2003年5月号

Webテレメータ(形式: TL2W)

(株)エム・システム技研 開発部
 
は じ め に
 本誌2002年11月号および12月号でフィールドロガーシリーズ(形式:TL2□)の全体像をご紹介しました。本号では、同シリーズ構成機種の一つであるWebテレメータ(形式:TL2W)についてご説明します。
 21世紀に入りIT時代の本格化に伴って、管理者がいる場所から遠く離れた現場で稼動している公共設備や産業設備/装置/機器などに対して、インターネット接続方式に基づいて、Web画面監視、Eメール通報、FTP(ファイル転送プロトコル)による現場データファイル転送などの機能を求めることができるようになっています。TL2Wは、これらの時代的要請に応えようとする製品です。TL2Wの具体的用途として、次の2つが挙げられます。 ①現場設備/装置/機器群を日常運転するための遠隔集中監視用および管理用端末
 ②予防保全のための、遠隔集中管理センターからの兆候検知および保守を目的とするデータ収録用端末
 とくに②の用途については、たとえば公共設備である上下水道設備が機能不全に陥った場合の市民生活に与える影響の大きさを考えると、その重要性がますます大きくなると予想されます。TL2Wの製品設計は、このような用途も視野に入れて行われています。

1.TL2Wの基本機能
 TL2Wは、図1に示すように72mm幅のM・UNIT標準プラグイン筐体に収納された、手のひらに載るコンパクトな現場端末です。通信接続手段としては、10Base-T/100Base-TX Ethernet回路を内蔵しています。これによって、構内LAN回線/ADSL/ISDN回線にLAN接続することができます。
 また、8点のアナログ入力と12点のデジタル入力回路を内蔵しています。入力点数がこの範囲を超える場合は、背面端子台に出ているRS-485通信回線を用いて、エム・システム技研製のリモートI/O R1Mシリーズを外付けすることによって対応できます。
 TL2Wは、設備から収録した計測データを不揮発のフラッシュメモリに記録します。このため、不時の現場停電に際しても蓄積データが損なわれることはありません。復電時には自動的に立ち上がって、動作を再開することはいうまでもありません。
 TL2Wは、現場に設置されて、以下に列挙する様々な監視とデータ収録を実行します。
 (1)アナログ入力、デジタル入力の常時監視を行い、異常検出時、管理コンピュータまたは管理者の携帯電話にEメール通報
 (2)検出した異常事象、運転/停止などの機器事象を事象ログとして記録
 (3)アナログ入力の瞬時値、積算値、平均値、最大値、最小値の算出とトレンド記録
 (4)デジタル入力のパルス列積算値、パルス幅積算値、ON/OFF時間積算値の算出とトレンド記録
 (5)日報/月報など帳票データの算出と、日報4日分/月報2か月分の記録
 (6)トレンドデータファイル、算出帳票データファイル、事象ログファイルをFTP機能で管理コンピュータに送信
 (7)管理用WindowsパソコンのWebブラウザ:インターネットエクスプローラを用いて画面による現場監視/視認
 なお、(7)項に関しては、TL2W内にWebサーバ機能と現場監視用標準画面を内蔵していて、パソコンのWebブラウザからTL2Wに接続要求があったとき、TL2WからパソコンのWebブラウザに対して、この標準画面をダウンロードして表示します。したがって、パソコン上にアプリケーション画面を準備する必要はありません。このため、インターネット/LAN経由でTL2Wに接続できるパソコンでさえあれば、機種と場所を選ばないという大きな利点をもっています。Web方式が歓迎される理由はこの点にあります。

2.TL2Wの回線接続
 図2にTL2Wを現場端末とする接続構成図を示します。大別して3通りの接続方法に分類できます。
 (1)構内LAN直結:企業や公共事業体の私設LANにTL2Wを直結する場合です。LAN上のTL2Wの識別番号であるIPアドレスは企業のネットワーク管理者が自由に決定配布することができます。LAN上の管理コンピュータからのWeb監視、TL2WからのFTPによる収録データ送信が自由にできます。構内LANの延伸手段としては、NTTの高速デジタル専用回線を借りることによって、たとえば市周辺に散在する浄水場を連結して市役所の管理部署で一括集中管理するなどの方法も可能です。
 (2)ISDNダイヤルアップ接続:管理コンピュータ、TL2WともにISDNルータ経由ISDN回線に接続しておいて、必要時に必要とする側からダイヤルアップ接続します。一旦接続されれば(1)のLAN接続と等価です。日本国中場所を問わず、私設LAN回線化します。しかも必要時だけ接続するため、実用上有利で信頼性の高い方法です。
 (3)フレッツISDN/ADSLなど常時接続:ISP(インターネットサービスプロバイダ)と契約すれば、ISDN回線(ISDNルータ経由)、またはADSL回線(ADSLモデム経由)でインターネットに常時接続することができます。管理コンピュータから、いつでもどこからでも目当てのTL2Wに接続できるようにするためには、各TL2Wはインターネット上でユニークな固定IPアドレスをもっている必要があります。これはISPに申請して取得することができますが、取得時初期費用と月額使用料がかります。現在エム・システム技研では、デモンストレーション兼評価用に1台のTL2WをADSL回線に常時接続しています。お客様のパソコンのインターネットエクスプローラに下記のURLを入力いただくと、次の3.項で説明する4種類の標準画面を表示することができます。このURL中の4つの数字(219.162.80.190)が、取得している固定IPアドレスです。表示された画面上部のメニューをクリックすることで画面を切り替えることができます。お試しください。
URL: http://219.162.80.190/alarm.html
(ユーザー名とパスワードはともに“guest”としてください)

3.TL2WのWeb画面と機能
 TL2Wには、購入してすぐお使いいただけるように4種類の標準画面が組み込まれています。
 図3には管理パソコンに届いたEメール通報画面を、図4には携帯電話に届いたEメール画面を示します。また、図5には事象履歴画面を、図6には現在値表示画面を、図7にはアナログ入力のトレンドグラフ画面を示します。これらの画面を使うことによって、現場で異常が発生したとき、管理部署で現場の状況を把握して対策を立案することができます。
 TL2Wを使うにあたって、上記標準画面に加えてアプリケーション固有のWeb画面を組み込みたい場合が想定されます。そのようなご要望に備え、現在、TL2W用Web画面作成ツールの準備を進めています。このツールを使用すれば、JAVA言語やHTMLなどの専門知識がなくても、パソコン上のお絵かきソフト的感覚で、お客様自身が簡単にWeb画面を作成できるようになります。

4.TL2ビルダー
 TL2がもつ機能を、適用目的に合わせてカスタマイズする手段として、TL2ビルダーソフトが準備されています。これはパソコン上で動作する表形式のソフトで、設問項目に対して答えを入力または選択して行きます。コンピュータの専門スキルは不要です。

お わ り に
 産業設備や公共設備に対するインターネット管理を促す製品は、すでに各社から提供されています。TL2Wでは、主として中小規模のこれら設備のインターネット監視を意図し、小形、低価格、取扱い簡便という実用性を重視しています。エム・システム技研は、TL2Wを介してユーザーの皆様との意思疎通を深め、双方に益する方向性を見出して行きたいと考えています。ご意見、ご要望をお待ちしています。  ■
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