避雷器の選定と施工方法 |
JIS C 0367-1 | 雷による電磁インパルスに対する 保護 |
建築物内情報システムに対する効果的な 電磁気遮蔽と接地方法 |
JIS C 0664 | 低圧系統内機器の絶縁協調 | 低圧電気機器に求める耐電圧 |
JIS C 5381-1 | 低圧配電システムに接続する サージ防護デバイスの所要性能 及び試験方法 |
低圧電源用避雷器の所要性能と試験方法 |
JIS C 5381-12 | 低圧配電システムに接続するサージ 防護デバイスの選定及び適用基準 |
低圧電源用避雷器の選定と適用基準 |
JIS C 5381-21 | 通信及び信号回線に接続するサージ 防護デバイスの所要性能及び試験方法 |
通信及び信号用避雷器の所要性能と試験方法 |
JIS C 5381-22 | 通信及び信号回線に接続するサージ 防護デバイスの選定及び適用基準 |
通信及び信号用避雷器の選定と適用基準 |
JIS C 5381-311 | 低圧サージ防護デバイス用 ガス入り放電管(GDT) |
避雷素子の試験方法 |
JIS C 5381-321 | 低圧サージ防護デバイス用 アバランシブレークダウンダイオード (ABD)の試験方法 |
|
JIS C 5381-331 | 低圧サージ防護デバイス用 金属酸化物バリスタ(MOV)の試験方法 |
|
JIS C 5381-341 | 低圧サージ防護デバイス用サージ 防護サイリスタ(TSS)の試験方法 |
「新JIS」について全体を要約すれば、次の4点にまとめられると思います。
(1)従来のJISでは、建築物の雷保護は外部雷保護(避雷針まわり)に限られていましたが、新たに内部雷保護の概念が追加されました。これは、落雷時の過大な電位差によって、建築物内部の配管、ダクト、梯子などの金属工作物と外部雷保護の間に発生する有害なスパークや感電を防ぐためのものです。一つは、積極的に金属工作物を避雷針接地にボンディングすることで電位差を抑える電位ボンディングを、もう一つは安全離隔距離の確保について手引きしています。
(2)上記は建築物に対する雷保護ですが、電気・通信設備の内部雷保護として、効果的な電磁遮蔽や接地のとり方、避雷器の設置点についても指針が示されました。
(3)雷および電気設備の開閉に伴って、電源系統に発生する過電圧を避雷器などで抑制する手段とその電圧(保護レベル)について規定されました。また、電源系統に接続する低圧機器に対して保護レベル以上の絶縁を備えることが求められました。
(4)避雷器について、所要性能と試験方法が規定されました。本稿でご紹介するMAK2、MAKN は、表1 のJIS C 5381-1 に準拠することで、「新JIS」に対応しています。その要求内容は、避雷器の仕様を細かく規定するものではなく、たとえば電源用避雷器については、表2 に示すように、安全性が主として求められています。
表2 電源用避雷器への要求内容
要求性能 |
内 容 |
一般 |
表示(製造業者名、形名、定格、仕様など) |
電気 |
制限電圧の測定、定格電圧課電状態での放電試験、切離回路の評価、絶縁距離の保持、 過電流制限装置との協調 |
機械 |
端子接続の信頼性(配線の緩み・抜け、端子の破損など) |
環境 |
規定した環境条件下で満足に動作するか |
安全 |
感電保護、TOV特性、漏れ電流、筐体の機械的強度・耐熱性・耐火性 |
ところで、よく持ち出される言葉として、避雷器にはクラスがあります。これは、主として試験に用いるサージ波形によって決まる仕様で、表3 にその要約を示します。
なお、MAK2、MAKN はともにクラス II に当てはまり、主として分電盤に設置されることを想定しています。
表3 電源用避雷器のクラス
クラス |
試験波形 |
設置場所 |
I |
直雷波形(10/350μs) | 外部雷保護を施した建築物の低圧引込口 |
II |
誘導雷波形(8/20μs) | 低圧引込口近辺、分電盤 |
III |
コンビネーション波形 (電圧1.2/50μs+電流8/20μs) |
機器の直前 |
2.MAK2、MAKNの紹介
(1)外 観
MAK2 は、従来品から何ら設計変更することなくJIS対応にすることができました。MAKN は、MAK2 の特長を引き継いで開発しました。互いに形状が同じですから、コンパクトに並べて取付けられます。
図1に MAK2と MAKN の外観を示します。
(2)機能と特長
MAK2 については、従来からご採用いただいているお客様には、おさらいの形となりますが、以下に MAK2と MAKN の数多い機能と特長をご紹介します。
1)電流容量:
並列接続形であるため、負荷電流を気にせず電気設備に接続できるので分電盤設置に最適です。
2)高性能:
MAK2 は放電素子にバリスタを使用しているため、放電時に電源側から電流が流れ込まず、安全です。また、雷サージに即応して動作し、高い保護効果が得られます。
MAKN は大容量放電管を使用しているため、高圧側地絡事故によるTOV(temporary overvoltage 一時的過電圧)にも安全に対応できます。
3)超高耐量:
MAK2 は放電耐量 20kA を2回保証、MAKN は40kA保証(共に雷サージ波形8 / 20 μ s の場合)という超高耐量形です。通常想定されるサージ電流に対して、十分余裕のある耐量を設定しています。
4)安全機能:
エレメント部内蔵の放電素子が万一劣化して過電流が流れても、感熱切離し回路が働き、電源ラインから切り離します。また、エレメント部前面の点検用表示窓に、切離し回路が働いたことを表示するとともに、接点出力で外部に異常を知らせます。
5)感電予防:
端子は保護等級 IP20 の安全設計です。絶縁筐体で覆われていて、感電事故を予防します。
6)信頼性の高いねじ端子接続:
丸形圧着端子を用いることで、広範囲の太さ(2~ 14mm 2 )の電線を接続できます。また、セルフアップねじになっているため、配線作業が極めて容易です。
7)誤挿入対策:形式ごとに形状を異にした電圧識別キーで、エレメント部の誤挿入を防ぎます。つまり、MAK2 のベース部に、MAKN のエレメント部を誤挿入する事故が予防できます。
8)プラグイン構造:
ベース部とエレメント部を分離できるプラグイン形であるため、避雷器の点検、エレメント部の取替え、および盤のメガーテストが容易に実施できます。また、エレメント部を外しても電源は遮断されません。
9)コンパクトな形状:
小形かつ薄形のコンパクト設計であるため、小スペースに多数並べて設置できます。また、取付けに便利な35mm DINレールに対応しています。
3.MAK2とMAKNの使い分け
電源は大きく分けてTN系統とTT系統注2)に分類できますが、系統によって避雷器の接続方法が異なります(図2参照)。
まず、MAK2 は系統に係わらず電源のL−N、L−L間に接続してください。TT系統の場合だけ、MAKN をN−PE(設備側接地)間に接続してください。
なお、TT系統保護に MAKN が必要な理由を図3 にて説明します。
お わ り に
MAK2 と MAKN は、国土交通省が監修する公共建築工事標準仕様書への準拠品として販売していますが、「新JIS」への対応については、上記仕様書内の分電盤用避雷器について、2007年度から要求されるようになりました。当然、今回ご紹介したMAK2と MAKN であれば不都合なくご対応いただけます。
また、「新JIS」については、電源用だけでなく信号用でも薄形避雷器 MD7シリーズやEthernet用避雷器(形式:MDM5E-A)で対応を終えています。今後も「新JIS」対応避雷器を企画して参りますので、ぜひお役立てください。
注1)「新JIS」については、『エムエスツデー』 誌2006年1月号の「計装豆知識」でもご説明していますので、ご参照ください。
注2) TN系統:電源側接地(N)と設備側接地 (PE)が共通になります。
TT系統:電源側接地(N)と設備側接地(PE)が別になります。