エムエスツデー 2009年8月号
PoE対応Webカメラを雷サージから守ります!!
PoE/1000BASE-T対応 Ethernet用避雷器(形式:MDCAT)
(株)エム・システム技研 開発部
は じ め に
エム・システム技研では、このたびギガビットイーサネット(1000BASE-T)とPoE(Power over Ethernet)の両規格に対応したEthernet用避雷器(形式:MDCAT)を開発・製品化したので、ここにご紹介します(図1)。
Ethernet用避雷器としては、すでに10BASE-T/100BASE-TXの通信規格に対応した製品(形式:MDM5E-A)注)を発売しています。
現在でも10BASE-T/100BASE-TXが最も普及している通信規格ですが、徐々にギガビットイーサネット(1000BASE-T)に対応したパソコンが発売され始めています。そして、将来的には1000BASE-Tが主流になることが予想されます。
また近年は、企業の危機管理意識が高まり、セキュリティ対策の一環として監視カメラの設置が増えています。それに伴い、LANネットワークだけでデータ通信と給電が可能なPoE対応のWebカメラが使用されるようになってきています。
このようにEthernetの使用環境が日々変化するなかで、新しい通信規格に対応した避雷器を多くのお客様から要望されるようになり、このたび新製品を開発しました。
新避雷器MDCATの特長をご紹介する前に、1000BASE-T、CAT5eおよびPoEについて簡単にご説明します。
1.1000BASE-T
1000BASE-Tは、光ファイバなどの高価な回線を使用せずに、安価なメタルケーブルでギガビット(1Gbps)の伝送速度を実現するための規格であり、IEEE802.3abとして標準化されています。
100BASE-TX(伝送速度100Mbps)の10倍の伝送速度を実現するため、符号化方式の改良や、LANケーブルを構成する4対8本の電線をすべて利用し、各対が同時に送受信できるように変更されています(100BASE-TXは4対のうちの2対が未使用でした)。
2.CAT5e
CAT5eはANSI/TIA/EIA-568で規格化された配線システムについての規格です。CAT3、CAT5、CAT5eというように数字が大きくなるほど高品質な配線システムになっています。LANケーブルやRJ-45コネクタ、モジュラジャックなどが対象になり、もちろんEthernet用避雷器も配線システムの一部と考えられるため、この規格の対象になります。
ギガビットイーサネット(1000BASE-T)の規格では、CAT5以上を要求していますが、CAT5は1000BASE-Tが規格化される前に標準化されたこともあり、製造時期によってはLANケーブルが1000BASE-Tで要求されている性能を満たしていない恐れがあります。このため、1000BASE-Tの使用を前提として作成された、CAT5eの規格が推奨されています。従来の10BASE-TではCAT3以上、100BASE-TXではCAT5以上が要求されていました(表1)。
表1 IEEE802.3とカテゴリの対応
カテゴリ | 10BASE-T IEEE802.3i |
100BASE-TX IEEE802.3u |
1000BASE-T IEEE802.3ab |
伝送速度 10Mbps | 伝送速度 100Mbps | 伝送速度 1000Mbps | |
CAT3 | ○ | × | × |
CAT4 | ○ | × | × |
CAT5 | ○ | ○ | △※ |
CAT5e | ○ | ○ | ○ |
CAT6 | ○ | ○ | ○ |
※ 適合しないケーブルも存在します。
3.PoE
PoEは、データ通信で使用している信号線(LANケーブル)に電源を重畳して給電する技術で、IEEE802.3afとして規格化されています。PoE機能を使うことで、Webカメラや無線ハブなどを設置する場合に、LANケーブルだけでデータ通信と電源供給が行えるため個別の電源配線工事が省略できます。
給電方式は、電源を重畳させるケーブルによってAlternative AとAlternative Bの2種類に分かれています。詳細については、図3下段の説明をご参照ください。
4.MDCATの特長
・ 1000BASE-T対応
1000BASE-T対応のEthernet 機器が性能を発揮できるように、MDCATは通信への影響を最小限に抑えています。規格で決められている最大ケーブル長100mで、CAT5eの通信試験に合格しています。
・ PoE対応
通信機器への電源供給のために48V(最大57V)の電源電圧がLANケーブルに出力されます。MDCATでは、PoEで使用される線間電圧についても放電素子と電圧制限素子の2段構成で保護性能を高めています。
市販の自称PoE対応避雷器の中には、Ethernet機器の給電回路・受電回路に対する避雷性能が、MDCATに比較して十分でない製品が含まれています。PoE対応避雷器の選定に際しては、その保護性能についての確認が必要です。
また、MDCATは2種類の給電方式Alternative A、Alternative Bのどちらにもご使用可能です。
図3にPoEの給電方法とMDCATのブロック図を示します。
・ 小形ケース・DINレール取付
MDCATは、パソコンやWebカメラなどの近傍に手軽に取付けていただけるように、本体を固定せずLANケーブルの一部として使用しても違和感のないデザインです。また、FA現場や19インチラックなどへの高密度な取付けにも対応できるよう、DINレール取付構造を採用しています(図4)。接地用DINレールに取付ければ、接地線を1台ずつ接続する作業が省略できます。なお、接地端子としてネジ端子も用意していますから、電線による接地も可能です。
・ ショートバーにより、接地方式を選択できます。
パソコンやPLCなどの被保護機器には、シールド、FG(筐体接地)、
SG(信号用接地)の有無など様々なケースが考えられます。
工場出荷時にはグランディングしていますが、ショートバーを取り外しフローティングにすることでアースからの回り込みを防止したり、シールドを避雷用接地でなく、信号用接地としてシールド端子から個別接地にすることも可能であるため、様々な状況への対応が可能です。
おわりに
以上、1000BASE-TとPoEへの適用を中心として新避雷器MDCATをご紹介しました。
Ethernet技術は日進月歩で発達しており、今後も伝送速度の高速化や供給電源の大容量化などが進められていくと思われます。エム・システム技研は、それらのEthernet技術の変化に対応した新しい避雷器を迅速にご提供できるよう今後も努めて参ります。
注)MDM5E-Aについては、『エムエスツデー』誌2006年3月号でご紹介しています。