ヨーロッパのINTERKAMAとならぶ、計装業界二大展示会の一つであるアメリカのISA
EXPO/2000が、8月21日から24日の間ニューオーリンズで開催されました。
これらの展示会は、単に業界の最新技術動向に接する場としてだけではなく、業界の景気動向、各社の消長動向などを占う場でもあり、この業界に身を置くわれわれにとって貴重な機会です。
以下に私の眼で見た印象を列記します。多分に主観を交えたものであり、視点も限られていることをお許しください。
昨年10月にドイツのデュッセルドルフで行われたINTERKAMAや1998年にアメリカのヒューストンで行われた前回のISA
EXPOに比べて、半分以下の展示規模のように思われました。
①フィッシャーローズマウント社やABB社、ODVA(Open DeviceNet Vendor Association
Inc.)などの有力企業、協会のいくつかが出展を取りやめた(このようなことは、各企業のそのときの都合によって、過去においても珍しいことではないが)。
②出展各社の展示内容や規模も、INTERKAMAのそれのサブセットになっているところが多い。
③INTERKAMAでは、FA(ファクトリーオートメーション)製品とPA(プロセスオートメーション)製品が一体になって展示されていたのに対して、PA製品が主体。
などが理由と考えられます。投資対効果を勘案した結果と思われますが、業界が置かれている一面を表しているように思われます。
センサ、アクチュエータ、コントローラ、レコーダ、信号変換器、リモートI/O、フィールドバス、計装用ソフトウエアなどを含めて、斬新な21世紀を占うようなテーマや展示はなかったように思われます。これは悪いことではなく、この業界が成熟期に入って、既成製品の止揚フェーズに至っていると見るべきでしょう。このような時期には、品質、コスト、サービスでベンダー間の優劣がつくため、開発競争とは違った淘汰が発生し、ひいてはベンダー間の消長、統合につながりかねません。日本のユーザーも、メーカーもこのような状況を脳裏において、今後に処すことが重要であるように感じました。
ITの時代の中にあって、計装業務にウェブを採用する話題がこの2年間くらい過熱気味でしたが、実地評価が進んで実績に裏付けられた、落着いた展示が見られました。このことは同時にウェブが万能ではないこともわかり、ユーザー自身が使い方を見極める時期に入ったことを示しています。
FFのブースでは、INTERKAMAのときと同様、各社のFF対応センサ、アクチュエータ、記録計その他の補機類が、H1バスを介していかに容易に相互接続でき、かつ完全に動作するかを実演展示していました。また併設されたカンファレンスでは、導入したFFで計装された実システムにおけるメンテナンスに関する発表が行われていましたから、これもFFのステータスの進化を物語っているように思われました。
5.ハイスピード・ファウンデーション
フィールドバス(HSE) |
これまでのH2バスに代わるバスとして、100メガビット/秒のイーサネットを物理媒体として使うことが、昨年FF協会からアナウンスされましたが、これのプロトタイプが実演展示されていました。またH2には、H1を何本も束ねて中央のコンピュータに運ぶ役割に加えて、PLCやリモートI/Oを接続する役割も明記されています。このことは、FF検討当初から時間がたって世の中の計装環境が変化、進展したことに対する自己適応策とも見えます。リモートI/Oに接続されるのはFFに対応していないセンサ、アクチュエータ、補機類のはずですから、逆に言えば、こういうものまでFFの世界に導き入れることになって、FFのカバー範囲が急速に拡大し、普及が加速する可能性を感じました。
われわれには、これはヨーロッパのものであるという先入観がありますが、シーメンス社の手で盛んに展示実演されていました。会場でも、その後私が回った米国のエム・システム技研の販売代理店でも、米国でPROFIBUSが急速に伸びているという話を聞きました。これには2つ理由があるように思います。
①FFがファンクションブロックを含んで高度な内容であるため、ユーザーの理解と認知に時間がかかっている。DeviceNetはFA用だという認識がある。PROFIBUSは、もともと領域を厳密に区別をしていないうえ、既存の計装との違和感のない接続を意識している。消去法で行くとこれが残る。
②FFやDeviceNetが、協会形式に従って、有力ベンダーが議論を重ねて時間を要しているのに対して、PROFIBUSはシーメンス社が単独で推進して来ている。このため、決定と行動が迅速で、サポートや責任も明確である。通信チップも完備したものが、リーズナブルな価格で安定して供給される。性能も高い。
今回の展示を見ても、ここ1、2年でこの商品ジャンルが急速に確立したように感じられます。展示社数が大幅に増えました。端子台/コネクタメーカー、信号変換器メーカー、DCS/PLCメーカーと様々です。リモートI/Oの実用化はフィールドバスの発達と深く係わっています。従来、現場のセンサ、アクチュエータと中央のコンピュータを1本1本アナログ結線していたものを、現場でデジタル信号に変換してバスで運ぶという発想は、敷設費用や保守コストの削減の観点から当然の帰結といえましょう。そして、いよいよその実用化時代に入ったといえます。いままで、計器室に置かれていたプロセスI/O装置が、現場に出て行くわけですから、これに要求される動作環境条件(温湿度、電磁ノイズなど)、安全規格条件は今までとは抜本的に異なる厳しいものになりますが、これを契機に各社の技術水準が一段と向上するものと思われます。
8.産業用イーサネット(Industrial Ethernet) |
イーサネットを産業用フィールドネットワークに使おうという動きが欧米で盛んです。しかもこの場合、100メガビット秒の高速イーサネット(HSEと呼ぶ)を意味します。産業用として、コントローラ同士をイーサネットで接続することは珍しくありません。これはデバイスレベルのバスとして使うことを意味しています。前述第5項ではFFの場合に触れましたが、DeviceNetでもPROFIBUSでも開発が進んでいます。いずれも“Off
the shelf”の優位性をうたっています。これは“在庫があっていつでも安く手に入る”ということを意味しており、オフィス用途で技術的、経済的に確立したものを活用することの有利さを意味しています。このことにはまた、通信ハードウェアはまったく作る必要がなく、フィールドバス化の作業は固有のプロトコルソフトをインプリメントするだけで済む有利さもあります。そしてその高速性は、PID制御のPVやMVをバス経由にする場合の伝達遅れや、バス上の衝突再処理時間などの心配を実用上無視できる範囲に抑えます。今回は、従来から産業用イーサネットを提唱してきている数社が10-BaseTのRJ45コネクタやスイッチングハブを防水密閉構造にしたものなどを展示して、実用化準備が整ったことをアピールしていました。
エム・システム技研は、10メガビット秒ながらイーサネット版リモートI/O
M9 Ethernetを発表展示しました。これは16点のアナログデータを50msで内部更新できます。私個人としては、このIndustrial
Ethernetの動向に最大の関心を寄せています。
従来の紙にペンで描く常識が、液晶画面上に描画しデータをフラッシュディスクなどに蓄えるとともに、LANを使ってホストコンピュータに吸上げるという常識に代わりました。従来の伝統的な記録計メーカーはこぞってこのタイプを展示していますが、新規参入メーカーも数多く見られました。世の中のシーズが整備されると、技術的蓄積や経験がなくても容易に市場に参入できるという典型例でしょう。ただしマーケットは従来メーカーが握っていますから、販売面で参入メーカーの淘汰、統合が行われるでしょう。エム・システム技研はこれに対して、パソコンの能力と可能性を前面に押し出して、パソコンと新開発リモートI/Oを組み合わせたPCレコーダ
R1Mを発表展示して来場者の関心をよびました。
従来大きなブースを構えて派手な宣伝を繰り返していた、ワンダーウェアなどのMHIソフト関係各社は、大幅に規模を縮小して地味な展示に変わっていました。これは、HMIソフトの商品性が市場に確立したことと、それぞれが大手計装メーカーグループへの帰属を決定したことと無関係ではないように感じました。
以上、私が35年前に入った当時のこの業界と、21世紀が迫っている今回の展示会に見る業界を比べると、ずっとその中にいたにもかかわらず、あらためてその変化の大きさに驚かざるをえませんでした。しかし、われわれ日本のユーザー、メーカーも、世界に冠たる日本の工業立国を介してこの進化を演出、実現してきた主役だともいえます。日本は今社会の様々な停滞現象に悩んでいますが、これは目先の現象であり、必ずこれを克服して、21世紀の計装技術にも今世紀同様大きく寄与できるものと確信して帰国しました。
IISA EXPO/2000視察研修ツアーに参加して |
1993年9月下旬、エム・システム技研主催のISAツアーに参加する機会に恵まれ、生まれて初めてアメリカ、シカゴのマコーミック展示会場を訪問しました。
今から7年前、会場ではすでにローズマウントをはじめ、数社がBusの展示を行っていた記憶はありましたが、小生のように端末機器製造メーカーの人間にとっては、どちらかといえば同業他社の機器に目を奪われ、アメリカの大きさ、人の大きさ、工業力の高さに、百聞は一見にしかずの感でありました。
時は2000年8月、ニューオーリンズのISA会場を見学する機会に再び恵まれ、まず先に、当時の機器メーカーを探しました。しかし、液面計メーカー2社はすでに買収され、他の会社名になっており、電磁弁のメーカーもすでにエマーソングループに身を置いている状況を目で見て、単独機器メーカーの存続の厳しさを実感するとともに、欧米のバルブを含めた大手計測制御機器会社のグループ化、部品の共通化を改めて実感いたしました。
MKKの風早社長のお話を聞かせていただき、課題であったBusのIEC規格化、それに伴い、Bus間での生存競争の成り行きを想像しながら、7年間の世界企業の変革を身をもって体験した次第であります。
今回のツアーに参加することができ、今後の商品開発の手がかりが見つかればとの期待を含めて、金子産業参加者3名の模索は続きますが、何はともあれ今回のツアーを主催していただいたエム・システム技研の皆様のご努力ならびにご配慮に、心より御礼申しあげます。
IISA EXPO/2000視察研修ツアーに参加して |
アメリカ本土への旅は私にとって初めてであり、アメリカの印象は予想以上に広大で、スケールの違いを感じました。
ISA EXPO/2000の見学では、ポイントとなるブースを案内していただきました。英語も話せず、ともすればただ見るだけの見学になるところでしたが、フィールドバスの標準化の国際的な流れなど、多少かいま見ることができたと思います。また、轟産業と取引がある現地法人の日本メーカーも何社か出展しており、エム・システム技研をはじめ、世界でがんばっているなと感じました。
言葉や食事では苦労しましたが、エム・システム技研のスタッフの方々の気配りによって楽しく旅することができたことを最後に報告し、厚く御礼申しあげます。
IISA EXPO/2000視察研修ツアーに参加して |
今回、ISA EXPO/2000に参加して、規模の大きさに驚きました。前回より少なくなっているようですが、約750社が展示されていました。
今回とくに目を奪われたことは、計装機器の変化でした。日本では、4~20mA信号が市場の主流に対し欧米では、ポジショナなどフィールド機器から直接Busの信号が出ているものがほとんどでした。今や欧米では、Fieldbusが主流になっていることを身近に肌で感じることができました。
日本では、まだまだFieldbusは浸透していませんが、今後、各メーカーおよびエンドユーザーの動向に注目して見ていきたいと思います。
最後に、ISA EXPO/2000に参加させていただき、ありがとうございました。
IISA EXPO/2000視察研修ツアーに参加して |
エム・システム技研では、去る8月21日から24日にかけて、米国ルイジアナ州ニューオーリンズで開催されましたISA EXPO/2000に出展するとともに、独自で企画しました「ISA
EXPO/2000視察研修ツアー」を実施し、総勢33名のご参加をいただきました。
エム・システム技研ブースでは、国内でもご好評をいただいております、PCレコーダ「R1Mシリーズ」をはじめ、リモートI/Oユニット「R1Xシリーズ」、「60・UNITシリーズ」、「61・UNITシリーズ」、「M9シリーズ」、HART信号アイソレータ「M2DYH」、広帯域大電流変換器「CTS」などを中心に展示を行いました。
会場内では、各種フィールドバスの推進団体が独自にブースを設け、各メーカーが対応製品を出展するという形態がとられ、来場者の多くの注目を集めていました。
ツアー参加者の皆様からも、世界の計装業界の動向を知る機会となり、同時に自分の肌で感じとることができたとのお話をいただき、十分に有意義なツアーとして収穫の多い視察になったと確信しております。
最後になりましたが、このツアーに参加されました皆様に、この場を借りて御礼申しあげます。また、今後も引き続き海外の視察研修ツアーを企画して参りますので、多数の方々のご参加をお待ち申しあげております。
M-System Technology, Inc.
(エム・システム技研米国法人)
ハリー・ウイルソン |
ISA EXPOは、これまで10月中旬から下旬に開催され、その時期にニューオーリンズに行くのはボーナス休暇と考えられていました。しかし、今年のISA
EXPO/2000は8月下旬に開催されました。8月のニューオーリンズは地獄の暑さ、とは言わないまでも、行ってみれば合点がいくものです。
フィッシャーローズマウント社やABB社など大手の中には、お客様は8月にニューオーリンズに来たがらないだろうと考えて、ISA
EXPO/2000への出展を取りやめるメーカーも出てきました。ISA EXPO/2000が近づくにつれて、皆が今年は失敗ではないかと考えるようになりました。
土曜日にニューオーリンズに到着すると、私にとっては、ニューオーリンズの気温はほっとするものでした。ご存じかもしれませんが、M-System
Technologyのあるダラスは、大熱波のまっただなかにあったのです。
さて、今回の目玉は、新しいPCレコーダ R1MシリーズとリモートI/Oです。リモートI/Oでは、DeviceNet・Modbus・PROFIBUS・Ethernet経由で、各種PLC・MMIとエム・システム技研のリモートI/Oが接続・動作する製品を展示しました。R1Mシリーズについては、全機種と新形高速レコーダ(MSR16H)を展示しました。一方で、HARTアイソレータのデモ展示や、新形デジタルアクチュエータも用意しました。もちろんDINレール取付の各種信号変換器も展示しました。
月曜日早朝より、大イベントである米国レップ注)ミーティングがありました。朝食を囲んでのミーティングには大勢の参加者があり、レップからは25名、エム・システムからは10名が出席しました。私が全新製品を紹介することになっていたので、非常にわくわくしました。もちろん、新製品はレップに大好評でした。
同日午前10時、ISA EXPO/2000が開幕しました。エム・システム技研のブースは、最前列で非常に良い場所にありました。月・火曜日の来場者が最も多かったようです。ISA
EXPO/2000のボリュームは昨年よりダウンしましたが、来場者からの引合いの質はアップしました。来場者はエム・システム技研の布製バッグに殺到し、その中に入れてあったCD-ROMを合計400枚以上お渡しすることができました。ISA
EXPO/2000の期間中、実際にオーダーを約束してくれたお客様もいたくらいです!
全体的にISA EXPO/2000は成功でした。ISAは、賢明にもメイン会場周辺でゴルフゲームやレッスンをして、ブース面積が減ったのをカバーしていました。お客様はやって来ましたし、8月のニューオーリンズもそう悪くはないと気づいたことでしょう。実際に混雑はなく、会場内のレストランでは何時間も待たずに食べることができました。
今年はソフトウェアメーカーの展示が増えました。マイクロソフト社でさえ大きなブースを構えていました。その一方で、機器メーカーの数は全般的に減り続けています。しかし、小規模メーカーの数は増えていました。フィールドバスの展示は相変わらず増え続け、あらゆるネットワークに接続できるとうたうメーカーの数も増えています。さらに、ワイヤレス技術を公開している展示が少なくとも6件ありました。
月曜日には、エム・システム技研の「ウェルカム・パーティ」に出席しました。これは、エム・システム技研のISAツアーとして、日本から来られたお客様のためのパーティです。米国レップミーティングが成功し、いい初日を終えた後でしたので、お祝いの気持ちでいっぱいでした。食事も催しも素晴らしいものでした。
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