1999年9月号

警報設定器に新機種が続々登場!

(株)エム・システム技研 開発部
 
は じ め に

 いろいろな分野で幅広くお使いいただいている警報設定器に、多数の新機種が追加されます。その中から、サムロータリ(THUMB ROTARY)設定形警報器(アラームセッタ 形式:ASD1)と温度監視を主目的に開発したデジタル設定形直流・温度センサ入力警報器(形式:KS2V、KS2TR)をご紹介します。

アラームセッタASD1の特徴
 サムロータリ設定形警報器(アラームセッタ 形式:ASD)は、開発後すでに7年が経過し、現在ではエム・システム技研の数十機種ある警報器の中でも、とくに良い評価をいただいている警報器の一つになっています。今回ご紹介するASD1はASDの操作性を踏襲しつつ機能を拡張した新製品です。
 1.操作性重視
 現行機種であるASDで最も高い評価をいただいている点は、設定値の視認性と操作性に優れたサムロータリスイッチを前面パネルに設けたことです。ASD1では、同じサムロータリスイッチを採用するとともに次の諸機能を併せ備えています。

2.拡張された機能
●第1・第2警報の警報設定値に、それぞれ独立したヒステリシス幅を設定できる。
●上限・下限の警報動作を選択できる。
●警報動作時にリレーを励磁状態にするか、非励磁にするかを選択できる。
●警報判定から警報動作(リレー動作)までの遅延時間を選択できる。
●電源を投入してからリレーが動作するまでの時間を選択できる。

3.従来製品との比較
3.1 前面パネル
 警報器の前面パネルには、第1・第2警報のそれぞれ独立した警報値設定用のサムロータリスイッチ(0~99%)およびリレー動作表示ランプ(リレー励磁時点灯)のほかに、新しくヒステリシス幅設定用ロータリスイッチを用意しました。ヒステリシス幅設定用ロータリスイッチで“0~9”の数字を選択すると、その選択した値が警報動作のヒステリシス幅になります(単位は%。なお、“0”を選択したときは0.5%になります)。
3.2 容易な警報設定値の確認
 ヒステリシス幅を変更できる機種としては、すでにA・UNITシリーズがありますが、この場合は、警報設定値およびヒステリシス幅ともトリマ可変抵抗器によって設定するため、動作させてみないと動作点を正確に確認することができませんでした。これに対しASD1では、前面パネルを見れば一目で警報設定値、ヒステリシス幅を確認することができます。
3.3 警報動作の選択
 上限警報・下限警報の選択、警報動作時にリレーを励磁状態にするか非励磁にするかを選択する機能は、エム・システム技研の警報器では多くの機種で採用しています。しかし、従来のASDでは製品設計の都合で特殊仕様扱いになり、価格加算をお願いしていました。ASD1では、上限警報・下限警報の選択、警報動作時にリレーを励磁状態にするか非励磁にするかの選択を、ご注文時にご指定いただけるようになり、標準価格でご納入します。
3.4 動作遅延タイマを採用
 リレー動作遅延機能は、従来デジタル設定形2点/4点警報器デジアラーム(形式:AS4F)のみの対応でしたが、ASD1についてもご注文時に指定いただけるようになりました。
3.5 電源投入時の遅延タイマ
 電源を投入してから警報動作までの時間は、エム・システム技研の主要な警報器の場合約2秒と、固定値になっていますが、ASD1では、ご注文時に指定いただけるようにしました。
*   *   *
 ASDの開発を手掛けて以来、今日までにお客様からいただいたご要望の多くを実現することを目指して、ASD1は設計されました。ぜひともASD1が適した用途にご使用いただきたいと期待しています。
【ASD、ASD1開発担当】

KS2V・KS2TRの特徴
 48×48mmのパネル計器の形状をした2点警報器として、1~5Vの直流電圧信号を入力とする製品(形式:KS2V)と測温抵抗体、熱電対の温度センサを入力信号とする製品(形式:KS2TR)を用意しました。
1.注文時に、仕様決定で悩まない警報器
 警報動作に関する設定はすべて前面パネルで操作できます。ご注文時に決める必要がある条件は、供給電源が直流電源(DC24V)か交流電源(AC85~264V)かだけです。
2.一般的な温度センサすべてに対応している警報器
 KS2TRは、入力できる温度センサとして、熱電対ではJ、K、R、B、S、T、E、N、Wre5-26に、測温抵抗体ではPt100、JPt100にすべて対応しています。
3.現場でできる設定変更
 以下に挙げる設定は、すべて前面パネルでのボタン操作によって行なえます。
●各第1・第2警報の設定値
●運転中の前面パネルに警報値を表示するか、入力値を表示させるかの設定
●各第1・第2警報の動作ヒステリシス(0~102%)
●スケーリング(-1999~9999)(KS2V)
●入力温度センサの種類(KS2TR)
●入力温度レンジ(KS2TR)
●入力温度の単位(KS2TR)
●各第1・第2警報の動作モード(上下限、警報時のリレー励磁・非励磁)
●各第1・第2警報の動作遅延時間(0~10秒)
●入力フィルタの時定数(5~900秒)
●ZERO・SPAN調整(±50%)
●電源ON遅延時間(0~20秒)
4.前面パネルの表示
 電源投入状態を示すランプと警報動作中に点灯するランプを備えています。また、デジタル表示で警報設定値や入力信号の値を表示することができます。
*   *   *
 デジタル設定形2点警報器デジアラームとしての利便性、取付の多様性そして低価格を実現し、多様なアプリケーションをもつ温度監視の分野で幅広くご使用いただける製品に仕上げたつもりです。
【KS2V、KS2TR開発担当】

お わ り に
 今回ご紹介した警報器は、エム・システム技研が用意している警報器シリーズのごく一部にすぎません。なお、今後も安価な機種、高機能の機種、新しい機能を備えた機種を揃えていく予定です。機種選定でお悩みのときには、エム・システム技研のホットラインまでお気軽にご相談ください。ご用途に応じ、最適な製品をご用意したいと思います。 ■
*デジアラームはエム・システム技研の登録商標です。


開発者のひとりごと

警報設定器の開発逸話
 超小形版アラームセッタ(形式:M8SED)の開発を開始した経緯は以下のとおりです。
 新しい警報設定器KSEDのためにサムロータリスイッチのサンプルを取り寄せて「あーでもない、こーでもない」と考えているときに、同僚が新しいケースができたと見せびらかしに来ました。私はその超小形変換器用ケースを1つもらって、気分転換の余興に前面にナイフで穴をあけて手元にあったサムロータリスイッチ2セットがきっちり入るようにしました。さらに小さな穴を2つあけてLEDランプを付けました。もちろんこんな小さい警報器を作るつもりはなくて、「こんな小形の警報器(しかもサムロータリスイッチ設定で2点警報)があったらすごいな」、「社長に見せたらアカンで、『すぐ、作れ!』となるで。」と同僚と冗談話をしたものでした。
 しかし、「天網恢々疎にして漏らさず」それを横目で見ていた開発部長が、次の日の午後、急いだ様子でやって来て「昨日、作っていたヤツちょっと貸して」とその工作物を持って行ったと思ったら、その日の夕方には作ることに決定していました。どうも企画会議の席で社長から超小形の警報器について意見を求められて、その場で格好の形状サンプルにされてしまったようです(開発部長:アイデアは常に現場にあり。それを生かしてこそ会社経営である)。
 「こんなのあったら面白いのに」の面白半分(残りの半分は技術者の羨望)で作った雛形は次の日には開発決定し、「こんな小さい箱にそれだけの機能が入るはずないだろう」という思いが、「何とかして入ったら面白いのに」となり、さらに「何としても入れてやろう」と決心したら、思ったより早く完成してしまいました。しかも、コストもそこそこ安くでき上がったので、「無理して小さくして高くついた」と後に悔いを残さずに済みました(開発部長:同機種の価格設定は廉価とし、大口物件にも対応できます)。
 しかし、どの部品より高くついているのがケースの穴あけ加工費というのには、開発完了した今でも悔しさが残ります。
【臼井 宏一:(株)エム・システム技研 開発部】
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