2003年4月号

海外レポート

アメリカ計装事情と2線式変換器

(株)エム・システム技研 海外営業部 アメリカ担当マネージャ 
は じ め に
 日本とは異なり、北米では2線式変換器が4線式変換器より多く使われており、その比率はおよそ3対1といわれています。一般的に、2線式でも4線式でも変換器自体の価格にはたいした差はなく、2線式が好まれるのは、設置が容易で経済的だからだと思われます。

1.労働組合の存在
  1970年代から90年代初頭のアメリカでは、労働組合が企業に対して非常に強い力をもっていました。労働組合が企業競争力を省みずに高い報酬を要求し、各種製品のコスト高を招いた結果、たとえば低コスト日本車の市場参入を容易にしてしまったのです。
 労働組合のせいで、ささいな問題を解決するための遅れがさらなる遅れを生むことになり、プロジェクト完成に莫大な費用がかかるようになりました。このことは、アメリカでの展示会準備を例にとるとよくわかります。展示ブースの明かりをコンセントに差込むために、時給150ドルの技術者が必要なのですから。アメリカの巨大生産工場でも同じことでした。
 企業の方も、次第に労働組合と関わらずにすむ方法を探し始めました。当然、多くの工場が海外に進出しました。計装機器については、DC24Vや安全な低ミリアンペア信号で動作する設備は、労働組合所属の高級電気技師でなく、もっと賃金の安い技術者で維持管理できることに気がついたのです。
 この安全な低エネルギーレベルの機器が2線式変換器だったのです。90年代以降は、産業のグローバル競争が始まり、コンピュータやインターネットが普及したことで、アメリカ企業も構造改革やダウンサイジングに乗り出し、結果として労働組合の影響力が弱まりました。ですから、最近ではこういった議論はあまり聞かれなくなりました。しかし、2線式変換器は中型から大型の生産設備では相変わらずよく使われています。

2.変換器の設置環境
 アメリカでは何もかもが大きく、それらが1箇所に集まっているということがありません。上下水道、石油化学、製薬、鉄鋼、自動車、製紙工場などでは、変換器は、PLCかDCSのそばに、あるいは現場のタンク、パイプ、排気塔のいずれかにつながれて設置されます。そこから制御パネルのあるところまでは、少なくて300m、最大800mぐらいの距離があり、この距離で利用できる信号としてはネットワーク通信かDC4~20mA信号しかありません。ネットワーク通信が普及してきたとはいえ、つい最近までは4~20mA信号の2線式変換器が主流でした。
 たとえば、屋外に複数の貯蔵タンクがあるタンクヤードの場合、タンクはたいてい電源がとれない場所に散らばっています。そんなとき、2線式変換器を採用すれば問題解決です。現場で電源供給は可能だったとしても、設置の費用、信頼性、配線のメンテナンスとなると、わずか250ドルの2線式変換器にはかないません。DC24V電源はPLCから供給できるため、制御室・現場間のインタフェースは単純明快です。これこそがお客様が求めるものです。

3.危険場所への適用
 アメリカでは危険場所の80%がClass I、Division 2であり、残り20%がClass I、Division 1にあたります。危険場所では、同じ機能であれば4線式変換器を使うことはまずありません。2線式では信号と電源が同じ配線なので、本安バリアの設置が大変容易になります。4線式だと信号ラインとは別に電源ラインにも安全策を講じなくてはならず、コストと危険度が増します。また、危険場所では電源がとれないため、設置費用もさらにかさんでしまいます。

お わ り に
 エム・システム技研には、DINレール取付形だけでなく、ホッケーパック形、ヘッドマウント形、本質安全防爆対応など、海外市場にも適用できる様々な2線式変換器がすでに揃っており、また今後は、PROFIBUS通信などネットワーク対応の2線式変換器の開発も予定されているので、エム・システム技研の製品は今後ますますアメリカを中心に、広く海外市場に受け入れられて行くでしょう。■
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