2001年10月号

計装豆知識

正論理? 負論理?

 
アナログ回路とデジタル回路
 一般に、電気回路はアナログ回路とデジタル回路に二大別して説明されます。アナログ回路は、その名のとおりanalogousなもの・・・といっても何だかよく分かりませんが、辞書によれば類似したものという意味です。要するに、相似的に表現できるとの意味から、アナログ回路とは連続的で滑らかに変化する信号を取り扱う電気回路ということになります。連続的に変化する信号の大きさ(電圧値、電流値)を取り扱うのがアナログ回路であるともいえます。
 これに対して、デジタル回路とは不連続な信号(離散的あるいは計数型信号)を取り扱う電気回路ということでしょうか。ちなみにdigitalを辞書で調べると、指とか数字のことを意味しています。これは確かに滑らかに連続なものではありません。デジタル回路では、一般に不連続な2つの値、‘0’と‘1’の2値を用います。たとえば出力の論理‘0’を「ランプの消灯」、論理‘1’を「ランプの点灯」という具合に割り付けます。

正論理と負論理
 エム・システム技研製信号変換器の大部分はアナログ回路で構成されています。しかし、中には入力信号や出力信号としてデジタル信号を取り扱うため、デジタル回路が取り入れられているものがあります。今回は、それらに関連してよく質問される正論理・負論理について解説します。
 前述の例で、ランプを点灯させることとそのときの信号が真(‘1’、true、assert)であることが対応するとして、出力値の電圧レベルの高い方‘H’をランプの点灯という真(‘1’)に割り付けた場合、これを正論理といい、逆に低い方の‘L’に割り付けた場合を負論理といいます。ちょっと考えてみると、負論理は不要で正論理だけで良いように思われますが、これを理解していただくためにはデジタル回路がTTL注1)で構成されていた時代にさかのぼる必要があるかもしれません。TTLの入出力段の電気的特性が‘L’側に偏っていたことから、信号の判定レベル(しきい値)が下側に偏ったICだったため、無信号(偽、false、de-assert)時にはプルアップ抵抗で吊って‘H’(‘0’)にしておき、真‘1’のときに‘L’とする方がしきい値と信号レベルの差を大きくとれ、ノイズマージンの点で有利であるという背景が見られました。近年はCMOS注2)のICがTTLにとって代わり、しきい値の偏りがなくなったため、負論理の必要性はさほど大きくない気がします。
論理とパルス変換器
 最後に、パルス信号を扱う際にも正論理、負論理の差を意識することがあるので、簡単にご説明しましょう。パルス信号というと、単に‘L’と‘H’の繰り返しの周波数を主眼におく場合と、1つの周期に着目し、その‘L’、‘H’のどちらかを真として捕らえる場合があります。後者において、エム・システム技研では入力の仕様により、どちらを真とするか便宜上定めるようにしています。たとえばトランジスタのオープンコレクタ(以降OC)やリレー接点による駆動が関係する場合、入出力ともにOCやリレー接点がオンになる状態を真と定めています。このとき、入出力端子上での波形を観測すると‘L’レベルなので、負論理とします。他方、OC以外の入出力仕様では正論理を用いると定めています。
 少々ややこしいですが、パルスアイソレータというその名のとおり、パルス信号を電気的に絶縁するだけの変換器においての問題です。

【問題】入力がOC 入力、出力が電圧出力の場合、入出力の論理が非反転という仕様であれば、外部からOC でオン信号を入力すると出力はどのようになるでしょうか。
【答え】入力回路は真が入力されたと判断し、内部では論理反転なしで真のままです。したがって出力回路は真に相当する‘H ’レベルの電圧信号を出力します。

 エム・システム技研では、このような場合に備えて仕様書に入出力仕様と波形のマトリクス表を載せて、波形や論理が一目で分かるようにしています。もしお時間があればパルスアイソレータ(たとえば形式:PPD)の仕様書を一度ご覧いたければ幸いです。その際、OC入力については負論理であることをくれぐれもお忘れなく。  ■


注1)TTL(transistor transistor logic):バイポーラ・トランジスタだけで構成されたロジックIC(入力しきい値がVil:0.8V以下、Vih:2.0V以上)。
注2)CMOS(complementary metal oxide semiconductor):ユニポーラ・トランジスタで構成される半導体素子。ここではとくにロジックICを指す(入力しきい値がVil:1.5V以下、Vih:3.8V以上、5V電源時)。

【(株)エム・システム技研 開発部】
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