2002年11月号 | |||||||||||||
フィールドロガー「TL2シリーズ」 (1) | |||||||||||||
(株)エム・システム技研 技師長 | |||||||||||||
① リモート・エンジニアリングとは、広域に散在する多数の無人のプラントや設備群に現場端末を取り付けて、日常の運転/運用管理を中央の管理コンピュータで一括集中して行うことを指します。 ② リモート・メンテナンスとは、産業用機器/装置メーカーが、全国あるいは全世界に散在する納入済みの自社製機器/装置の中にあらかじめ現場端末を組み込み、ユーザーとの保守契約に基づいて中央の管理コンピュータで一括集中監視/管理し、機器/装置個別の稼動・障害状況をリアルタイムで把握し、維持/保守活動に資することを指します。 リモート・エンジニアリングにおけるこのような管理形態は、すでに前世紀から行われてきています。しかし、近時あらたにリモート・メンテナンスというビジネスモデルが台頭し、併せて発展著しいITインフラを駆使することによって、低コストで高機能が実現されるようになった点と、このような管理形態を必要とする時代背景に最近の特色があるといえます。 エム・システム技研はこのような観点に立って、プラントや設備現場の厳しい環境に設置されて、現場のセンサから得た情報を常時収集、監視、処理、蓄積しながら、必要に応じて通信回線で管理機器(管理コンピュータ、携帯電話、FAX機など)と接続連携して有機的に機能する現場端末を、フィールドロガー「TL2シリーズ」という名称のもとに商品化しました。 このような現場端末においても、適用対象の規模に応じて大・中・小規模それぞれに対応する製品が必要になります。TL2については、主として中、小規模対象への適用を狙って、経済性、省スペース、取り扱いの簡便性を設計目標としました。また、信号監視ロボットテレロガー(形式:TLX)/メモリテレカプラ(形式:TLZ1)など現行製品の機能をほぼ包含しながら、これらの機種を通じてお客様からいただいた、新しい経験や知識も盛込んでいます。
① 対上位I/F基板は、遠隔に位置する上位管理機器との間で広域接続を行うための通信機能を実行します。 ② 対下位I/F基板は、監視対象からの計測信号の入力、監視対象への制御信号の出力を実行します。 ③ CPU基板については、マイクロプロセッサには日立製DSP内蔵32ビットCPU:SH2を、その上のリアルタイムOSにはμITRONを採用しています。いずれも業界標準の安定したハード/ソフトのプラットフォームです。CPUのクロックは60MHzに抑えて、32ビットの総合力を享受しながら、コンパクトな環境での十分な熱的マージンを確保しています。現場停電対策としては、不揮発であることを要する各種蓄積データ(トレンドデータ、ログデータ、3日分の日報データ、前月分の月報データなど)をフラシュメモリに記憶させることとしています。現場で発生した事象にタイムスタンプを与えるために、カレンダICおよび停電時それをバックアップする電池を搭載しています。 ④ 電源基板としては、下記の2種類が準備されています。現場環境、使用条件に応じて選択します。 ACフリー電源:AC85V~264Vに対応します。 DC24V電源:別置きバックアップ電池ユニットと併用することができます。
① 図4は、構内LANに直接接続する場合を示します。TL2は、Ethernet上の通信プロトコルとしてModbusTCPを搭載しています。業界標準プロトコルなので、PC上で動作するOPCサーバが専業メーカーから低価格で市販されています。これを管理コンピュータにインストールすることで、お客様のアプリケーション・プログラムは容易に現場のTL2との間でデータを交換できます。 また、TL2はFTP(File Transfer Protocol)をサポートしています。したがって、TL2が蓄えたトレンドデータファイル、日報ファイル、帳票ファイル、事象ログファイルなどを、FTPを用いて管理コンピュータに送信することができます。さらに、TL2はWebサーバ機能を搭載しているため、管理コンピュータのWebブラウザでTL2を介して現場の状況を監視することができます。 この図4に示すように、TL2はアナログ入力8点(DC1~5Vレンジ)とデジタル入力12点(有電圧接点)の入力基板を内蔵する構成を選択することができます。お客様の入力仕様がこの範囲におさまる場合は、コストとスペースの節約ができます。 しかし、より一般的には、下位I/FとしてRS-485通信基板を用いて外部リモートI/Oを接続します。これによって必要な入出力の種類、点数をまかないます。RS-485上の通信プロトコルとしては、業界標準のModbusRTUを採用しています。通信速度は38.4kbpsです。エム・システム技研では、これを満たすリモートI/O「R1Mシリーズ」を準備しています。ほかにも「R2シリーズ」、「R5シリーズ」などがあり、目的にあわせてご選択いただけます。なお、内蔵入力基板とRS-485通信基板を共存させることはできません。 ② 図5は、ISDN回線で管理コンピュータと接続する場合です。ISDNルータを用いて双方からダイヤルアップ接続します。いわゆるLANのイントラネット接続形態になり、ISDN回線網を利用して構内LANを広域に延長した形になります。TL2を、ISDN回線を介してISP(インターネット・サービス・プロバイダ)に加入させれば、TL2が検出した現場事象を、E-Mailでの通報として携帯電話機や管理コンピュータに送ることができます。実用上もっとも現実的な接続方式です。管理コンピュータ側は、ADSLなどで常時接続にするシステム構成方法も考えられます。 ③ 図6は、ADSL回線でインターネットを介して管理コンピュータと接続する場合です。TL2はインターネットに常時接続される形になります。この場合、TL2は固定IPアドレスを取得してADSL回線に接続します。この方法によれば、世界中のコンピュータのWebブラウザから、何時でもTL2に接続することが可能になります。エム・システム技研東京支社では、1台のTL2をこの形で連続運転しています。お客様のコンピュータのWebブラウザ(インターネット・エクスプローラ5.0以上)に、URLとしてhttp://219.162.80.190/curval.html を入れて試していただくことができます。この画面の上部には4つのメニューが表示されますから、それぞれをクリックすることによって4種類の画面を表示させることができます。このデモWeb画面の取扱い説明書を用意しています。必要な方は末尾の著者E-Mailアドレスに請求いただければ、添付ファイルでお送りします。 ④ 図7は、図5におけるISDN回線を一般電話回線に置き換えた場合です。TL2では、内蔵FAXモデム基板(データ通信:56kbps、FAX通信:14.4kbps)が準備されていますから、外部にモデムユニットを置く必要はありません。 ⑤ 図8は、管理コンピュータを使わずに、FAX機への帳票と通報印刷、携帯電話機への文字によるE-Mail通報、固定電話機/携帯電話機への音声による通報によって管理業務を完結させる場合です。TL2には、FAXモデム基板に加えて、音声合成出力回路を併設したモデム基板も準備しています。これを用いることによって、本方式が実現できます。いずれも、今日の社会インフラとして完全に普及していて、だれもが使いこなしている管理用機材です。これらで済ますことができる点に存在価値があると考えられます。 ⑥TL2のRS-232-C通信基板を用いて、小電力無線機と接続することや、MobileArk経由DoPa回線に接続することも可能です。
現状では、このような現場端末構築に際して、①専用のWebサーバとしての通信コントローラ、②インテリジェンスとしてのPLC、③I/OとしてPLC付属I/Oなどを組み合わせて接続し、アプリケーション記述はPLCのラダープログラミングで行う方法が、一般に取られています。TL2は、これに対して、①省スペース性、②経済性、③プログラムレス性で改善を図ろうとしています。お客様の評価をいただきたいと思います。 従来からのリモート・エンジニアリングへの応用のほかに、産業用機器・装置のリモート・メンテナンスへの適用についても、すでにいくつかの具体的な引き合いをいただいており、このようなアフター・セール・マーケット・ビジネスが離陸期にあることを実感しています。 エム・システム技研は、このプラットフォーム上に、順次お客様に有用なアプリケーションを整備しご提供して行く所存です。本号では、TL2が具備した可能性についてご説明しましが、次号では具体的なアプリケーションの切り口から、①FAXロガー(形式:TL2F)、②Webテレメータ(形式:TL2W)③テレロガー(形式:TL2X)についてご紹介する予定です。 ご質問、ご意見などありましたら、下記あてにご連絡ください。 E-mail:kawashima@m-system.co.jp ■ テレロガー、メモリテレカプラはエム・システム技研の登録商標です。 |
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