2002年12月号

フィールドロガー「TL2シリーズ」 (2)

(株)エム・システム技研 技師長
 
は じ め に
 前回は、フィールドロガー「TL2シリーズ」の市場環境、製品化目的、多様な用途への適用性などについてご説明しました。そこでのTL2の特長は、次のように要約することができます。
 ①遠隔現場において多様なデータ収録ができる。収録データを蓄積/保持できる。
 ②遠隔現場において、監視/通報機能および日報/月報などのデータロガー機能を実行できる。
 ③各種通信回線を利用し、中央の管理機器と接続して協調動作を行うことができる。
 ④軽量、コンパクト、省スペースを実現している。
 今回は、TL2の具体的な仕組みをご説明し、またアプリケーション例をご紹介します。 

1.TL2シリーズの機能構成
 図1にTL2の機能構成を示します。
 ① 入出力点は、TL2内蔵の「Ai*8点+Di*12点」あるいは、エム・システム技研製リモートI/O:R1Mシリーズの外付けによる「Ai*0/16/32点+Di*0/32点+Do*0/32/64点」のいずれかを選びます。TL2は、これらのアナログ入力、デジタル入力を0.5秒周期で読み込み、フィルタリングを施して値を確定します。
 ②監視データベース
 TL2は、①で確定した値を監視して異常事象や運転事象を検出し、通報データベースを作成します。これをもとにして、TL2は現場に対して接点出力、管理コンピュータや管理者の携帯電話に対してE-mail通報、管理コンピュータに対してメッセージ通報、FAX機に対して文字通報、固定電話機や携帯電話機に対して音声通報を行います。
 ③事象ログデータベース
 TL2は、②で検出した異常発生/正常復帰、運転開始/運転停止などの事象にタイムスタンプをつけて、事象ログデータベースに登録します。管理者は、必要に応じて管理コンピュータからこれを読み出したり、1日ごとに読み出してプラント保守用運転履歴データとして蓄積します。
 ④トレンド記録データベース 
 TL2は、①で確定したアナログ入力値について、1分間の平均値、最大値、最小値、積算値を計算して、トレンド記録データベースを作成します。積算機能は、流量などのアナログ量実量積算機能、パルス列実量積算機能、パルス幅実量積算機能、パルス時間幅積算機能を有します。積算は実量で行います。管理コンピュータは、必要に応じてこれらをトレンド記録データとして読み出すことができます。FTP(ファイル転送プロトコル)機能によってTL2から管理コンピュータの指定ファイルに直接送付することもできます。
 ⑤ 帳票データベース
 TL2は、④で作成されたトレンド記録データをもとに、1時間単位あるいは1日単位で瞬時値、平均値、最大値、最小値、積算値を編成し、日報ファイル、月報ファイルとして保持します。これをもとに、FAX機で日報、月報として印字することや、FTPによって管理コンピュータの指定ファイルに直接送付することができます。
 ⑥これらの機能設定は、TL2ビルダーで行います。プログラミングに熟練技能の必要はありません。図2にPV設定ビルダー画面を、図3にLV設定ビルダー画面を示します。アナログ入力、デジタル入力の処理に関するすべての事項が空欄記入方式で設定できます。
 ①~⑤の共通基盤の上に、種々のアプリケーション機能が構成されます。以下、これらのアプリケーションの中からFAXロガー:TL2F、Webテレメータ:TL2W、テレロガー2:TL2Xをご紹介します。 

2.FAXロガー:TL2F
 管理者に対する通報、報告などの表現手段をFAX機としたものです。図4に通報印字例を示します。事象発生の都度、TL2からFAX機に接続し、出力して記録に残すことができます。図5に日報印字出力例を、図6に日報内容の設定用ビルダー画面を示します。実際にFAX機で印字するときの様式を使って、設定作業を行うことができます。また、月報も同様に作成することができます。これらは、あらかじめビルダーで設定した時刻に、TL2がFAX機に接続して自動印字するだけでなく、管理者がFAX機付属の電話ハンドセットからTL2にダイヤルアップ接続した上で、数字ダイヤルキーを使ってTL2に要求して出力させることもできます。このとき、3日前の日報まで要求可能です。また、管理者が電話ハンドセットから要求することによって、TL2Fが現場で蓄積している事象ログを印字させることができます。
 
3.WEBテレメータ:TL2W
 管理者に対する表現手段をPCのWebブラウザとしたものです。WebブラウザはどのPCにも必ず存在するソフトですから、PCを現場のTL2Wに接続しさえすれば現場の状況を画面で監視することができます。すなわち、PC側でのアプリケーションプログラムの準備はまったく必要なく、いつどこからでも接続できるという大きな利点があります。PCとTL2Wの接続方法としては、次の2つがあります。
 ①お互いにISDNルータでISDN回線に接続しておいて、必要に応じて一方から相手にダイヤルアップ接続し、LANによるイントラネット接続状態にする方法。
 ② TL2Wを固定IPアドレスでインターネットに常時接続しておいて、PCのWebブラウザが必要時にこのIPアドレスを指定してTL2Wに接続する方法。
 TL2Wに標準搭載されている画面を図7、図8に示します。どちらの画面にも、上部に4画面(現在値・ログ・トレンド・トレンド数値)のメニューが表示されていて、任意に切り替えて表示することができます。図9に、TL2Wから管理コンピュータに発信されたE-mail通報画面の例を示します。TL2Wは、iモード携帯電話機に対しても、同時にこのE-mailを発信します。
 これらの運用方法は以下のようになります。
 ①管理者は、着信を知らせてくれるiモード・メールによって、即時に、どこの現場(発信元)で何が起こったかを知る。
 ②管理コンピュータのWebブラウザを立ち上げて、「お気に入り」に登録してある発信元のTL2Wの名前をクリックする。
 ③この結果、Webブラウザから通報発信元のTL2Wへの接続が行われ、上記4画面(現在値・ログ・トレンド・トレンド数値)のうちの事象履歴画面(図7)が表示される。これを観察することによって、現場でどのような経緯で異常に至ったかを知ることができる。
 ④また、必要に応じてトレンドグラフ画面(図8)を表示させて、各PV値の経時変化や相互相関を観察する。
 ⑤ほかに、PV/LV瞬時値画面やPVの実量数値による時系列表示画面を援用することによって、現場での異常解析と対策立案が可能。
 ⑥出先の保守担当者に出動指示する。
  TL2は、上記異常対応だけでなく、現場設備の遠隔保守データベースを管理コンピュータ上に構築するため、1日1回時刻を定めて、トレンド記録データをFTPで管理コンピュータに送付します。 

4.テレロガー2:TL2X
 TL2Xは、エム・システム技研の現行製品である信号監視ロボットテレロガー(形式:TLX1)/メモリテレカプラ(形式:TLZ)の延長線上の機種です。エンジニアリング担当者が、PC上にユーザー固有のアプリケーション・プログラム(画面やデータ処理)を作り込むことを前提にし、作業を容易にする手段を準備している点に特色があります。具体的には、次ぎに挙げる手段です。
 ①図1に示すように、PCのWindows環境で動作するTL2Xサーバが準備されています。
 ②このTL2Xサーバには、API(アプリケーション・プログラム・インタフェース)が定められています。
 ③各APIには、ユーザーの要求をTL2サーバに伝達するパラメータが制定されています。
したがって、アプリケーション作成担当者の作業は、次のように容易になります。
 ①TL2XとPCを接続する通信およびその手段が何であるかを意識する必要がありません。ここにいう手段とは、一般電話回線/ISDN回線/ADSL/LANなどの別を指します。
 ②アプリケーション作成に最適化したコマンド・セットが用意されています。コマンドごとに、ユーザーの要求をTL2サーバに伝えるパラメータが制定されています。ユーザーは、規約にしたがってパラメータ値を決めるだけでTL2Xの機能を使いこなすことができます。TL2Xの詳細については、後日あらためてご紹介したいと思います。 

お わ り に
 エム・システム技研は、創業以来30年余り一貫してテレメータ製品を各界にご提供し、お役にたって参りました。今回ご紹介したTL2シリーズも、その流れの上で21世紀の初頭において、その役割を果たす製品と位置づけています。これまでと同様、お客様各位のご意見、ご要望をいただきながら、製品の充実を図って行きたいと考えています。よろしく下記アドレス宛にご意見・ご要望の提供をお願いします。
E-mail:kawashima@m-system.co.jp ■ 

テレロガーメモリテレカプラはエム・システム技研の登録商標です。
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