2004年9月号

計装豆知識

◆◆ 変換器の仕様書の読み方について (9) ◆◆

信号変換器の応答時間

 
 今回は、信号変換器の「応答時間」について説明します。

1.応答時間とは
 電気回路は、R(抵抗)やC(コンデンサ)およびL(インダクタ)などで構成されます。電気回路の状態(回路内の電圧など)が変化するとCやLに蓄えられている電気エネルギーも変化します。このエネルギーの変化は連続的に行われるため、電気回路がある状態から他の状態に移行するには時間がかかります。このような、電気回路がある定常状態から他の定常状態に移行する期間を過渡期間と呼び、その間に現れる現象を過渡現象と呼んでいます。
 工業計器の分野では、入力がステップ状に変化した瞬間から、出力がその全変化分の指定されたパーセントに達するまでに要する時間を、ステップ応答の応答時間といいます(JIS B0155)。

2.仕様書での表現方法
 工業計器におけるステップ応答の性能表示法については、JIS C1803で、「ステップ応答は、通常、ステップ入力に対する出力の過渡的な変化を連続的にとらえ、必要に応じて(a)~(e)をもって表示する。」と規定されています。
 (a)整定時間( )s[ステップ入力( )~( )%、
   最終値の( )%]
 (b)時定数( )s
 (c)応答時間( )s[最終値に対し( )%]
 (d)むだ時間( )s
 (e)行き過ぎ量( )%[ステップ入力( )~( )%]
 エム・システム技研製信号変換器の応答特性については、(c)の表現方法を採用して以下の例に示すように、仕様書の性能の項に最終値に対して90%の値に到達するまでの応答時間を表示しています。
 なお、ステップ応答時間として、他社では、最終値の90%ではなく、63.2%に達するまでの時間を表示している例もありますが、エム・システム技研では、90%到達までの時間の方が特性表現としては好ましいものと考えています。
 例:直流入力変換器(形式:SV)の場合
  応答時間:0.5s以下(0 → 90%)
       (高速応答形 約25ms)
 例:超高速直流入力変換器(形式:SVF)の場合
  応答時間:500μs以下(0 → 90%)

3.応答時間についての注意点
 信号変換器の応答時間をむやみに速くすると、入力信号に乗ってくる恐れがある50/60Hzの誘導ノイズを信号変換器の出力信号として出力し、システムを誤動作させる可能性があります。
 通常のエム・システム技研製信号変換器では、入力信号に50/60Hzの誘導ノイズが加わっても出力信号が大きく変化しないように(システムが誤動作しないように)、応答時間を遅い値(通常「0.5s以下(0→90%)」)にしています。
 高速応答の信号変換器も開発していますが、入力信号に重畳したノイズも出力信号として出力する場合が多いため、ノイズ源の隔離やシールド線での配線など、使用に際してはノイズ対策について注意する必要があります。

4.参考:応答時間と時定数
 エム・システム技研製のほとんどのアナログ式信号変換器は、定常状態に達するまでに時間がかかりますが、オーバーシュート(図1の(1)の応答特性)やリンギング(図1の(2)の応答特性)など振動的な応答にならないように1次遅れ応答特性(図1の(3)の応答特性)のローパスフィルタに近い特性をもっています。
 1次遅れローパスフィルタはRC直列回路で構成していますから、時定数T は式1で表されます。

 1次遅れローパスフィルタの過渡期間(T(s)後)の出力値Eは式2によって算出できます。
 (ここに、ε は自然対数の底(2.71828…))
 なお、目標値の90%に到達するまでの応答時間は、式1の時定数T の約2.3倍(約2.3T )になります(図1参照)。■

【(株)エム・システム技研 開発部】
 
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