2001年1月号

アナログ入力信号を使わない 接点入力形
電電ポジショナ(形式:MEX-P)

㈱エム・システム技研 開発部
 
は じ め に
 エム・システム技研としては、20世紀最後となる電電ポジショナを開発し、販売を開始しました。その形式名をMEX-Pといいます(図1参照)。
 エム・システム技研のポジショナは、基本的にMEXの名を冠しています。本製品もその例にもれず、MEXシリーズの末っ子となりました。MEXシリーズは発売以来多数のお客様にご愛顧いただき、主にバルブポジショナとして多くの実績を積んで参りました。これからも、ポジショナの王道を行く製品として大事に育てて参ります。
 さて、今回発売したMEX-Pですが、その兄姉達とは少し毛色が違っています。世紀末の異端児とでも申しましょうか、兄弟も数多くなると希にはこういうのも生まれてくるようです。ただ私は、この異端児にポジショナのもう一つの主流を垣間見るような気もするのですが・・・。
 ではこの異端児の詳細を紹介して参りましょう。

1.アナログ入力がない
 本製品には4~20mAや1~5Vのようなアナログ入力端子がありません。この点が他の兄姉達と最も違うところです(もちろんポジションフィードバック用としてのポテンショメータ入力端子はありますが)。では何を入力して制御するのかと申しますと、接点信号なのです。接点というとすぐにリレーやスイッチが連想されますが、もちろんオープンコレクタ(トランジスタ入力)でもOKです。実際、プログラマブルコントローラ(PLC)の出力はフォトカプラのオープンコレクタというケースが多いですから、その場合にも直接接続できて便利です。
 ここでいきなりPLCを持出しましたが、ずばり申しますと、この製品のメインターゲットはPLCなのです。

2.お相手はPLC
 プログラマブル(ロジック)コントローラは、通常PLCと呼ばれ、FA(ファクトリオートメーション)では不可欠な存在であり、制御盤においてはそれが入らぬものを見たことがありません。基本的にはコンピュータですから、パソコン同様に価格性能比の急伸はめざましく、小型化が進み、ネットワーク機能も充実してきました。このようなPLCに最も簡単につなげる方法、それが接点入力であり、本製品誕生の原動力になった次第です。もちろんPLCにはアナログI/Oも充実していますが、デジタルI/Oに比べるとやはり高価になります。事実コンピュータがアナログ信号を扱うのは少々やっかいなことなのです。

3.どうやって使う?
 接点入力ということは説明しましたが、では具体的にどのようにして制御するのかを簡単に説明します。ここで、接点は単にセレクタ(選択器)として機能します。
 本体には、あらかじめ6点の目標制御位置をプリセットしておき、接点を使っていずれかの目標位置を選択するわけです。6点のプリセット値は、あらかじめ本体のトリマ(可変抵抗)で設定されます(余談ですが、MEX-PのPはプリセットの Pです)。
 選択枝の中には、プリセット以外に停止、すなわち何もしないモードもあり、合計7通りの選択ができます。では、合計7通りの選択があるので接点信号も7本あるのかといいますと、コモン(GND)を除けば3本しかありません。理由は、設置する際の線材および配線コストの削減とPLCの出力ポートのむだ使いを防ぐためです。まあ極端に言えば、目的はコストダウンでしょうか・・・。
 では3本の信号をどう使うのか、一言で申しますと、バイナリコードです。別の言い方をしますと、3桁の2進数で選択します。理論上2の3乗で8通りの選択ができます。要するに、選択番号を2進数で入力すれば良いわけです。

4.モータ用出力はAC20ー240
 モータ用出力は、他のMEX同様にSSR(ソリッドステートリレー)で構成されています。接点リレーとは違い、半導体なので寿命による接点不良などの心配がなく、基本的にメンテナンスフリーです。ただ、出力範囲についてはAC20~240Vと従来に比べてかなり広げました。
 下側に広げたのはAC24V駆動のサーボモータを視野にいれているからです。そんなわけで、モータの選択枝はかなり広がりましたが、これはアプリケーションの選択枝を広げることも意味し、開発時の最重要課題でもありました。また、停止精度が要求される場合に備えて、ブレーキ付きタイプも用意しました。これを使えば、ほとんどオーバーランすることなく停止させることができます。

5.HEART BEAT
 さて、今までにない特長をもう一点ご紹介します。前面パネルを開けていただきますと、プリセットなどのトリマがずらっと並んでいるのが見えます。その後ろに、申し訳なさそうにポツンと赤いランプ(RUN表示ランプ)が立っているのが見えます。いかにも地味な感じですが、なかなか良い仕事をしています。そもそもこれは、品質保証部からの要求である「CPUが正常かどうか、すぐにわかるようにすべし」との意見に対する苦肉の策であり、「イヤイヤ付けた・・」というのが本音だったのです。しかし、開発途中に、また客先においても大変重宝し、今では完全に不可欠な存在になりました。とはいっても、働きそのものは極めてシンプルです。
 電源を入れると、まず0.5Hzで点滅を始めます。すなわち1秒間の点灯と消灯を繰り返すわけです。これは健康な人間の心臓の鼓動とほぼ同期します。MEX-Pの真っ赤なランプは人間でいう血潮、すなわち生命の息吹を象徴しています。
 正常に機能している間は、電源を切らない限りこの状態が続きますが、制御開始から2分経ってもフィードバックポテンショメータが目標位置に来ない場合は、制御を中断して2Hz(0.5秒周期)の点滅、すなわち0.25秒間の点灯と消灯に変わります。これは人間の激しい動悸に同期するわけで、好ましい状態でないことがわかります。このように一つのランプではありますが、電源の有無から健康状態(?)まで一目でわかります。きっと皆様のお役にも立てることと信じています。

お わ り に
 本製品はPA(プロセスオートメーション)よりはむしろFA寄りの性格をもった製品であるがゆえに、予想し得ないようなマーケットがたくさんあるのではないかと考えています。
 ダンパーやシャッターの制御、はたまたラフなロボット制御など、無限に近い用途が考えられます。よろしければ「こういうのに使えそうだ」とか「こういうのに使っている」といった情報をエム・システム技研までお寄せいただけないでしょうか。今後の改良・発展のためにも、ぜひお願いいたします。
 最後になりましたが、近年通信機能付きアクチュエータについての問合せが数多く見られるようになりました。エム・システム技研では、そのようなニーズにも応えるため、DeviceNetをはじめとする各種フィールドネットワークに対応する各種の電動アクチュエータや電電ポジショナの発売も予定しています。どうぞご期待ください。 ■

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