エムエスツデー 2008年11月号

ビルドアップ形インテリジェントコントローラ BA3シリーズ
LONWORKS用 マスタカード(形式:BA3-ML1)
(株)エム・システム技研 開発部
は じ め に
前回に引き続き、ビルドアップ形のBAコントローラ(以下、BA3シリーズ(図1)をご紹介をします。
前回は、BA3シリーズの中核であるBACnet用 コントローラ(形式BA3-CB1)をご紹介しました。BA3-CB1はビルディングオートメーションに関わる各種監視・制御機能を搭載していて、BACnet通信やI/Oカードを組み合わせることによって、様々な分散監視制御が行えます。
ビルディングオートメーションにおいてもオープンネットワークが普及していて、すでに多くのネットワーク用機器が使用されています。
エム・システム技研では、コントローラの応用範囲を広げるべく、コントローラからそれらのネットワークのスレーブ機器に対してデータの収集監視または出力が行えるよう、各種ネットワーク用マスタの開発を進めています。
今回は、ビルディングオートメーションで普及しているLONWORKSネットワークに対応した、LONWORKS用 マスタカード(形式:BA3-ML1)についてご紹介します。
図2にBA3-CB1とBA3-ML1を組み合わせた場合の構成例を示します。
1.LONWORKSとは
LONWORKSは米国ECHELON社によって開発されたインテリジェント分散形のネットワークシステムに関する技術で、ビルおよび工場のオートメーション、ホームコントロール注1)、電気/ガスのモニタリングなどの分野で使われています。
主な特長の一つとして、ネットワークの配線の容易さがあり、ツイストペア線(線径0.5mm2 )を使って通常の渡り配線で最大長900m程度まで配線できます。
また、許容される配線最大長は短くなりますが、配線の途中で分岐したり、ループ状に使用することも可能です(フリートポロジー、最大長500m)。
その他、LONWORKSネットワークでは、各LONWORKS機器の入出力(アナログデータ、接点信号など)とノードの入出力の対応付けをLONWORKSのインテグレートツール(ECHELON社製LonMaker)を使って行いますから、PLC上でプログラムを組むことなく、入出力データの対応付けを設定できます。
2.LONWORKS用マスタカードの特長
(1)入力ネットワーク変数512点、出力ネットワーク変数512点使用可能
入力ネットワーク変数16点または出力ネットワーク変数16点が定義されているファンクショナルブロック(fbNVI[0~31]、fbNVO[0~31]、図3)を入力、出力とも32ブロック定義できるため、合計1024点分接続できます。
fbNVI、fbNVO上で定義されているネットワーク変数注2)はそのデータフォーマット(ネットワーク変数の型)を変更できるため、LONWORKS機器の多様なデータ形式に対応できます(データサイズが4バイト以内のものに対応しています)。
BA3-ML1のネットワーク変数の型の変更については、LNSプラグインソフトウェア(形式:BA3L1PLG)を用意していますので、それをご利用ください(図4)注3)。
各ネットワーク変数は、周期的に1変数ずつ順番に伝送していて、伝送失敗時には次の周期で同一データを再度伝送するため、データを確実に伝送できます(1変数につき0.1秒ずつ、間隔をおいて伝送します)。
(2)接続(バインド)可能ノード数65ノード
LonMaker上で各LONWORKS機器の入力ネットワーク変数と出力ネットワーク変数を接続する際、1つのノードに接続できるノードは通常は15ノードまでであるため、従来はそれを超えるノードとは接続できなかったり、システムの構成を工夫したり、特別なツールが必要だったりしました。
しかし、BA3-ML1は接続可能ノード数(アドレステーブル)を拡張するためのプロトコルに対応し、LonMaker上において、通常の操作で最大65の異なるノードと接続できます。
3.その他の仕様
■ 動作環境
・インテグレートツール:LonMaker Turbo EditionVer.3.2以降+LonMaker Turbo Service Pack1以降)
・リソースファイル:LonMark Resource FileVer.13以降
・使用ニューロンチップ:FT3150
・トランシーバ:FT-X1
・ネットワーク変数:入力512点、出力512点(アドレステーブル拡張により、1ノードに対して最大65ノードまで接続可能)
お わ り に
BACnet用 コントローラとLONWORKS用マスタカードを組み合わせることによって、ビルオートメーションで普及しているLONWORKS機器を活用でき、より充実した監視制御が行えます。
BA3シリーズをどうぞご活用ください。
注1)ホームコントロール:家庭内に設置されているエアコンや照明器具などを集中的に監視・制御し、室温や湿度、照明の自動調節などを行うこと。
注2)ネットワーク変数:LONWORKS上の1データの伝送単位です。各デバイスが保持するデータ(温度や電圧の値)毎にネットワーク変数が割り付けられています。他ノードに伝送する設定を行う場合、入力データ(nvoValなど)と出力データ(nviVal)をLonMaker上で接続することにより、その伝送が行われます。属性としてネットワークに対して送受信の方向(nviまたはnvo)、データのフォーマット(ネットワーク変数の型)をもちます。
注3)LNS(LONWORKS Network Service)プラグインソフトウェア:LonMaker上にて使用するソフトウェアです。エム・システム技研ホームページ(https://www.m-system.co.jp)のダウンロードメニューに追加する予定です。