2004年11月号

計装豆知識

◆◆ 変換器の仕様書の読み方について (11) ◆◆

絶縁抵抗および耐電圧

 
 信号変換器をはじめとする計装用機器の多くは、入力・出力回路間や入出力回路と電源回路の間が絶縁されています。また、産業用機器に限らず、一般消費者向け電子・電気機器でも、商用電源に接続される回路と他の回路との間は絶縁されています。その理由は、一つには各回路間の信号の回り込みやノイズ(主として誘導ノイズ)などによる影響を遮断して機器本来の性能を維持することにあり、一つには使用者が手で触れる可能性のある操作部に危険な高電圧が到達するのを防いで、使用者の安全を図ることにあります。このため、製品本来の機能とともに、その絶縁性能も大変重要です。実際、多くの規格では、規格認証に当たって絶縁性能を測定する試験を義務づけています。今回のテーマは、その絶縁性能を表す指標である「絶縁抵抗」および「耐電圧」です。

1.絶縁抵抗
 「絶縁抵抗」という用語は、JIS B0155-1986「工業プロセス計測制御用語及び定義」、同C5602-1986「電子機器用受動部品用語」などで定義されていますが、概ねいずれの場合も、絶縁された回路または導体間(以下、絶縁区間と呼ぶ)の電気抵抗値を表すとされています。
 エム・システム技研の「コンパクト変換器みにまるシリーズ」アナログ形直流信号変換器(形式:M2VS)の仕様書中での表現例を表1に示します。入力、出力および電源の各回路間の抵抗値を示しています。通常はDC500Vの電圧によって抵抗値を測定します。ただし、製品により絶縁区間が異なり、一部の製品では異なる電圧、たとえばDC100Vで絶縁抵抗試験が実施されている場合があります。いずれの場合も、製品ごとの仕様書に適用する絶縁区間と試験電圧が記載されていますので、ご確認願います。

2.耐 電 圧
 「耐電圧」という用語は、使用する状況によってその定義が異なってきます。たとえば、上記のJIS C5602-1986でコイルや変成器(トランス)に適用する場合は、絶縁破壊を起こさずに規定時間印加できる電圧を表しますが、コンデンサに適用する場合は、単に規定の電圧に耐える能力を表します。なお、JIS B0155-1986を含め、一般的には上記のコイルおよび変成器と同様の定義が採用されています。エム・システム技研の仕様書でも単に「耐電圧」(Withstand Voltage)と表記した場合は、絶縁区間に規定時間印加しても、絶縁破壊を起こさずに耐えうる電圧を示します。なお、この定義に基づき「絶縁耐力」あるいは「絶縁耐圧」(Dielectric Strength)注)と呼ばれることもあります。
 耐電圧試験では、絶縁区間に試験電圧を印加して絶縁破壊が起こらないことを試験しますが、エム・システム技研製品では、試験電圧を1分間印加し続け、規定値以上の漏れ電流が生じるか否かによって合否を判断しています。たとえば、表1のM2VSのように「耐電圧:AC2000V 1分間」と記載されている製品は、絶縁区間にAC2000Vを1分間印加できますが、それ以上連続的に印加し続け得ることを保証するものではありませんので、ご承知願います。
 紙幅の関係で、十分に説明しきれなかった点もあります。より詳しい説明をご希望の場合は、遠慮なくエム・システム技研ホットラインまでお問い合わせください。 ■

注)エム・システム技研の英文仕様書では、「Dielectric Strength」を用いています。

みにまるは、エム・システム技研の登録商標です。

【(株)エム・システム技研 開発部】
 
 
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