1999年7号 | |||||
お客様訪問記九州薩摩半島の南端、山川地熱発電所で
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(株)エム・システム技研 大阪営業部 | |||||
山川地熱発電所がある山川町は、鹿児島県、薩摩半島の南端近くに位置し、琉球との貿易やカツオ漁業の基地として古くから栄えた町です。当発電所は、海岸に近い田畑に囲まれ、開聞岳の眺望が美しいところにあります。この地域は霧島屋久国立公園に近く、四季の変化に富む雄大な自然に加えて天然砂蒸し温泉や新鮮な魚介など多彩な魅力を備えており、年間を通して多くの観光客が訪れます。また、この地熱発電所は海抜43mという低地にあり、全国的にも珍しいものです。この発電所で造られる電気は山川町、開聞町、そして指宿市の一部の家庭約15,000世帯に供給されています。 今回は、発電所の蒸気生産部門を担当しておられる九州地熱(株)の佐久間所長と、同設備の設計に携わられた日本鋼管(株)の松村係長を九州地熱(株)鹿児島事業所にお訪ねし、地熱発電設備についてお話を伺いました。 [エム・システム技研、以下エムと略称]このような雄大で自然環境の良い低地に、地熱発電所があるのにびっくりしました。資源の乏しい日本では、地熱発電は貴重なエネルギーだと思います。まず、地熱発電のしくみについてご説明ください。 [佐久間]地熱エネルギーは、火山の多い日本に豊富に存在する純国産のエネルギーといえます。地熱の元は火山で見られるマグマ(岩石が高温になって溶けたもの)ですが、地下の非常に深いところには、そのマグマが未だ冷えずに熱を放出している場所があります。そのマグマの熱で地下に浸透した雨水や海水が温められ、高温になって地層の中に蓄えられた場所を地熱貯留層といいますが、山川発電所では地下1,500~2,500m付近にこの層があります。そこに生産井(せいさんせい)という井戸を掘り、蒸気を取出し、その蒸気でタービンを回して発電するのが地熱発電です。生産井からは蒸気とともに熱水が出てきますが、これを気水分離器で蒸気と熱水に分け、還元井(かんげんせい)という井戸を掘り、再び地下に返します。これを熱水還元といいますが、地下に戻された熱水はマグマの熱で再び温められながら地熱貯留層に戻り、再び生産井から蒸気となって噴出してくるといわれています。発電に使われた蒸気は、復水器に導かれ冷却水により凝縮します。そのため復水器の中は真空に近い状態となり、タービンの熱効率が上がります。このとき冷却水の温度も上がるので、これを冷却塔で再冷 却し、再び復水器の冷却に使用します。九州地熱(株)は、地熱貯留層を発見し、生産井や還元井となる井戸を掘って発電に必要な蒸気を生産し、九州電力(株)に販売しています。発電は九州電力(株)が担当しています。このような地熱発電事業は、出力は小さいのですが電気事業ですから、ユーザーに対する電気の安定供給が義務づけられています。そのため、使用する装置については常に安全で信頼性の高いことが要求されます。 [エム]地熱発電は、火山国である我が国にあって、豊富な地熱という資源を利用する純国産エネルギーとして貴重な存在であることを再認識しました。ところで、この蒸気生産設備では、制御弁の開度モニタリング用として、エム・システム技研の「2線式ポジション発信器」が使用されています。この製品をどのように有効に利用しておられるのか、当設備の建設に携わられた日本鋼管(株)の松村係長にご説明をお願いします。 [松村]日本鋼管(株)は、日本の地熱発電における地熱蒸気・熱水処理システムのパイオニアで、我が国初の松川地熱発電所で配管・機器システムの設計・施工を担当して以来、他社にさきがけ日本の地熱発電をリードしてきました。ご存じのとおり、地熱水には硫化水素、硫黄、塩分などが含まれているため、配管機材、設備機器類に様々な悪影響を与えます。とくに流体を制御するバルブにとっては苛酷な条件になります。配管内壁にはスケールが堆積し、制御弁が円滑に動作しなくなる恐れがあります。そのため、使用している制御弁の動作を常時監視する必要があります。 エム・システム技研の「2線式ポジション発信器(形式:VOS、VOS-R)」を制御弁の出力軸に取付け、中央監視室(DCS)から制御弁の動作を常にモニタリングしています。それによって制御弁の異常による突然のトラブルを未然に防ぐことができ、生産設備の運転を正常に保つことができるわけです。この設備に使用されている制御弁は、本山製作所製「モトシールⅡ地熱仕様バタフライ弁」で、タービンに送る蒸気圧(常圧10kgf/cm2 )の圧力調整弁、熱水タンクの液位調整弁として使用されています。エム・システム技研の「2線式ポジション発信器」は、地熱仕様の対策をとっていただいており、苛酷な条件に対しても耐久性に優れた製品です。 [エム]クリーンな純国産エネルギーとして注目されている地熱発電について貴重なご説明をお聞かせいただき、ありがとうございました。現在、我が国で運転されている地熱発電所は16箇所であり、全発電能力は約52万8千kWですが、2010年までには280万kWに発電能力を増やしたいとのご計画がおありとのことですね。 資源の少ない我が国にあって、地熱発電は有望な純国産エネルギー源です。今後も地熱発掘および蒸気生産設備の建設に、ご尽力いただきたいと思います。本日は誠にありがとうございました。 ■ |
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