1999年3月号
ISA EXPO 98に見る計測制御の動向(3)
エム・システム技研 顧問/米国MKKインターナショナル 社長 
風早  正宏 
3.技 術 動 向(前回につづく)

3.ソフトウェア会社
 ソフトウェア会社は企業動向と技術動向から観察する必要があります。PC 時代の波に乗って、起業家精神に長けたプログラマーが小資本で開業できるソフトウェア会社を無数に作って出展しています。F-R に売った Intellution、Siebe に売った Wonderware の成功話にあやかろうとしています。アメリカ資本主義市場経済の活力を目の当たりにするようです。成長を遂げながらまだ独立しているソフトウェア会社に Total Control Products, Inc.と ICONICS, Inc.があります。
 このソフトウェア会社の輩出は、全体の流れとして動向になっています。しかし、これらの創業者は何か特長ある(必ずしも技術主流ではない)ソフトウェア製品の会社を育てて、それを売って創業者利益を得るのを目的にしていますから、個々の製品を捉えて技術動向と受け止めるわけにはいきません。概して、実時間制御ソフトウェアのような難しい製品は手掛けていません。
 製品でなく会社も売らんかなというのですから、ソフトウェア会社のブースは飾り付けが派手で音も賑やかです。
 Wonderware の HMI の商品名は InTouch でソフトウェア会社の典型的な製品です。日本では住金制御エンジニアリング社が販売しています。InTouch にはエム・システム技研製品が直接つながるようにドライバが用意されています。

4.複合機能製品と機能の現場分散
 1995年に Moore Process Automation が差圧変換器と PID 計器ブロック(function block)と電空変換器を一体にした2線式現場調節計を発売しました。HART のデジタル信号で流量信号を計器室に伝送します。この調節計はカナダの Shell 社だけでも2,000台使われていると聞いています。これは複合機能製品の走りでした。他社も追従していて同様の製品を見ることができます。
 HART プロトコルにしろ F-Fieldbus にしろ μP を使っています。μP とソフトウェアを使って数種の機能を1つの外函に内蔵した複合機能製品が現れてきました。F-R の製品だけでも、4、5種類あります。差圧変換器に測温抵抗体(RTD)が接続されています。この変換器は HART あるいは F-Fieldbus を使っていて、容積流量、流管内の静圧、流管内の温度、温度圧力補正をした質量流量を測定します。質量流量の計算ではオリフィスの熱膨張の補正もしていてコリオリ流量計に匹敵する精度があると標榜しています。RTD 2個を接続した温度変換器があります。これは温度差発信器です。
 Flowserve Valtek には数年前から複合機能の調節弁があります。モデル Logix 1200 です。これは、弁の圧力降下、すなわち差圧から流量を計り、PID 制御計算をして、調節弁空気モータを駆動する自動調節弁です。流量信号は HART 信号で伝送します。
 Moore、F-R、Valtek のブースに限らず、ほかにも複合機能製品があります。山武のPID内蔵ポジショナも複合機能製品の1つです。
 このように、従来は計器室に設置した DCS の機能が現場へと分散されてきています。

5.D C S
 Pentium PC が、DCS の主要部であった workstation にとって変わってきています。Motorola の μP も使われています。DCS の機械的大きさが小さくなっています。DCS の頭文字Dは distributed(分散)の略ですが、DCS の現場への分散がますます進んでいます。
 ソフトウェア会社は最初から PC ベースの HMI を主要製品にしていました。2年前、ISA EXPO 96 で主要メーカーも自社 DCS 用に PC ベースの HMI を一斉に展示しました。まず、既存 DCS の HMI 増設に多く採用されました。その後、売上げは伸びています。
 また、DCS と PLC の差が時とともに少なくなり、相互に得意とする市場へ割り込みあっています。
 再び F-R の DeltaV をみると、19インチ巾で、DIN レールで設置できるようになっていて、制御室用というより現場機器の観になっています。まるで小型の PLC のようです。
 案の定、F-R は PLC を製品に持っていなかったので、代理店が勝手に A-B や Modicon の PLC を取扱うのを放任していましたが、最近、その取り扱いを破棄するように伝えたそうです。替わって DeltaV に PLC 機能を入れて PLC としても販売しようとしています。
 ちなみに、PLCソフトウェアを PC で実行する計器を「ソフト PLC」と呼び、2、3年来の PLC 動向になっています。SoftPLC Corp.と呼ぶ会社があり、ブースを出しています。

6.Remote I/O(リモート入出力装置)
 Remote I/O は、DCS、PLC の本体から切り離して離れた所に設置した入出力部です。変換器、操作端、接点信号を現場においた Remote I/O でまとめて扱い、これと計器室に設置した DCS や PLC の本体とを計器バスで接続して、配線コストを下げる方法は、すでに使われた方もあると思います。10年以上前から盛んになった技術です。しかし、Remote I/O は、DCS や PLC の一部のように展示されている場合が多くて見逃しがちです。
 DeltaV には、Remote I/O の接続口として、ModbusとRS-232-C 用にシリアルモジュールを、 F-Fieldbus 接続に Fieldbus モジュールを用意しています。
 エム・システム技研では、 DeviceNet を使ったオムロン PLC 向けM2BD Remote I/O(オムロンの DeviceNet の商品名は CompoBus/D)と三菱電機 PLC 固有のプロトコル CC-Link を使ったM2BC Remote I/O を発売しています。今回のブースに展示しています。

7.現場用 CRT と LCD パネルと PC
 数々の計測制御機能が現場へと移動し、DCS も現場機器の性格を強くするに従い、現場向きにした CRT、LCD パネルと PC を発売する会社が増加しました。Axiom Technology, Inc.、Azionix、Citadel Computer Corp、Commark Corp、Daisy Data Inc.、Dolch Computer Systems, Inc.、Intecolor、IBM Corpなどです。IBM 以外あまり大きなブースは構えていませんが、EXPO に毎回出品しています。
 Dolch のモデル NotePACⅡ は堅牢な、水がかかってもよいケースに入った現場用 Notebook Computer です。

4.新製品コーナー

 ISAは会場に新製品ショーケース(New Product Showcase)と啓蒙センター(Innovators Center)と呼ぶ一角を設けています。主な新製品を一か所で見られて便利です。このように、ISAは新製品開発をメーカーに促しています。
 「新製品ショーケース」には59社が新製品を出しています。これらはメーカーでの新製品で、必ずしも当業界としての新製品ではありません。
 業界でも新しいとメーカーが自負する新製品は「啓蒙センター」に出展してあります。31社が出展しています。ここの出展品には審査があって、優れた製品が表彰されます。今年はBailey Fischer&Porterの2線式電磁流量計が選ばれました。
 2線式電磁流量計は同じ口径の従来型電磁流量計に比較すると多少高価ですが、ユーザーの場合、全設置コストを考えると経済的です。この観点で同製品が評価されると広く採用されると期待します。

お わ り に
 エム・システム技研は、ユーザー、代理店の方々を対象として毎回「ISA EXPO視察研修ツアー」を実施しており、今回も「ISA EXPO 98視察研修ツアー」を実施しました。
 このツアー参加者のために「ISA EXPO 98のご案内」をあらかじめ作成配布しましたが、本文はこれに加筆して、読者の皆様と展示会場を歩くかのように現地報告をしました。         ■


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