2000年9月号

2線式ポジション発信器
(形式:VOS2T、VOS2T-R)

㈱エム・システム技研 開発部
 
は じ め に
 エム・システム技研では、従来のカム方式に替えて新しい位置検出機構を採用した、2線式ポジション発信器VOS2Tシリーズを開発・販売して参りました。VOS2Tシリーズには、ロータリモーション形(形式:VOS2T-R)とリニアモーション形(形式:VOS2T)があります。以下、「VOS2T」はリニアモーション形を、また「VOS2Tシリーズ」はロータリモーション形とリニアモーション形の両方を示すことにして、「VOS2Tシリーズ」の機能と特長をご紹介します。

1.動作原理
 VOS2Tシリーズでは、角度検出機構としてエム・システム技研の角度センサ、インダクポットと同じ原理を採用しています。インダクポットの動作原理については、本誌1995年9月号に記載されていますが、ここでも、再度簡単にご紹介します(詳細については同号の10~13ページをご参照ください)。
 交流磁界の中にコイルを置くと、コイルに交流起電力が発生し、その起電力は、コイルの断面を横切る磁束の数に比例します。平行磁界の場合は、コイルの回転角度ではなく、その正弦(コイルと磁束との間の角度をθとした場合、sin θ)に比例した出力が得られます。VOS2Tでは、出力が回転角度の正弦に比例することを利用しています。すなわち、コイルに直結したVOS2T側レバーに固定されたピンから、レバー回転角度0°の線に引いた垂線の長さhに、出力が比例します(図2参照)。VOS2T-Rでは、コイルの回転角度に比例した交流起電力が発生するように、磁界の形状を変形させています。
 このようにして、コイルに発生した交流起電力を整流器を経て取り出すと、回転角度に応じた直流電圧が得られます。VOS2Tシリーズでは、ここに説明した原理で得られた直流電圧信号を、2線式発信回路を使い、電流信号に変換して発信しています。

2.内部構成とその機能
 VOS2Tシリーズのブロック図を図3に示します。VOS2Tシリーズは、大きく分けて、①励磁側コイルと入力軸に直結された回転側(2次側)コイルで構成される機構部、②発振回路と正逆切換回路および整流回路で構成されるセンサ回路部、③電源回路と増幅ならびに出力回路で構成される2線式発信回路部、以上3ブロックから構成されています。各ブロックの動作を、順を追って説明します。
 2線式発信回路部の電源回路は、センサ用電源を発生しセンサ回路部に供給します。センサ回路部では、発振回路で発生した交流電圧を励磁側コイルに供給します。交流電圧を印加された励磁側コイルが交流磁界を生じ、それによって2次側コイルに交流起電力が発生します。発生した交流起電力は、正逆切換回路を経た後、整流回路において直流電圧信号に変換されます。2線式発信回路部の増幅回路で、この直流電圧信号は増幅され、さらに出力回路で4~20mAの直流電流信号に変換され、出力信号として発信されます。

3.特 長
 VOS2Tシリーズの主な仕様を表1に示します。以下、VOS2Tシリーズの特長を、従来機種と比較しながら説明します。
 VOS2Tシリーズの最大の特長は、軽量コンパクトさにあります。エム・システム技研の従来機種は、他社製品と比べれば十分に小さかったのですが、さらに容積比で約40~50%、重量比で約30%と小形軽量化されました(いずれも、レバーなどの付属品を除く)。他社製品(現場設置型の発信器タイプ)と比較していただくと、そのコンパクトさをご理解いただけると思います。従来機種では、カム機構によって回転運動を直線運動に変換し、得られた変位を作動トランスを使って検出する方式を採用していました。それに対し、VOS2Tシリーズではコイルを回転させ、前述した原理により電圧を直接読みとる方式に変更しました。すなわち、大きな容積を占める差動トランスを除去することによりコンパクト化を実現しました。
 また、カム機構と差動トランスの組合せから、直接コイルを回転させる方式への変更は、機械的ヒステリシスに起因する出力誤差の減少にも役立っています。なお、従来はリニアモーション形だけに搭載されていたリターンスプリングを、ロータリモーション形にも搭載しました。このため、リンク機構のバックラッシュによるヒステリシスを除去することができました。

お わ り に
 以上、簡単にVOS2Tシリーズについてご紹介しました。
 今後の計画として、VOS2Tシリーズのインテリジェント化を予定しています。インテリジェント化によって、リニアライザなどのより複雑な機能の搭載が可能になります。リニアライザを搭載すれば、バルブ開度発信器として利用した場合に、バルブの流量特性に応じた出力信号を発信したり、ストロークの長いシリンダの位置検出も容易に行えるなど、応用範囲が広がります。どうぞ、ご期待ください。    ■

インダクポットはエム・システム技研の登録商標です。
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