1999年11月号 | |||||||
インバータ対応CT変換器
| |||||||
(株)エム・システム技研 開発部 | |||||||
は じ め に 省エネルギーが叫ばれるようになって、インバータの需要が急速に増加し始めてから久しいですが、今年4月からは地球温暖化防止のための省エネ法が施行され、その需要増はさらに加速してきています。家電機器については、エネルギー消費の大きいエアコンを始めとして、あらゆるところにインバータが使用されてきています。また工場では、主にモータの制御に、(汎用)インバータが多数使用されています。 以前から、これらインバータの電流、電圧、電力などの電力諸量を計測したいとのご要求を多くのお客様からいただいてきました。しかし残念ながら、従来の工業用変換器によっては、必要とされる性能を保証することが困難でした。 今回ご紹介するCT変換器(形式:CTH)は、従来の変換器のケースに収納できる程度に小形で、しかも広い周波数帯域の計測が可能なトランスを採用することで、インバータ計測を実現したプラグイン形のCT変換器です。外形寸法とピン配列については、従来からご愛用いただいているCT変換器と一致させていますから、変換器単体の差替えで容易に機能を向上できます。 図1にインバータ対応CT変換器の外観を示します。 1.入力段はトランス エム・システム技研のCT変換器では、従来からCT二次側の5A交流電流信号を、トランス絶縁して電子回路に取込んできました。しかし、一般的な珪素鋼板を使用した補助CTでは、インバータなどの電流波形を計測するために必要な、広い周波数帯域を確保できませんでした。なお、変換器の入力段に周波数特性に優れたシャント抵抗器を使用して、電流信号を電圧信号に変換した後、交流入力変換器を使用することで、広い周波数帯域をもつ変換器の製作が可能ですが、シャント抵抗器には基本的に焼損などの危険があるため、その商品化は従来見送ってきました。 今回、DCから200kHzまで入力可能で、かつ従来の変換器(M・UNIT)のケースに収納できる小形の補助CTを採用することによって、トランス入力にもかかわらず4Hz~200kHzという広い周波数帯域をもつCT変換器をご提供できるようになりました。 インバータ対応CT変換器(形式:CTH)のブロック図を図2に示します。 2.優れた周波数特性 今回開発したCT変換器は、前述したように4Hz~200kHzという広い周波数帯域(-3dB)をもっています。具体的な周波数特性を図3に示します。また、7Hz~100kHzの範囲での精度は±7%、20Hz~1kHzでは±0.3%であり、一般商用周波数50/60Hzだけでなく、航空機関係の電源で使用される400Hzの場合にも十分に高精度な変換を実現します。また当然のことながら、演算には広帯域実効値演算方式を採用していますから、どのような歪み波形にも対応できます。 このような優れた周波数特性によって、種々の交流電流波形を高精度で計測することが可能になりました。汎用インバータの一次電流波形の例を図4に、二次電流波形の例を図5に示します。インバータの一次電流波形は、ACやDCフィルタを用いることである程度までは改善することができますが、完全に高調波を除去することはできません(ただし、最新機種のインバータには、通産省資源エネルギー庁から出された高調波抑制対策ガイドラインに則り、アクティブフィルタを本体に内蔵することによって、ほとんど歪みのない波形を得ている機種もあります)。また、二次側にはモータを駆動させている電流のほかに、インバータが発生するキャリアと呼ばれるノイズ成分(5kHz~15kHz程度)が含まれています。このキャリア成分を除去できるスイッチ(2kHzフィルタ)を変換器本体に設けていますから、基本成分だけの計測も可能です。また、変換器出力については、4Hz入力時の出力リップルも±0.5%以下になるように設計しています。したがって、コンピュータに信号を取込む場合でも、サンプリングのタイミングによるデータのふらつきなどは、ほとんど問題にならないレベルです。図6に溶接機の 電流波形の例を示します。この電流波形も、第三高調波30%というような表現で呼びにくいような波形をしています。しかし、広帯域の周波数特性をもつインバータ対応CT変換器(形式:CTH)を使うことによって、このような波形のものをも高い精度で計測できるようになりました。 お わ り に 以上、インバータ対応CT変換器(形式:CTH)の特徴について説明しました。広帯域の入力特性を生かして、様々な電流波形をコンピュータに取込むことを可能にした変換器と言えます。 ただし、CTHは定格入力電流がAC5Aだけで、大電流は入力できません。また、一般の計器用変成器を組合せると、変成器自体の周波数特性による制限のため、期待した性能が確保できない場合も出てくる恐れがあります。残念ながら、CTHと同等の周波数特性を有し、かつ二次電流が5AというCTは現在までのところありません。 この問題を解決するため、メインCTに特殊センサを採用し、一次電流としては30A~3kAまで入力可能で、しかもCT比を7段階に設定できるCT変換器を現在開発中です。また、4Hz~7kHzの周波数帯域を確保することによって、低周波数で使用される汎用インバータにも対応できるように開発を進めています。 どうぞ、エム・システム技研の電力関係変換器の新製品に、今後ともご期待ください。■ |
| ||||||
|