2000年11月号

HART通信対応ディストリビュータ
(形式:M2DYH)

㈱エム・システム技研 開発部長
 
は じ め に
 今回は、HART通信対応の新形ディストリビュータ(形式:M2DYH、図1参照)をご紹介します。なお、「HART通信」の詳細については、本誌1998年11月、12月号の「計装豆知識」をご参照ください。
 2線式現場型変換器に対して、電源DC24Vを供給するとともに4~20mA信号を絶縁する製品として、エム・システム技研にはディストリビュータ(形式:M2DY)があります(図2参照)。この製品の仕様を踏襲するとともに、双方向通信であるHART信号を通過させる機能をもった新形ディストリビュータM2DYHをこのほど開発しました(図3参照)。

1.アプリケーション例
 図5に新製品M2DYHのアプリケーション例を示します。
 図4に示したのは、従来のHART通信非対応の2線式熱電対変換器とディストリビュータ(形式:M2DY)を組合せたシステムの例です。
 このシステムをインテリジェント化したい場合は、次のように各機器を交換・追加します。
 ●2線式熱電対変換器→HART通信対応2線式熱電対変換器
 ●M2DY→M2DYH
 ●HARTモデムとパソコンの追加

2.HART通信信号と絶縁回路
 (1)HART通信信号
 HART通信信号は、周波数が1200/2200HzのFSK注)正弦波交流です。信号の振幅は、受信側レベルで120~800mVp-pが正常に通信できるレベルであり、80mVp-p以下はノイズとして扱い受信しないように決められています。周波数に対するロジックは、1200Hzが[1]で2200Hzが[0]と決められています。
 HART通信信号は1200/2200Hzですが、電子回路には0.5Hz~10kHzの通過帯域が要求されています。
 したがって、絶縁回路も同様の帯域をもつ必要があります。また通信が双方向なので、絶縁回路にも双方向性が要求されます。
 (2)DC信号(4~20mA)の絶縁
 DC信号の絶縁回路の帯域は、プロセス制御では0.5Hz程度で十分な場合が多く、M2DYHの場合も0.5Hzに設計しました。また、温度ドリフトなどの安定性を重視するため、デューティ比変調方式を採用しました。
 (3)HART通信信号の絶縁
 HART通信信号を絶縁するために重要なポイントは、応答性能の劣化と歪みが発生しないことです。
 この要件を比較的簡単に実現する方法として、リニアフォトカプラ方式があります。今回は、この方式を採用しました。この方式について簡単に説明します。
 LEDを駆動する直流電流に正弦波を重畳させると、発光も正弦波状に変化するため、この光をフォトトランジスタやPINダイオードなどで受光して電気信号に変換し、直流成分を取り除けば重畳させた元の正弦波を復元できるという方式です。応答性能はこれで問題なく達成できますが、LED、フォトトランジスタやPINダイオードは、単体では直線性がよくないためこのままでは使えません。そこで、同じ受光部品を2個使用して、1個をフィードバック用に、もう1個を出力用に使用することで非直線を補償しています。

お わ り に
 以上、簡単に新開発のM2DYHについてご紹介しました。今後もHART関連製品の開発を計画しています。HART関連製品についてご意見、ご要望をお持ちの方は、エム・システム技研ホットラインまでご連絡をお願いします。   ■

注)FSK(Frequency Shift Keying):周波数偏移変調

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