2003年4月号 | ||||||||||||||||
チャネル相互間完全絶縁・最高度耐ノイズ性を備えた
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(株)エム・システム技研 開発部 | ||||||||||||||||
このシリーズの直流/熱電対入力用としては、R1M-GH2(16点)とハーフサイズのR2M-2H3(熱電対8点)・R2M-2G3(直流8点)があり、スペースファクタとチャネル単価において優れた製品です。 しかしながら、PCレコーダ適用範囲の広がりとともに、とくに熱電対利用現場から、本格的なチャネル相互間絶縁と高度な耐ノイズ性を求められることが多くなってきました。 エム・システム技研では、この要求に応えて、チャネル相互間完全絶縁と最高度の耐ノイズ性を備えた直流/熱電対8点入力用PCレコーダR1MS-GH3を、このほど開発・発売しました。 本稿では、熱電対測定において出現する測定機器に対する厳しい要求のまとめと、これに応えた製品R1MS-GH3の優れた性能についてご紹介します。
通常は絶縁型が用いられますが、絶縁型においても、高温で絶縁が劣化し、電気炉電源からの漏れ電流が熱電対に流れ込む現象はよく知られています。高速応答が必要な場合には、接地型や露出型も使われます。また、シースを用いず熱電対を測定対象物に直接溶接する場合もあります。このようなとき、熱電対を通じた回り込み電流によって測定値変動・誤動作・破壊などが生じる恐れがあります。これを防止するためにチャネル相互間絶縁が必要になります。 熱電対配線は微弱な熱起電力(数十μV/℃)信号を取り扱うにもかかわらず、大電力ケーブルからの電源ラインノイズ、電気炉ヒータなどのSCR制御ノイズ、インバータヒータ・インバータモータ・高周波誘導加熱炉・無線機などからの高周波ノイズ、電磁弁・リレー励磁コイルからのインパルスノイズ、リレー接点・溶接機アークからの高速バーストノイズなど、様々な高レベルのノイズにさらされる場面が少なくありません。熱起電力を上回る各種のノイズがノーマルモードで侵入することもあり、高度な耐ノイズ性能が求められます。
R1MS-GH3はR1M-GH2に比較して、チャネル間完全絶縁が実現され、耐ノイズ性・基準精度も大幅に向上しています。しかし、スペースファクタは半減し、チャネル単価は倍強となっています。
チャネル間絶縁を実現するのに光半導体マルチプレクサ方式を採用した、チャネル間簡易絶縁形多点入力機器製品が多くあります。この場合は図4の説明に記す原理を採用しており、コスト的には有利なのですが、性能的限界が有ります。仕様上のチャネル間耐電圧と実用上の精度を保証できるチャネル間電圧に大きな差のあることが少なくなく、注意が必要です。
サンプル品での耐ノイズ性評価試験において、熱電対端子にDC90mV(起電力表における最大値はE熱電対、1,000℃の76.4mV)を入力し、これにノイズとして60HzのAC電圧500mVrmsをノーマルモードで重畳しても、測定値変動は10μV程度(E熱電対0.16℃相当の熱起電力)に過ぎませんでした。 また、同試験において熱電対入力端子・接地端子間にコモンモードで60HzのAC電圧1Vems印加しても、測定値変動はAD変換分解能以下で検出できませんでした。 インパルスノイズ試験(2kV1μs幅)および規格IEC 61000-4の各種ノイズ耐性試験(ファーストトランジェント、バースト、高周波伝導、無線周波電磁界、雷サージ、静電気)を行い、高レベルの過酷なノイズに対し、測定値変動が小さく正常動作が乱れないで維持されることも確認しています。
表1および表2を参考として、両製品を場面に応じて使い分けていただければ、最適な計装を実現できます。また、エム・システム技研のPCレコーダの適用範囲をさらに拡大できる製品です。 ご活用のほど、よろしくお願いします。■ |
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