エムエスツデー 2009年9月号

CC-Link用
電力マルチメータ(形式:54UC)
(株)エム・システム技研 開発部
は じ め に
ご好評をいただいている電力マルチメータ「54・UNITシリーズ」に、このたびCC-Link対応タイプ(形式:54UC)を新しく加えたので、ここにご紹介します。
1.54・UNITシリーズ
54・UNITシリーズは110角の表示部をもつ4点指示形の電力マルチメータで、発売以来多くのお客様からご好評をいただいています。
電力マルチメータとは、その名の示すとおり1台で電圧、電流、電力など複数項目の計測値を表示する計測器で、54UCを含む工業計測用の多くの製品は、これら計測値の伝送機能をも備えています。
従来、単項目計測のメータを多数必要としたケースに対しても1台のメータで済み、また計測した任意の計測項目値を伝送できることから、すなわちその利便性とコストパフォーマンスのゆえに、近年ますます需要が高まりつつあります。
伝送方式については、エム・システム技研では、DC4~20mA、DC1~5Vなどのアナログ出力タイプ注1)(形式:54U)およびModbus対応タイプ注1)(形式:54U)やLONWORKS対応タイプ(形式:54UL)といったデジタル伝送タイプをすでにリリースしています。そして、今回追加したCC-Link対応の54UCはPLCをマスタとするデジタル伝送タイプです。
2.CC-Link
“CC-Link(Control&Communication Link)”とは、ご承知のとおり三菱電機(株)が1996年から提唱している同社のPLC(MELSECシーケンサ)を中心とする、新しいオープンなフィールドネットワークであり、以下に列挙する特徴を備えています。
・ 最高10Mbpsの高速伝送を実現(伝送距離100m時)
・ 最長1200mの総延長距離を実現(伝送速度156kbps時)
・ RAS(Reliability、Availability、Serviceability)機能、具体的には待機マスタ機能、子局切り離し機能、自動復列機能、テスト・モニタ機能などによって、高信頼性を有するネットワークシステムを提供
なおCC-Linkは、ISO(国際標準化機構)によって国際規格ISO15745-5として規格化され、国内のみならずグローバルな展開を見せています。
3.54UCの特長
表1 54UCの出力仕様(CC-Link仕様)
CC-Link仕様 | |
通信方式 | CC-Link Ver.1.10対応 |
接続方式 | コネクタ形端子台 |
通信ケーブル | CC-Link準拠のケーブル |
局番設定 | 1~64(前面ボタンにより設定) |
局タイプ | リモートデバイス局 |
占有局数 | 1局占有 |
伝送速度設定 | 156kbps/625kbps/2.5Mbps/ 5Mbps/10Mbps (前面ボタンにより設定) |
表 示 | 交信正常時:通信セグメント点灯 |
表2 54UCの計測項目
計 測 項 目 |
電圧:1−2、2−3、3−1、1−N、2−N、3−N、Σ |
電流:1、2、3、Σ |
有効電力:1、2、3、Σ |
無効電力:1、2、3、Σ |
皮相電力:1、2、3、Σ |
力率:1、2、3、Σ |
周波数 |
電圧位相角 |
有効電力量:受電/送電/ピーク/オフピーク |
無効電力量:受電/送電/遅れ/進み/ピーク/オフピーク |
皮相電力量 |
デマンド有効電力 |
デマンド無効電力 |
デマンド皮相電力 |
デマンド電流:1、2、3 |
高調波:Σ、2~31次 |
電圧:1−2、2−3、3−1 |
電流:1、2、3 |
ピーク積算時間、オフピーク積算時間 |
各最大値、最小値 |
各デマンド履歴:1~4 |
注)l 1、l 2、l 3などの1、2、3は、R相、S相、T相を表しています。
(1)CC-Link(表1)
54UCは1局占有のデータ量しか使用しないため、Ver.1.10を採用しています。したがって親局としてはVer.2.0、Ver.1.10の両方が使用できます。
また、Ver.2.0対応の親局を使用する場合は、Ver.2.0対応の他の子局と共存させることができます。
データの受渡しには、コマンド方式を採用しています。したがって、54UCのすべての計測データがCC-Linkを介して取得できます。表2に54UCの計測項目を示します。
また、結線方式や、PT比、CT比といった初期設定を含むすべての設定をCC-Linkを介して行えます。
ただし、CC-Linkの設定(局番や伝送速度)は前面ボタン(図2参照)あるいはコンフィギュレータソフトウェア(形式:53UCFG)注2)を使って実行します。
54UCはコマンド方式を採用しているため、エム・システム技研のリモートI/O(R3シリーズなど)とは操作方法が異なります。リモートI/Oでは、あらかじめ決められた計測データを伝送するのに対して、コマンド方式の場合には、受信データによって送信する計測データのアドレス指定を受け、送信データとしては指定された測定値を返送します。すなわち、電力マルチメータ54UのModbus通信と同様の動作になります。また、測定項目のアドレスもModbusの場合と同じです。
このため、若干のプログラミングが必要になりますが、すべての計測項目の受信が可能です。
(2)接点信号入出力
54UCは、CC-Linkのほかに接点信号の入出力機能を備えています。54UCのタイプには2種類あり、入出力1点ずつのタイプと、出力2点のタイプに別れます。
入力接点信号に対しては、デマンドの同期信号や電力量データのリセット信号など任意の用途を設定できます。出力信号については、電力量パルスや警報出力を設定できます。警報に関しては、デマンドや歪み率など、細かく用途を設定でき、CC-Linkから読み出すことも可能です。
(3)その他
54・UNITシリーズ共通の特長については、以前からご紹介していますが、ここでも簡単に触れておきます。
(1)表示器には白色のバックライトを採用しているため、黒色表示とのコントラストと相まって視認性に優れています。
(2)電圧、電流の測定精度は0.3%と高精度です。また高調波も31次まで計測可能であり、歪んだ波形をもつ入力についても正確に計測できます。
(3)コンフィギュレータソフトウェア(53UCFG)が使用できるため、設定作業はきわめて簡単です。
PCとの間の通信には赤外線通信注3)を採用しているため(図3)、盤に取り付けた状態で使用できます。なお、設定内容はCSV形式のファイルで保存できるため、Excelなどの汎用ソフトウェアを用いた保守や管理が容易に行えます。
(4)ループテスト機能が付いているため、接点出力のON、OFFを手動で実施することができ、設置時やメンテナンス時に便利です。
おわりに
54・UNITシリーズについては、今後、零相電圧メータおよび英文字表示に対応した製品も順次リリースする予定です。
これからも、より便利で優れたマルチメータに成長させたいと願っておりますので、関係あるご意見、ご要望をお持ちでしたら、ぜひエム・システム技研ホットラインまでお寄せください。
注1)54Uの計測項目値の伝送については、Modbus対応タイプとアナログ出力タイプがあります。
注2)53UCFGは、エム・システム技研のホームページから無償でダウンロードしてお使いいただけます。
注3)赤外線通信アダプタ(形式:COP-IRU)が必要です。