2003年7月号 | ||||||||
お客様訪問記
大阪大学大学院 工学研究科で採用されたPCレコーダ
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(株)エム・システム技研 東京支社インサイド営業部 システム技術担当 | ||||||||
最近、大学をとりまく環境が大きく変わってきました。国立大学は、来年4月に独立行政法人へ移行します。これによって、大学の裁量が拡大し、より民間的経営手法が求められるようになります。大阪大学においても、組織の見直しとともに、大学をより活性化させ、創造的で活気にあふれた教育・研究の拠点となるよう、様々な取り組みが行われています。 今月は、大阪大学大学院 工学研究科に南埜 宜俊 教授、小泉 雄一郎 助手のお二人をお訪ねし、工学研究科の現状と方向、その中でとくに責任をお持ちである「知能・機能創成工学専攻」におけるお取り組みの詳細、そして具体的に実験データの収集用に採用されているPCレコーダについてお話しを伺いました。 [エム・システム技研、以下エムと略称] 所属なさっている工学研究科そしてご専任の「知能・機能創成工学専攻」ではどのような研究や授業を行っていらっしゃいますか。 [南埜] 大阪大学工学部では、平成9(1997)年度に大学院重点化の改組を行い、それまであった機械工学、材料工学、生産工学に属していた6学科を「応用理工学系」として再編しました。大学院では、従来からの流れを受けた「マテリアル科学専攻」、「マテリアル応用工学専攻」、「機械システム工学専攻」、「電子制御機械工学専攻」、「機械物理工学専攻」、「生産科学専攻」に加え、応用理工学系内の連携を担うとともに、広い視野と高度な専門知識を基礎にした問題設定・解決能力、統合力および国際性を備えた人材を育成することを目的に、「知能・機能創成工学専攻」が新たに加わりました。現在、当専攻は21世紀COEプログラム「構造・機能先進材料デザイン研究拠点の形成」の事業を推進する専攻の一つでもあります。 この「知能・機能創成工学専攻」は、6講座と1つの協力講座から構成され、応用理工学系の各分野にわたる先端的で創造的な研究を目指しています。私たちはこの6講座の1つ「マテリアル知能工学講座」を担当しています。 「知能・機能創成工学専攻」では、独創的で創造性豊かな人材を育成するため、幅広い授業科目を用意して専門教育を行っています。その中で、企業や他大学などから外国人講師を含む外来講師を招き、より広い視野や国際性を養うための特別講義を行うとともに、企業の協力を得て「創成工学演習」を行っています。この演習は、(社)日本工学教育協会より「工学教育賞」として、平成13年7月に工学教育の発展に寄与した功績が大きいと表彰されています。 毎年、複数の民間企業から社員を講師として派遣していただき、設計から試作までのプロジェクトを実際に遂行することによって、創造性、自己学習能力、チームワーク、コミュニケーション能力などを養っています。この演習における成果については、演習に参加した企業が特許を取得したり、実際の製品化も行われています。 平成12、13年度には、エム・システム技研のご協力をいただき、開発部の村地さんに外来講師として参加していただきました。 特別講義では、英語によるプレゼンテーションや、学生が自らビジネスプランを立案するベンチャービジネスコンテストなども行われ、より実践的な人材の育成を目指しています。 私たちが担当している「マテリアル知能工学講座」では、ナノメートル(nm=10-9m)レベルの材料組織制御(ナノ組織制御)による材料機能化の研究を行っています。この研究の中で、実験データを収集するため、エム・システム技研製のPCレコーダを使っています。 [エム]どのような研究にPCレコーダをお使いなのか、さらに詳しくお教えください。 [小泉] 従来のマイクロメートル(μm=10-6m)レベルでの材料組織制御においては、原子レベルの欠陥の影響はほとんど無視されてきました。しかし、ナノレベルの組織制御においては、原子空孔(結晶を構成している原子配列の中で原子が欠落している部分)や逆サイト原子(異なる原子が周期的に規則配列している中での原子の入れ違い)といった原子レベルの欠陥の制御が極めて重要です。逆サイト原子に由来する逆位相領域と呼ばれるナノレベルの組織サイズを制御すると、金属材料の力学的性質を飛躍的に向上させることができます。 私たちの研究では、チタン3アルミニウム(Ti3Al)という金属化合物を使って研究を行っています。チタンとアルミニウムの合金は、軽量で強度が強いことから、最新の自動車のエンジン材料などに使われています。チタン3アルミニウムの逆位相サイズを20~30nmにすることにより、さらに強度を増すことができます。このような微細組織をもったチタン3アルミニウムも、耐熱材料として使用されている間に高温に保持されると、逆位相領域が成長し、粗大化してしまいます。すでに、この成長の挙動を解明しましたので、今後、この成長を制御することを課題にしています。 このように、私たちの研究では、チタン3アルミニウムの逆位相サイズを計測する必要があります。電子顕微鏡を用いてチタン3アルミニウムの試料を観察することで、このナノレベルの組織状態を把握することができます(図4)。しかし、そのためには、チタン3アルミニウムの金属試料を電子顕微鏡で観察できるように加工しなければならず、手間と時間がかかります。 原子空孔や逆サイト原子があると、その状態によって金属の電気抵抗が違ってきます。そこで、金属試料の電気抵抗を計測することで、ナノレベルの金属組織を把握することが可能です。実際の測定では、外部に基準抵抗を置き、試料と基準抵抗に電流を流して、同時に両方の電圧を測定することによって、試料の抵抗値を計測しています。この測定値をパソコンに取り込むため、PCレコーダを使用しています。 実験では、試料を様々な温度環境に置いて、そのときのナノレベルの組織サイズを調べています。計測信号を取り込むリモートI/OであるR1M-GH2は、熱電対からの温度信号とともに基準抵抗や試料からの電圧信号を同時に取り込むことができ、様々な温度条件下での計測データが簡単にパソコンに取り込めるため、大変便利に使っています。 [エム] お忙しいところ、ご研究の内容について詳しくご説明いただき、ありがとうございました。 ■ 本稿についての照会先: (株)エム・システム技研 東京支社 インサイド営業部 TEL.03-5783-0511 FAX.03-5783-0757
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