2000年8月号 | ||||||||||||
小形電動アクチュエータ
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㈱エム・システム技研 開発部 | ||||||||||||
このたび、これらミニトップシリーズの改良形を発売開始しましたので、その概要と特徴をご紹介します。新形ミニトップには、従来と同様にリニアモーション形(製品形式:MSP4、MSP5、MSP6)とロータリモーション形(MRP4、MRP5、MRP6)の2種類があります。外形寸法は従来形と完全に同じですから、既存のアプリケーションに簡単に置き換え可能です。主な仕様については、表1を参照願います。以下に、新形ミニトップの特徴を説明します。
新形ミニトップへの改良の主眼は、信頼性の向上にありました。そのため、従来のブラシ付き直流モータに替えてステッピングモータを採用しました。この変更により、ブラシの磨耗や整流子のギャップに異物が詰まるなどのトラブルがなくなり、信頼性向上の目標を達成しました。なお、ステッピングモータといえば、脱調が懸念されます。新形ミニトップでは、モータに印加するパルスの数をカウントするのではなく、アクチュエータの出力軸の位置をポジションセンサによって検出し、フィードバックしながら制御する方法を採用しています。したがって、たとえ脱調を起こしても、それを検出し、モータの再起動を試みるか、あるいは警告ランプを点滅させてモータを停止します。また、ゼロ点復帰などのわずらわしい作業は不要です。 ブラシの有無とは別の問題として、直流モータは、その特性上、低速回転でのトルクが大きく、これが長所とされてきました。しかし、異物噛み込みなどによりモータがまったく回転しない場合(ロック状態)には、この性質が災いして過大なトルクを発生し、機構部分を自己破壊する可能性がありました。もちろん、そのようなトルクが発生しても破壊しないように大きい機械的強度を持たせた設計も可能ですが、経済的ではありません。また、アクチュエータの強度を破壊から免れるように大きくすると、今度はバルブ側を破壊する恐れが出てきます。これに対しては、ステッピングモータの採用により、モータ駆動電流が直接コントロールできるため、ロック状態での過大トルクを抑制することが可能になりました。また、同様にモータ起動時と定常運転時の電流の格差も抑制することができました。 (2)利便性の向上 信頼性の向上以外に、使い易さの向上も実現しました。 ①スプリットレンジ コントロールバルブのアプリケーション側からの要求として、スプリットレンジを希望されるユーザーが多数あります。従来は、その都度特殊仕様として扱ってきたため、不便をおかけしていました。新形ミニトップでは、スプリットレンジを標準化しました。なお、スプリットレンジの値は、4~12mAや12~20mAといった値だけではなく、たとえば4~12.8mAや11.2~20mAといった入力にも柔軟に対応することができます。指定可能な入力値については、仕様書等をご参照ください。 ②入力信号異常低下時の動作 また、従来は信号線の断線などの原因で、入力信号が異常低下した場合の出力軸の動きは、0%入力信号が印加された場合と同じ位置へ移動するだけでした。新形では、出力軸が伸長、短縮および停止(ロータリモーションの場合は、右回転、左回転、その場停止)の3モードの中から選択できます。しかも、コントロール基板上のディップスイッチにより簡単に設定できます。
(1)シールスプリング グローブ弁などに電動アクチュエータを採用した場合、バルブが着座したときに完全に締め切るように調整するには熟練を要します。流体圧力に抗して弁体を弁座に押し付けるには、ある程度の力を必要とします。一般的な電動アクチュエータの場合は、ねじ機構等の反力によってモータ電流遮断後の力を維持しています。これでは、わずかな位置のずれによって弁座に押しつける力がまったくなかったり、逆に押しつけすぎてアクチュエータやバルブを傷めることになったりします。しかし、エム・システム技研のリニアモーション形電動アクチュエータには、シールスプリングと呼ばれる機構を組み込んでいて、着座後は出力軸先端部に組み込んだバネの力により弁体を弁座に押し付けています。ねじ機構の反力は位置により極端に変化するのに比べて、バネのたわみ量による力の変化は小さいため、バルブの全閉位置に対する調整が容易です。 なお、MSP4を除き、三方弁にも適用可能にするため、この機構は押し引き両方向に対して有効な構造になっています。 (2)再起動制限タイマ 入力信号がノイズなどの原因で不安定になった場合、これに追従しようとしてモータの起動停止を頻繁に繰り返すと、モータが加熱したり機構部に余計な負荷をかけ、結果的にアクチュエータの電気的、機械的あるいは双方の寿命を縮めます。このようなトラブルを未然に防止する手段として、再起動制限タイマを搭載しています。これは、一旦モータが停止すると、あらかじめ設定した時間(再起動制限時間)が経過するまでは、再起動させない機構です。なお、設定時間経過後に入力信号の変化があれば、直ちに応答しますから、むだ時間は生じません。
今回の改良は、文中でも述べたように、信頼性の向上を主眼としています。引き続き、より一層の利便性を目指し、エム・システム技研サーボトップⅡに匹敵するような新形ミニトップの開発も進めていますので、ご意見やご要望をお聞かせいただければ幸いです。■ *ミニトップおよびサーボトップはエム・システム技研の登録商標です。 |
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