1998年7月号 | ||||||||||
自動制御入門 第16回操 作 部(その1) | ||||||||||
松山技術コンサルタント事務所 松山 裕 | ||||||||||
12.操 作 部 第9回にて説明したように、自動制御システムは調節計のほか、検出部と操作部によって構成されています。操作部は調節計の出力信号を受けて、対象プロセスを操作する機器です。もしこれがうまく機能しなければ、いかに優れた調節計でもただの箱にすぎないことになります。以下、操作部の基本的な考え方に重点をおいて説明します。 12.1 操作対象と操作部の種類 操作部の操作対象の大部分は、気体・液体および蒸気です。これらをまとめて以下流体といいます。流量制御はもとより、圧力・液面・成分の各制御は、すべて流体を操作します。ただし温度制御だけは、流体操作以外に電気エネルギーの操作も広く使用されています。これにはリレー・サイリスタなどが使用されます。 流体を操作する方法としては、大きく分けて3種類あります。一番多く用いられるのが、流体が流れている管路内に可変絞りを入れて、流量を変化させる方法です。この可変絞りには調節弁が一般に使用されます。しかし調節弁は、必ず圧力損失を発生させるので、ここで流体エネルギーの損失が生じます。これを避けるため、最近はポンプ・ブロワの回転数制御もかなり用いられています。詳しい説明はあとで行いますが、簡単には電気回路にたとえるとわかりやすいでしょう。図12.1においては、可変抵抗器を操作して負荷R0(抵抗のみとします)に流す電流を変えています。この場合、可変抵抗器および負荷に発生するジュール熱はI2(R+R0)です。一方、図12.2では電源電圧を変化させて、負荷に流す電流を変えています。この場合、負荷に発生するジュール熱はI2R0です。したがって同じように電流を変えるのに、図12.2の方法ならエネルギー損失はI2Rだけ少なくてすむことになります。 流体を操作するもう一つの方法は、ポンプ(またはブロワ)の台数を加減する台数切換制御です。 以上述べたことをまとめると、表12.1のようになります。 12.2 調 節 弁 (1)調節弁による流量操作の原理 調節弁の内容について説明する前に、管路内に調節弁を入れたときの、調節弁の開度と流量の関係について考えてみましょう。 図12.3にポンプ・配管系の例を示します。この系の配管各部における圧力分布も一緒に示してあります。 これを見ると、ポンプで発生した圧力差(図では昇圧と示してあります)は、配管部および調節弁での圧力損失(これらは、流量によって変化します)と、下流側タンクへ液体を上げるための圧力差および上流側・下流側タンク間の圧力差(これらは、流量によってほとんど変化しません)の合計に等しいことがわかります。逆にいえば、これらの圧力損失・圧力差の合計と、ポンプで発生した圧力差が等しくなるように、流量が決まるということです。この関係を求めるには、ポンプの特性が重要になります。 一般の工業用には、渦巻ポンプがもっとも多く使用されています。渦巻ポンプは、流量ゼロのとき吐出圧力が最大で、流量が増加するにつれて吐出圧力が減少する特性をもっています。一方、配管部および調節弁での圧力損失は、流量の自乗に比例して増加します。また、調節弁での圧力損失は、同一流量でも弁開度が大きいほど小さく、弁開度が小さいほど大きくなります。 以上により、このポンプ・配管系の流量は、図12.4のA・B点に示される値に決まります。A点は調節弁全開時を示し、流量はQ1となります。B点はたとえば調節弁開度60%時を示し、流量はQ2となります。ここに表示されている静圧損というのは、下流側タンクへ液体を上げるための圧力差と、上流側・下流側タンク間の圧力差の和です。またA点における調節弁の圧力損失が零ではなくある値を示しているのは、通常の調節弁では全開時でも若干は圧力損失を発生させているためです。この図より、調節弁開度が小さくなると、全管路の圧力損失+静圧損の曲線とポンプ特性の交点は左側に移動しその結果、流量が減少することがわかります。 (2)調節弁の構造 空気圧式調節弁の代表的な構造例を、図12.5に示します。調節弁の上部より空気圧が加えられると、ダイアフラムにその面積と空気圧の積に相当する力が発生し、スプリングの力に抗してバルブプラグを押し下げます。このプラグの下への移動により、プラグとシートリングの間の隙間が狭くなり、流体抵抗が増加します。プラグの上部がシートリングの上部に接すると、弁は全閉となります。この形の弁を、プラグの形から玉形弁またはグローブ弁といいます。このプラグの形状を加工することにより、各種の流量特性をもたすことができます。 この図で、プラグとシートリングが2組あるのは、流体からの圧力を上下のプラグで受け、ほぼ相殺してプラグを動かす力を小さくするためです。これを複座弁またはダブルシート弁といいます。一方プラグとシートリングが1組のものは単座弁またはシングルシート弁といいます。単座弁では、プラグを締め切るのに大きな力が必要ですが、締切時のもれがほとんどないという特長があります。 ■ ◆ 参考・引用文献 ◆ 1)松山 裕:流体操作技術、省エネルギー、Vol. 45、No. 10、p. 90~96(1993) 2)松山 裕:だれでもわかる自動制御、省エネルギーセンター(1992) |
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