2000年2月号

インテリジェント形バルブアクチュエータ
「サーボトップⅡ」

(株)エム・システム技研 開発部
 
はじめに
 近年、マイクロ・エレクトロニクス技術の発展には著しいものがあります。エム・システム技研の信号変換器においても、シガレットケースサイズの「みにまる」シリーズや、さらに小さい「ピコマル」シリーズにもマイクロプロセッサが搭載され、インテリジェント化されました。このため、調整が簡単に行えるようになり、レンジ変更も、パソコンの画面 を見ながら簡単に実行できるようになりました。
 エム・システム技研では、これらの変換器に加えて、このたび、マイクロプロセッサ搭載のインテリジェント形電動バルブアクチュエータ「サーボトップⅡ」(形式:PSN1、価格22~23万円およびPSN3、価格28~29万円)を開発しましたので、ここに紹介させていただきます。

1.サーボトップⅡの特徴
 従来からエム・システム技研では、各種のコントロールバルブ用電動アクチュエータを開発、販売してきました。なかでも「サーボトップ」(形式:BST1、BST2およびBST3)は、接点摺動部を追放することで実現できた高性能、高機能、高信頼性商品として高い評価をいただいてきました。
 サーボトップⅡは、その後継機種として、小形、軽量化したうえ、従来に勝る高性能、高機能および高信頼性を目指して開発されました。その特徴を以下にご説明します。
 (1)コントローラへのマイクロプロセッサの搭載により、プログラミングユニット(形式:PU-2A)の利用が可能になりました。また、駆動モータにはDCステッピングモータを採用しました。その結果 、以下に列挙する便利な機能が搭載できました。
 ●ユーザインタフェースからトリマ(可変抵抗器)を排除し、ゼロ、スパンなどの調整作業が簡単に行えるようになりました。
 たとえば従来は、ゼロ、スパン調整作業の際は、トリマをドライバで少しずつ回して、バルブが全閉または全開位 置になったことを確認しながら行う調整作業が必要でしたが、新製品では全閉位 置や全開位置を数値で直接指定できるようになりました。スプリットレンジ、不感帯幅あるいは再起動制限タイマなどの調整についても同様です。なお、ゼロ、スパン調整では、プログラミングユニットを使わず、コントローラの強制開閉スイッチの操作によって、バルブ搭載後の現物合せで全閉(全開)位 置に調整後に、その位置を全閉(全開)位置として学習させることもできます。
 ●バルブ開閉速度を現場で変更できるようになりました。
 従来は、ギヤ機構の減速比により開閉速度が決定され、出荷後に変更することはできませんでした。サーボトップⅡでは、出荷後にもプログラミングユニットを使って変更できますから、プラントの運転状況に合せて開閉速度の調整が可能です。
 (2)推力、機能を従来機種と同一あるいはそれ以上としながらも、本体体積は約40~50%削減できました。
 コントローラ回路にマイクロプロセッサを採用したため、ハードウェアでのロジック回路は大幅に削減されました。また、パワーエレクトロニクス技術を応用することによって、電源回路やモータ駆動回路も小形化されました。
 さらに、前述したようにステッピングモータを採用することにより、機構部の小形化も実現できました。ステッピングモータは、体積に対する出力の割合が大きいため、従来と同じ推力と開閉速度を維持しながら、モータと内部減速機構を併せた体積は従来の1/6程度に小さくなりました。なお、ステッピングモータでは、一般 に脱調が懸念されます。しかし、サーボトップⅡでは、パルスをカウントして制御する方式ではなく、アクチュエータ出力軸にポジションセンサを取付け、その値をフィードバックすることによって制御する方式を採用しています。したがって、仮にモータが脱調したとしても、それを検知するため、原点復帰などのわずらわしい作業を行う必要はありません。
 (3)ステッピングモータの採用とともに、ポジションセンサにも、エム・システム技研の無摺動角度センサ「インダクポット」(形式:NRA)を採用し、電気的に無摺動であることで統一しました。すなわち、サーボトップⅡには、高機能、高信頼性商品という位 置づけを与えたため、通常はポテンショメータが用いられるポジションセンサにも、電気的に無摺動のタイプを選定しました。
 (4)EU加盟国への輸出に必要なCEマーキングに対応しました。エム・システム技研では、早くからCEマーキングに取り組んできました。サーボトップⅡについてもCEマーキング対応を前提に開発を進めてきました。なお、サーボトップⅡは、電磁適合性指令(89/336/EEC)と低電圧指令(73/23/EEC)に適合しています。

2.より高度なインテリジェント化
 マイクロ・エレクトロニクスの発展の成果として、フィールドネットワーク用通 信チップが実用化され、種々のフィールドネットワークが提唱されています。これを採用すると、すべての機器を1本のケーブルで数珠つなぎにすることができ、操作端や検出端といった現場側機器と、調節計、PLCやDCSなどとの間で、機器ごとに伝送用ケーブルを引く必要がなくなります。加えて、AMS(Asset Management Solutions)と呼ばれる機能により、現場側機器の状況や、運転時間などの保守情報をネットワーク経由で読み込むことができます。
 また、マイクロプロセッサの性能向上に伴って、調節計やDCSに搭載されていたPID機能を現場側の機器に取り込むことが可能になってきました。
 エム・システム技研では、バルブアクチュエータなどの操作部コンポーネントについても、より進んだ機能を搭載した製品を開発したいと考えています。参考出品ながら、昨年開催されたINTERMAC'99およびシステムコントロールフェアには、通 信・PID機能搭載形サーボトップⅡ(オール・イン・ワン・アクチュエータ)を出展しました。
 これは、サーボトップⅡを、フィールドネットワークの一例であるModbusに接続可能にした製品です。パソコン画面 からネットワーク経由で、前述のサーボトップⅡの各種機能を設定できるほか、AMSの一例として、バルブ開度とアクチュエータ走行距離(バルブステムの移動距離の合計)を読み込む機能を搭載しました。
 また、2点のPV値を直接取り入れることができ、与えられたSP値をもとにPID制御をカスケードで行えます。たとえば、液面 制御を行うならば、指示された目標液位を保つため、液面計と流量計の値を読み取りながらPID制御を行うことができます。もちろん、読み取った液位 や流量は、ネットワークを通してパソコン側に伝えることが可能です。
 今後は、本製品を元にして具体的な商品開発に結びつけたいと考えています。MsysNetにはもちろん、各種のフィールドネットワークにも対応する予定ですので、皆様のご意見やご要望をお聞かせ願えれば幸いです。

おわりに

 以上、エム・システム技研の新製品サーボトップⅡと今後の予定について説明させていただきました。オフィスのパソコンから、インターネットを通 じて、地球の裏側にあるアクチュエータの調整を行ったり、運転状況を確認できる環境が、すでに現実のものになりつつあります。エム・システム技研では、エレクトロニクス技術の最新動向を見逃すことなく、常に新しい技術を取入れた製品を今後も開発していきたいと考えています。 ■

サーボトップみにまるインダクポットミニトップはエム・システム技研の登録商標、ピコマルは商標登録出願中です。

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