2000年8月号

ISA EXPO/2000とフィールドバス

 
は じ め に
 我々計装業界最大の展示会が、アメリカのISA EXPOとヨーロッパのINTERKAMAであることは、読者の皆様がよくご存じのところです。これらは隔年に交互に開催されますが、今年はISA EXPO/2000が8月21日(月)~24日(木)の間、ルイジアナ州ニューオーリンズで開催されます。本稿では、この展示会の注目点の一つであるフィールドバスについて考察してみることにします。

フィールドバス規格の制定とその経緯
 フィールドバスの標準化は、長らくIEC(国際電気標準会議)の手でIEC国際フィールドバス規格化作業として進められてきました。そして、この3月に「IEC61158フィールドバス規格」として、次の8つのバスを認定するという結論を出しました。
 ① FOUNDATION Fieldbus H1
  (ISA規格と同等。米国、日本が推奨するバス)
 ② FOUNDATION Fieldbus HSE
  (100MHz High Speed イーサネット)
 ③ PROFIBUS-DP
  (独Siemens社が提唱している欧州の主流バス)
 ④ WorldFIP(フランス、イタリアで使われているバス)
 ⑤ ControlNet(実質的にはDeviceNet(本誌2000年1月   号の「計装豆知識」参照))
 ⑥ Interbus-S(フェニックスコンタクト社が提唱して、   欧州で使われているバス)
 ⑦ P-Net(オランダで使われているバス)
 ⑧ SwiftNet(米国の小さな会社:ShipStarが提唱したバス)
 この結果は、我々、この業界に身を置く者から見て奇異であると同時に、標準化にはほど遠い感を否めません。事実、規格化委員会の委員長は、こんな結果を得るために13年間苦労したのではないといって辞任してしまいました。この委員会の上部に位置する調停メンバーは、1999年末までに申請している規格案をIEC規格にするという調停案を打ち出していました。こうせざるを得なかったこと自体が、米国と欧州連合のバスの並立によって、統一が困難であったことを物語っています。調停委員会としては、FOUDATION Fieldbus(米国、日本)とPROFIBUS(独)とWorldFIP(仏、独)の三者に落着くであろうと想定して、これらをタイプ1、2、3にするつもりだったようです。ところが直前に駆け込みがあって、上のような結果になったというわけです。これには、多分に政治的な背景も感じられます。八つ頭の怪獣とかOctoBusとか揶揄されています。

今 後 の 展 望
 このような事態の上に立って、今後何が想定されるでしょうか?
 ① 各フィールドバス間の「業界標準」をかけた生存競争が必然的に激しくなるでしょう。ユーザーにとっては、各バスのサービスと質の向上につながります。
 ② 規格が制定されたバスを採用しようと待っていたユーザー、ベンダーの多くは「在来の4~20mA/1~5V信号を使い続けながら、これらの生存競争を見守る」か、割り切って「自分の視野内で業界標準と判断されるバスを採用する」といった姿勢に転じると想定されます。
 ③ HSE(100MHz High Speed イーサネット)が勢力を得るという見方があります。イーサネットは、あるノードがデータを送り出したいと思ったとき、一定時間内にその転送が終了するという“決定性”がないため、リアルタイム性を重視する産業用バスには不向きと考えられてきました。しかるに、これまでの10MHzイーサネットでの現場経験とイーサネット自体の100MHzへのスピード向上とから、実用上問題ないというのが定説になっています。こうなると、OAの分野で完全に普及していて価格が安いこと、入手が容易なこと、理解者が多いことなどが利点になって、産業用バスとしての伸長に拍車が掛かる可能性が大いにあります。
 ④ ③の結果として、FOUNDATION Fieldbus だけでなく、DeviceNetでもPROFIBUSでもHSEの利点を認めて、HSEの上に自分のプロトコルを移植してユーザーに提供するとアナウンスしています。これらは今年中には実施されるものと思われます。もちろん、三者がHSEという物理媒体をそろって採用するだけで、プロトコルが共通になるわけではありませんが、それでもユーザーから見れば大きな進歩であり、安心材料です。
お わ り に
 ISA EXPO/2000に参加される方は、以上に述べた状況や事情を参考としつつ各社のブースを見学し、展示者と質疑を交わしてフィールドバスの行方を占われてはいかがでしょう。さらに、その延長上のテーマとして、インターネットやイントラネットという“IT化”手段が計装の業務にどうかかわりを持ちはじめているのか、はたして寄与するのかを実感する機会とされてはいかがでしょう。
 この記事に対するご意見、ご質問を、また見学後のご所感などあれば、次のE-mailアドレスまでお寄せいただければ幸いです。 E-mail:y-kwsm@po.iijnet.or.jp  ■
【(株)エム・システム技研 技師長】
 
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