エムエスツデー 2005年12月号

超高速30μs応答
直流入力変換器(形式:M2VF2)
(株)エム・システム技研 開発部
は じ め に
エム・システム技研では、高速応答変換器として各種の応答時間をもつ変換器を取り揃えて参りました。
今回は、バリエーションを増やすため、手のひらに収まるコンパクトで高性能なプラグイン変換器「みにまる」シリーズに属す超高速 直流入力変換器(形式:M2VF)の兄弟製品として、さらに高速の30μs応答 直流入力変換器(形式:M2VF2)を開発しましたので、ここにご紹介します。
1.外観と寸法
このたび開発したM2VF2の外観と寸法は、上記の兄弟製品であるM2VFと同一です(図1)。
2.背 景
エム・システム技研は、種々の応答時間をもつアイソレータを用意しています。
応答時間としては、大きく分けて次の3種類があります。
(1)一 般 用:0.3~0.6s(0→90%応答)
(2)高 速 用:約25ms(0→90%)
(3)超高速用:180~500μs (0→90%)
(1)の一般用変換器には、信号ラインに混在する50、60Hzの電源ノイズを約1/40に減衰させるフィルタ機能があります。
変換器を使用する一般的な環境では、アナログ信号は短時間では変化せず徐々に変化することが多いのです。
たとえば温度制御においては、温度信号は短時間でみればほとんど変化がなく、温度信号以外の変化の速いノイズはカットできるため、通常はこの一般用が使用されます。
(2)の高速用(約25ms)の変換器を選択されると、50、60Hzの電源ノイズは1/3程度にしか減衰しません。
(3)の超高速用(180μs)の変換器を選択されると、50、60Hzの電源ノイズはまったく減衰しません。
応答時間が短くなるほどフィルタ機能も薄れるため、ノイズが混入しないように信号線には“シールド付より対線”を使用するなど、入力信号にノイズが混入しないように十分な注意が必要です。
また電源配線の配置にも注意を払ってください。
エム・システム技研では、180μs(0→90%)の超高速アイソレータ注1)を用意していました。しかし、お客様のご要望のなかに、さらに高速な応答時間をもつ変換器を希望される声がありました。エム・システム技研は、常にお客様のご意見に注目しています。
当初は、30μs(0→90%)もの超高速アイソレータがなぜ必要なのか疑問でした。しかし、振動解析などでロードセル信号などを超高速に取り込み、パソコンでデータ処理する場合に、「超高速30μs応答直流入力変換器」が必要になるのです。
そのとき、信号の回り込みの防止、機器の保護、信号の2点アースの可能化、接続されている機器間で故障切り分けに必要な分界点(信号切離し点)の明確化などが、このアイソレータを使用することにより実現します。
エム・システム技研は、お客様が使用される各種信号の周波数帯に合った周波数特性をもつ信号変換器をご用意できます(表1)。
信号に合った超高速アイソレータをご選択ください。応答速度が速ければ速いほど良いというのでなく、すでにご説明したように、取り扱い信号レベルと存在するノイズに合わせてお選びください。
表1 エム・システム技研の超高速アイソレータ
製品名称 |
形 式 |
0→90% 応答 |
周波数 帯域 (-3dB) |
0→63% 応答 |
0→99.9% 応答 |
M・UNITシリーズ 超高速 直流入力変換器 |
SVF | 500μs以下 | 732Hz | 217μs以下 | 1.5ms以下 |
みにまるシリーズ 超高速 直流入力変換器 |
M2VF | 180μs以下 | 2.03kHz | 78μs以下 | 538μs以下 |
M5・UNITシリーズ 超高速 直流入力変換器 |
M5VF | 150μs以下 | 2.44kHz | 65μs以下 | 449μs以下 |
みにまるシリーズ 超高速30μs応答 直流入力変換器 |
M2VF2 ( 本稿紹介新製品) |
30μs以下 | 15kHz | 13μs以下 | 90μs以下 |
3.主な仕様
M2VF2の主な仕様を表2に示します。
各種の入力・出力・電源仕様を取り揃えました。
出力のうち、電流出力は不要かとも考えましたが、用意しました。電流出力の負荷抵抗に並列に入るコンデンサとしては、応答時間の関係で2000pF以下をご使用ください。
耐電圧については、M2VFは入力−出力間 AC1000V 1分間 機能絶縁ですが、M2VF2では入力−出力間 AC2000V 1分間 基本絶縁にグレードアップしました注2)。
表2 M2VF2の主な仕様
入力仕様(入力信号) |
|
電流入力 | 電圧入力 |
DC 4~20 mA | DC 0~1 V |
DC 2~10 mA | DC 0~10 V |
DC 1~5 mA | DC 0~5 V |
DC 0~20 mA | DC 1~5 V |
DC 0~16 mA | DC −10~+10 V |
DC 0~10 mA | DC−5~+5 V |
DC 0~1 mA | ・電圧レンジが 上記以外のときは ご指定ください。 |
DC 10~50 mA | |
DC −1~ +1 mA | |
DC −10~+10 mA | |
・電流レンジが上記以外のときはご指定ください。 | |
出力仕様(出力信号) |
|
電流出力 | 電圧入力 |
DC 4~20 mA | DC 0~10 mV |
DC 0~20 mA | DC 0~100 mV |
DC 0~16 mA | DC 0~1 V |
DC 0~10 V | |
DC 0~5 V | |
DC 1~5 V | |
DC −10~+10 V | |
DC−5~+5 V | |
電源仕様(供給電源) |
|
交流電源 | 直流電源 |
AC 85~264 V※1 | DC 24 V |
AC 100~240 V | DC 11~27 V※1 |
DC 110 V※1 |
※1、CE対象外
お わ り に
本稿では、超高速30μs応答 直流入力変換器 M2VF2を中心に超高速アイソレータについてご説明しました。
今回ご紹介した製品は、お客様のご意見をもとに開発させていただきました。今まで作られていないこんな変換器が欲しい、あんな変換器が欲しいというご要望がありましたら、これからもどしどしエム・システム技研にご意見をお寄せください。
今後もお客様のご要望にお応えし、ご使用目的に適した変換器をご提供していきたいと考えています。
注1)超高速アイソレータについては、『エ ムエスツデー』2005年9月号の「計装豆知識」をご参照ください。
注2)機能絶縁:耐圧能力が仕様を満たすた めに必要な基準 。 基本絶縁:EN61010-1の基準をもとに、耐圧能力が沿面距離、空間距離ともに規格に適合している状態。
*みにまるは、エム・システム技研の登録商標です。