2001年12月号

計装用ネットワーク変換器 70/71/72シリーズ

(株)エム・システム技研 技師長
 
は じ め に
 エム・システム技研は、従来から計装用機器における異機種間接続を熱心に追求して今日まで成長を続けてきました。以下に、異なる通信機能間を接続した実例を説明します。

1.異機種間の接続
 ①A社製PLCとB社製PLCの間で、接点信号の授受が必要になる場合がよくあります。1対ごとにケーブルを敷設すれば方法としては簡単ですが、授受したい信号の本数だけケーブルの敷設が必要ですから、本数が多くなると物理的、経済的に実用性を失います。このとき、各PLCが備えているRS-232-C通信機能を利用して、図1に示すようにPLCインタフェース(形式:SMDL)に接続し、さらに両SMDLをエム・システム技研のNestBusに接続することによって目的は実現します。同じRS-232-Cであっても通信プロトコルはベンダやPLCの機種ごとに固有であるため、エム・システム技研は、各SMDL上に当該するPLCとの間の通信用ファームウェアを組み込むことによって対応しています。この方法によって、三菱電機/オムロン/富士電機/日立製作所/東芝/横河電機など、各社PLC相互間の接続に多くの実績をあげています。
 ②図2に示したのはEthernet・PLCインタフェース(形式:NXL)注)の実用例です。自動車部品製造工場で、製品検査装置を制御する各社製PLCがRS-232-CまたはRS-422でNXLに接続され、さらにEthernetを介して上位管理コンピュータに接続されています。NXL内には各社PLCとの通信プロトコルが、またEthernet上にはNeXUS(自律分散)プロトコルがファームウェアとして組み込まれていて、工場の全PLCを自律分散システムとして統率することを可能にしています注)。
 これらの実例において、①は水平方向(同位階層間)の異機種接続の媒介であり、②は垂直方向(上下階層間)の異機種接続の媒介であるということができます。異機種間接続が必要になったとき、お客様はA社にもB社にも問題解決を期待することは困難です。なぜなら、A社にもB社にも他社の機種と協調する姿勢が一般にはないからです。エム・システム技研は、どの計装機器メーカーにも偏らず等距離を保って、お客様が必要とされる案件を率先してお引き受けしています。

2.ネットワーク変換器
 エム・システム技研は、1.項にて説明した経験と実績の上に立って、「ネットワーク変換器」の概念のもと、さらに一歩を進め始めています。具体的には、計装機器に組み込まれている機器固有、あるいはベンダ固有の通信ネットワーク(バスと称されることが多い)を業界標準のオープンな通信ネットワークに変換して、コントローラレベルあるいは管理レベルの上位機器に接続する作業です。ここで「ネットワーク」と呼んでいる内容は、物理的な通信手段に加えて、その上で機能する通信プロトコルの複合体を指します。この作業を進めるために、次にご説明する70シリーズ/71シリーズ/72シリーズ ネットワーク変換器を開発して、お客様の「必要時」に適切、迅速に役立ちたいと考えています。

3.70シリーズネットワーク変換器
 70シリーズは、ラックマウント多連実装形のネットワーク変換器です。図3にネットワーク変換器(形式:70EM-M4)単体の外観およびラックにマウントされた状態での写真を示します。表1の70EM-M4の項に示すように、下位に対してはRS-485(38.4kbps)にModbusRTUプロトコルを搭載し、上位に対してはEthernet(10Mbps)上にTCP/IPを介してModbusTCPプロトコルを搭載しています。エム・システム技研では、70EM-M4を用いて、下位機器としてR1Mシリーズ リモートI/Oを最大15台接続し、収録データをパソコン上の「CITECT」に渡す方法で「MSデータロガー」を構成して、お客様に提供しています。MSデータロガーの場合、1台の70EM-M4でアナログ入力240点、デジタル入力/出力480点を取り扱うことができます。もちろん、これらの混在も自由です。4連で使うことによって、アナログ入力の場合約1000点規模のデータ収録を容易に実現できます。このように70EM-M4は、パソコンから見れば、標準で装備しているEthernet 1本で高速、簡便に大量のデータを収録できる便利な存在です。ModbusRTU/ModbusTCPは業界標準として世界的に普及しているため、下位側に接続できる様々な機器が市場に供給されていること、上位パソコン上のHMIソフトもその多くがModbusTCPに対応していること、Modbus対応のOPCサーバが専業各社から供給されていること、などもユーザー各位にとって有利な点です。

4.71シリーズネットワーク変換器
 71シリーズは、小形、必要最低限の簡潔な構成、ならびに低価格でネットワーク変換器を実現することを目的に製品化しています。このためユーザー機器にも容易に組み込むことができます。図4にネットワーク変換器(形式:71DS-S2)の外観を示します。実用例としては、半導体製造工場において各種製造設備機器の制御装置とRS-232-Cで、また上位PLCとはDeviceNetスレーブプロトコルで接続されています。下位から上位に対しては機器運転実績データが、上位から下位に対しては機器運転指令が伝達されます。71DS-S2は半導体製造装置規格への適合認定を取得中です。これによって、設備機器はDeviceNet半導体製造装置規格でPLCと接続できることになります。71DS-S2のDeviceNetスレーブプロトコル部分は、エム・システム技研が独自にCAN内蔵高性能マイクロコンピュータにプロトコルを移植完成させたもので、エム・システム技研の電子アクチュエータミニトップ(形式:MSP4D、MSP5D、MSP6D、MRP4D、MRP5D、MRP6D)や、リモートI/O (R5シリーズ、開発中のR1D)にも搭載されています。エム・システム技研が内部の詳細を掌握しているために、高信頼で低価格なDeviceNetをお客様に提供することが可能になっています。ネットワーク変換器の範疇に納まらなくても、お客様でDeviceNetスレーブプロトコルが必要な場合はお手伝いできますので、ご相談ください。
 またネットワーク変換器(形式:71M4-S2)は、表1の該当欄に示すように、RS-232-CとRS-485という極めて基本的な構成ながらシーメンス社製PLCと(株)東芝製PLCの間の“国際的な”接続を果たして、国外プラントで稼働しています。

5.72シリーズネットワーク変換器
 21世紀に至って、100Mbps Ethernet(HSE)の普及、入手の容易さ、低価格化は目覚ましいものがあり、産業界でもIndustrial Ethernetとしてこれを実用化する動きが盛んです。72シリーズは、このような業界環境下でHSEとその上の各種プロトコルに対応すること、および、DeviceNet、PROFIBUS、CC-Linkなどの多くの業界標準フィールドネットワークに容易に対応することを意図して開発された製品です。また、さらにテレメータ端末として現場でデータロガー機能を実行しながら、公衆電話回線やISDN回線、PHS網、DoPa網、無線LANなどで遠隔地にある上位システム(管理コンピュータ、PLCなど)に接続することまでを視野に入れています。72シリーズは72mm幅のM・UNIT筐体に収納されています。図5に、対上位ネットワークとしてEthernetを、対下位ネットワークとしてCC-Linkを搭載したネットワーク変換器(形式:72ET-CC)の外観を示します。この図で、CC-Link部分は独立したオプション基板になっています。この部分を、必要に応じてDeviceNet基板やPROFIBUS基板などに差し替えることによって、各種のオープンフィールドネットワークに対応します。

お わ り に
 以上ご説明してきたネットワーク変換器の内部論理構成を図6に示します。
 着色部がファームウェアで構成する部分です。この部分はお客様の要件に対応して変更される部分です。エム・システム技研は、各案件ごとにお客様と打合せ、カスタマイズして納入します。この意味で、一般に市販されている上位/下位のプロトコルを固定し、文字列を単純に透過させるだけのゲートウェイ製品とは異なるものです。お客様のトータルシステムを構成する部材間を接続する自在継手として、役立って行く所存です。
 ご意見、ご感想、ご質問など大歓迎です。下記アドレスまでお寄せくだされば幸いです。
E-mail:kawashima@m-system.co.jp■

注)“自律分散プロトコル”は(株)日立製作所が開発して産業界に供給しているEthernet上の通信プロトコルです。このネットワークは、通常のネットワークがマスタ/スレーブ方式をとっているのに対して放送型方式をとっています。このことがもたらす、改造/拡張容易性、保守性、信頼性、接続容易性、汎用性、高性能などの利点が認められて、(財)製造科学技術センターのもとでバージョンアップされFL-netの名前でオープンな産業用ネットワークとして公開されています。したがってエム・システム技研では現在FL-netへの換装を進めています。このためNeXUSプロトコル搭載NXLはすでに廃止機種としています。

ミニトップはエム・システム技研の登録商標です。

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