1999年8月号 | |
計装豆知識変換器の小形化とタンタルコンデンサ |
変換器を小形化するための検討項目として、下記の3点が考えられます。 (1)SMT(表面実装技術)による回路設計を行う。 (2)発熱を抑えるため、消費電力を小さくする。 (3)大容量コンデンサとして、アルミ電解コンデンサではなく比較的小形のタンタルコンデンサを使用する。 今回は(3)に絞って、エム・システム技研の設計方針を説明します。 タンタルコンデンサとアルミ電解コンデンサ タンタルコンデンサ(以下タンタルと略称)とアルミ電解コンデンサ(以下アルミと略称)を比較すると、一般的に下表の特長があります。 耐用寿命と故障率 (1)耐用寿命:修理系の故障率が著しく増大し、経済的に引き合わなくなるまでの期間。(JIS Z 8115) (2)故障率:ある時点まで動作してきたアイテムが引き続く単位期間内に故障を起こす割合。(JIS Z 8115) (3)耐用寿命と故障率(図1) 設計方針とその背景 1.電源回路以外の設計 小形化するためには、表1からタンタルの方が有利といえます。よって電源回路以外では、タンタルを積極的に使用します。ただし、故障率を低減するために、印加電圧の軽減に十分配慮しています。 2.電源回路の設計 電源回路を小形化するためにはタンタルを使うとよいのですが、エム・システム技研では、次に挙げる様々な理由からアルミを使用しています。 (1)アルミの短所である耐用寿命が有限である点については、次のように解決しています。すなわち、設計規格で原則として105℃で5000時間以上の寿命をもつアルミを使用するように規定しています。このランクはアルミの中では高級品の部類に属します。変換器が常温で使用された場合、このランクのコンデンサには20年以上の耐用寿命があります。一方、エム・システム技研は、変換器の耐用寿命について、お客様に10年を保証しています。したがって、アルミの寿命は有限ですが、エム・システム技研が使用するアルミは、変換器の耐用寿命内においては半永久と考えることができます。つまり、耐用寿命についてはタンタルと同一性能であるといえます。 (2)故障率については、メーカーのデータおよびエム・システム技研のフィールドデータからみて、タンタルはアルミより劣っています。タンタルの故障率を低減するためには、印加電圧の軽減および回路インピーダンスの増大が必要ですが、電源回路については、この2点はともに実現が困難です。 (3)タンタルは突入電流に対して弱いため、電源整流回路の平滑用や低インピーダンスのバイパス用としては使用できません。 (4)タンタルの故障モードは短絡モードなので、故障時には過大電流が流れ、最悪の場合には発火します。これは絶対に避けなければなりません。一方、エム・システム技研が使用しているアルミの使用実績は何百万個にもなりますが、正常な使用における短絡モードのフィールド故障は皆無です。 ま と め エム・システム技研では、以上の考え方の下に、変換器の電源回路の設計において、故障率低減および安全性を優先して、アルミを採用しています。すなわち、変換器の小形化のため無理にタンタルを使用することは避けています。 ■ |
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