2003年10月号

計装豆知識

1ポート形と2ポート形避雷器

 
分 類
 IEC61643-1(低圧用避雷器の国際規格)に従えば、電源用避雷器は、その接続方式によって1ポート形と2ポート形に分類することができます。1ポート形避雷器は被保護機器の給電端子に並列に接続する避雷器で、エム・システム技研では単純並列接続形避雷器と呼んでいます。また、2ポート形は電源ラインに直列に接続する避雷器で、同じく直列接続形避雷器と呼んでいます。

保護性能
 ここで1ポート形と2ポート形の保護性能について説明します。図1は、単純化するため、一般には複数本ある電源ラインのうち1本についての保護回路の例を示しています。(a)の1ポート形では、サージ電流が電圧制限素子VLにすべて流れるため、制限電圧v はVLの電流-電圧特性(図2)に依存します。このため、図2から分かるように、1ポート形はサージ電流が大きいと、つまり大きな雷に襲われると、制限電圧 v が高くなってしまいます。一方、(b)の2ポート形では、内蔵された直列インピーダンスによってサージ電流がVLに流れるのを抑え、そのほとんどをサージ吸収素子SAに分流させるため、雷の大きさに関わらず安定した制限電圧 v ’を実現できます。

長所と短所
 1ポート形は、部品点数が少なく安価である、また機器の負荷電流が避雷器内部を通過しないため、負荷電流の大きさを気にせずに接続できるなどの長所をもちます。一方、直列インピーダンスが存在しないため、雷サージ電流が大きいと制限電圧 v が高くなって保護性能が悪くなるという、避雷器としては決定的ともいえる短所があります。
 2ポート形は、多段保護になるため部品点数が増え比較的高価になる、さらに、直列インピーダンスの定格電流値によって負荷電流が制限される、などの短所をもちます。しかし、インピーダンスがラインに直列に挿入されるため、雷サージ電流の大きさに関わらず制限電圧 v ’が低く抑えられ、保護性能が良いという長所があります。

形式の選定
 前述のとおり、1ポート形と2ポート形にはそれぞれ一長一短があるため、使い分けが必要です。たとえば、給電対象の被保護機器のサージ耐力に着目して選定するとすれば、以下のようになります。
 被保護機器が絶縁トランス、ヒータ、電磁開閉器、モータといったいわゆる強電機器の場合には、おおむねサージ耐力が高いので1ポート形でも保護できるでしょう。しかし、コンピュータ、計測器、通信機器といった弱電機器の場合には、アースとの間の耐電圧が低かったり、組み込まれている電源回路内に半導体が使われているためサージに対して弱いものがあり、2ポート形の採用が望ましいといえます。  ■

【(株)エム・システム技研 開発部】

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