2004年1月号

並列接続形電源用避雷器(形式:MAK)の開発

(株)エム・システム技研 開発部
 
は じ め に
 電源用避雷器は、その接続方式に着目すると、並列接続形と直列接続形に分けることができます。本誌(2003年10月号の)「計装豆知識」にも記載しましたが、並列接続形は、被保護機器の給電端子に並列に接続する避雷器で、IEC61643-1(低圧用避雷器の国際規格)では1ポート形避雷器と呼ばれています。これに対し直列接続形は、電源ラインに直列に接続する避雷器で、同じく2ポート形避雷器と呼ばれています。ご参考までに、図1に並列接続形と直列接続形の接続の違いを示します。

1.並列接続形の特徴
 並列接続形の長所としては、部品点数が少なく安価であること、被保護機器の負荷電流が避雷器内部を通過しないため、負荷電流の大きさを気にせず接続できることなどが挙げられます。しかし、短所として、リアクタンスや抵抗器で構成される直列インピーダンスが存在しないため、雷サージ電流が大きいと制限電圧が高くなり、保護性能が直列接続形に比べて劣ることが挙げられます。
 上記の長所短所を考慮すれば、並列接続形は、比較的サージ耐力が高く負荷電流も大きい機器、つまり絶縁トランス、ヒータ、電磁開閉器、モータといったいわゆる強電機器の保護に適しています。また、分電盤に設置して電源系統の1次保護を行うのにも有効です。これに対し、コンピュータ、計測機器、通信機器といった弱電機器を保護する場合は、内部に半導体が使われていてサージに弱い傾向があるため、直列接続形が望まれます。

2.エム・システム技研の取組み
 エム・システム技研における避雷器の開発は、計装機器といった弱電機器の保護が出発点でした。そのため、保護性能に主眼をおいた直列接続形にこだわり続け、これを避雷器開発の主流とすることでお客様の信頼を得、ひいては多大な出荷実績を挙げてきました。また、避雷器メーカーのほとんどが並列接続形しか供給していない中で、直列接続形は、実際に抜群の避雷効果を発揮して参りました。
 しかし、機器類のすべてが直列接続形でなければ保護できないわけではありません。また、負荷電流が大きい設備を保護したいといったお客様の声に、直列接続形では対応しきれないことがありました。前置きが長くなりましたが、このような経緯から、エム・システム技研では並列接続形電源用避雷器(形式:MAK)を現在開発しています。図2にMAKの外観を示します。

3.MAKの特長
 それでは、MAKの多岐にわたる特長を以下にご紹介します。
 (1)電流容量
 並列接続形なので、負荷電流を気にせずに各種の電気機器に接続できます。
 (2)高 性 能
 放電素子にはバリスタを使用しています。したがって、放電ギャップ式のように、放電後に短絡電流が流れること(続流)がなく、電源ラインにショックを与えません。また、雷サージに即応して動作します。
 (3)超高耐量
 放電耐量20kA×2回保証(雷サージ波形 8/20μsの場合)の超高耐量形です。通常想定されるサージ電流に対して、十分余裕のある耐量に設定しています。
 (4)安全機能
 エレメント部内蔵の放電素子が万一劣化して過電流が流れても、感熱切離し回路が働き、確実に電源ラインから切り離します。またエレメント部前面の点検用表示窓に、切離し回路が働いたことを表示するとともに、警報出力で外部に異常を知らせます。
 (5)感電予防
 端子は保護等級IP20の安全設計です。絶縁筐体で覆われており、感電事故を予防します。また丸形圧着端子を用いることで、広範囲の太さ(2~14mm2)の電線を接続できます。
 (6)誤挿入対策
 各使用電圧ごとに形状を異にした電圧識別キーで、エレメント部の誤挿入を防ぎます。つまり、電源ラインAC200Vが結線されたベース部に、AC100V用のエレメント部を誤挿入する事故が予防できます。
 (7)プラグイン構造
 ベース部とエレメント部を分離できるプラグイン形であるため、避雷器の点検、エレメント部の取替およびメガーテストが容易に行えます。また、エレメント部をはずしても電源ラインは切断されません。
 (8)コンパクトな形状
 小形かつ薄形のコンパクト設計であるため、小さなスペースに多数並べて設置できます。また取付は、便利なDINレール対応としています。
 その他、低圧用避雷器規格(IEC61643-1)が要求する厳しい安全性試験に合格するよう設計しています。試験の実施はこれからになりますが、近日中に、安全性の肩書きが加わることになるでしょう。

4.MAKの使用上の技法
 次に、MAKを使用する際の技法を簡単にご紹介します。
 (1)保護性能の向上
 MAKは並列接続形であるため、前述のとおり保護性能が直列接続形に比べて劣りますが、下記の配線を施していただくと保護性能を向上させられます(図3参照)。
 分電盤から被保護機器までの距離aが20~30mある場合、分電盤内と被保護機器の直近にそれぞれMAKを設置します。電源線のリアクタンスが直列インピーダンスの働きをするため、直列接続形と同様に電子機器の保護が可能になります。
 (2)分岐配線の注意
 また、図3中bで示したところは極力短く配線することをお勧めします(理想的には0.5m以下)。これはJIS C 0364-5-534でも推奨していますが、サージ電流が流れると電線のリアクタンスによって分岐線に電圧が発生し、それが避雷器の制限電圧に加算され、期待した避雷効果が得られなくなるからです。
 (3)接地抵抗について
 避雷器の接地は、あくまで連接接地が基本です。しかしMAKを分電盤に設置する場合は、被保護機器が近くにあるとは限らず、単独接地になりがちです。このような場合は、接地抵抗を極力低くしてください。一方、MAKを被保護機器の直近に設置する場合は、連接接地が可能であり、接地抵抗は100Ω以下で十分です。

お わ り に
 以上、MAKについて手短かにご紹介しました。もしご不明な点がありましたら、エム・システム技研ホットラインまでお問い合わせください。また、MAKは2004年春に発売を予定しています。今後、避雷器の使用をご計画の際は、MAKをご検討にお加えいただきますようお願いします。 ■
 
 
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