2002年2月号

計装豆知識

TCPとUDP

 
 TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)はインターネットやイントラネット上で広く利用されている通信プロトコルの一種です。その起源となったのは、1969年に米国の研究機関や大学を集めた広域ネットワーク用に開発されたARPANETと呼ばれるプロトコルです。その後、研究グループにより改良や標準化が進められ、1975年にはTCP/IPとしての基本的な仕様が確定しました。1983年にはUNIXシステムに搭載され、本格的な運用が始まりました。

TCP/IPのプロトコル
 コンピュータ同士が通信を行う場合の各種の「取り決め事」を通信プロトコルといいます。それらの「取り決め事」は通信における役割の内容によって分割、階層化されており、その国際標準モデルが、ISOの提唱する「OSI(Open Sytem Interconnection)参照モデル」です(表1参照)。OSI参照モデルは通信プロトコルを理解するための良い雛形となります。
 TCP/IPのプロトコルもOSIの参照モデルと同じような考え方で階層化されていますが、OSI参照モデルでは7層に分かれていたプロトコルをTCP/IPでは5層もしくは4層に分けて考えることが一般的になっています(表1参照)。
 そして、TCP/IPはOSI参照モデルのトランスポート層に相当するTCP(またはUDP)、およびネットワーク層に相当するIPの2層を中核として構成されています。

TCPとUDPの違い
 コンピュータ同士の通信では、送信側から送られたデータが受信側へ伝達される際に、〈データの損傷〉、〈消失〉、〈重複や遅延〉、〈到着順序のズレ〉などを考慮する必要があります。これらの項目をチェックし、もし検出された場合は自動的に補正することによって、通信の信頼性が確保できます。TCPはデータ通信の際にこのような役割を担い、確固たる信頼性と伝達保証性を提供しています。
 なお、TCPでは、データ伝達保証性を重視して、エラーチェックや再送要求などの手続きが増えるために、「高速にデータを届ける」という点において、その性能に制約を受けます。そこで、TCPの伝達保証性を省略し、代わりに高速性を重視したプロトコルとして利用されているのがUDP(User Datagram Protocol)です。UDPでは、送受信確認や再送要求といった伝達保証機能が提供されていないため、TCPに比較してやや信頼性に乏しくなります。しかし、高速性に優れているため、レスポンスが重視される通信サービスやプロセス制御また各種オートメーションの制御Busなどに用いられています(図1参照)。エム・システム技研のMsysNet用制御Busである「L-Bus」やJEMA(日本電機工業会)が推進する「FL-NET」などにもUDPが採用されています。なお、これらの制御Busにおいては、UDPの上位層であるアプリケーション層にユーザーが独自に工夫をして、実用上充分な信頼性を実現しています。ただし最近は、ネットワークの物理層として高速のEthernet(100Mbps)が普及してきたことやパソコンの処理スピードも著しく向上したため、TCPでも相当な高速性が実現できるようになっています。そのため、オートメーションの制御BusにもTCPが用いられるようになってきました。    ■

〈参考文献〉池田冬彦 他 エーアイ出版社
     「図解でわかるTCP/IP基本の基本」

MsysNetはエム・システム技研の登録商標です。

【村上 良明:(株)エム・システム技研 商品統括部】
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