2001年7月号

計装豆知識

汎用インバータについて

 
 「汎用インバータ」と呼ばれるモータ制御用のインバータが世の中に登場して、約20年が経過しました。この間に、インバータの設定方式はアナログ方式からデジタル方式に進化し、装置自体も小形化が進んできました。とくにここ数年、省エネ対策用として多品種かつ大量の汎用インバータが各種の工場で使用されるようになってきていることは、ご承知のとおりです。
 今回は、この汎用インバータの概要と特長についてご紹介します。

汎用インバータの概要
 汎用インバータは、モータ(誘導電動機)の駆動周波数を変化させることによってモータを可変速運転する装置です。
 誘導電動機の回転速度N(min-1)は下式で表されます。
 つまり、駆動周波数を変化することによってモータの回転数を変化させることができるわけです。また、モータトルクも重要な項目で、トルクと周波数には次式に示す関係があります。
  トルク∝(電圧/周波数)
 したがって、回転数を変化させたうえ、所定のトルクも得ようとすると、モータの駆動電圧も変化させる必要が生じます。
 このように電圧と周波数を変化させて制御する方法をV/f制御またはVVVF注1)と呼ぶこともあります。
 次に、省エネについてですが、ファンやポンプのように、回転速度が低くなるほど速度の2乗に比例してトルクが小さくてよくなるような場合には、低速回転時に電圧を大幅に減少できるため省エネ効果が絶大です。この例は、インバータを使用した例として必ず登場する省エネの代名詞のような応用です。

汎用インバータの現状
 最近の汎用インバータの主な仕様を表1に示します。

インバータの出力計測
 近年の汎用インバータの電圧出力波形は、PWM(パルス幅変調)制御方式の採用に伴い高周波成分を多く含んでいます。また、電流波形はモータがもつリアクタンス成分の影響で正弦波に近い形をしています。しかし、キャリア成分注2)によるノイズが含まれています。インバータメーカー各社は、取扱説明書の中で出力を計測する場合の注意点として、計測の対象に応じて、限定された測定原理の計測器を推奨しています。たとえば、インバータの出力電圧計測時には整流形電圧計、電力計測時には電流力計形電力計、等々です。ところで、電流計測の場合に問題となるのがCTです。前述のように、インバータの基本機能がモータの可変速運転ですから、低周波数動作が必要になってきます。しかし、一般的なCTは50/60Hzでの性能保証しかありません。5Hz、6Hzで電流計測が必要な場合にCTが使用できず、困られた方もおありと思います。
 エム・システム技研では、大電流・低周波での常時監視が可能なように、広帯域電流変換器(形式:CTS)を昨年開発しました。その外観を図1に示します。電流検出部には、特別な電源を必要としないロゴスキーコイルを採用し、インバータノイズによる影響を受けにくくしています。また、周波数特性も4Hz~10kHz(-3db)を確保し、従来計測できなかった電流も計測できます。フレキシブルな構造をもつセンサであるため、狭い空間での設置も可能ですし、クランプ構造の採用によって、メインケーブルを切断することなく容易に着脱可能です。変換器本体は、CT比として4種類(たとえば300A用ですと30A、60A、150A、300A)の選択が可能であり、同一のセンサで様々な容量のインバータに対応できます。    ■

注1)VVVF:Variable Voltage Variable Frequency の略
注2)PWM(パルス幅変調)制御方式で出力電圧波形のパルス幅を決めるための変調波
【株)エム・システム技研 開発部】
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