2002-2003計装豆知識
- NEMA規格の電気機器用容器/2003.12
- 特定小電力無線局/2003.11
- 1ポート形と2ポート形避雷器/2003.10
- USB/2003.9
- IPコード/2003.7
- DoPa/2003.6
- 高調波について/2003.5
- 測温抵抗体の導線方式/2003.4
- ダイヤルアップルータとブロードバンドルータ/2003.3
- 交流の測定/2003.2
- ロータリエンコーダ/2003.1
- セルシン/2002.12
- IPv6/2002.11
- ADSL/2002.10
- 避雷器の応答時間/2002.9
- ネットワークトポロジ/2002.8
- アイソレータの必要性/2002.7
- Ethernetケーブルとハブ(HUB)/2002.6
- 一般電話回線/2002.5
- 携帯電話とメール機能/2002.4
- テレメータ装置と専用電話回線/2002.3
- TCPとUDP/2002.2
- インターネットとイントラネット(2)/2002.1
エムエスツデー 2002年02月号
TCPとUDP
TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)はインターネットやイントラネット上で広く利用されている通信プロトコルの一種です。その起源となったのは、1969年に米国の研究機関や大学を集めた広域ネットワーク用に開発されたARPANETと呼ばれるプロトコルです。その後、研究グループにより改良や標準化が進められ、1975年にはTCP/IPとしての基本的な仕様が確定しました。1983年にはUNIXシステムに搭載され、本格的な運用が始まりました。
TCP/IPのプロトコル
コンピュータ同士が通信を行う場合の各種の「取り決め事」を通信プロトコルといいます。それらの「取り決め事」は通信における役割の内容によって分割、階層化されており、その国際標準モデルが、ISOの提唱する「OSI(Open Sytem Interconnection)参照モデル」です(表1参照)。OSI参照モデルは通信プロトコルを理解するための良い雛形となります。
表1 OSI参照モデルとTCP/IPプロトコルモデル
OSI参照モデル(7階層モデル) | TCP/IPモデル (4階層) |
TCP/IPモデル (5階層) |
||
第7層 | アプリケーション層 | どのような通信サービスを行い、何を実現するか? (アプリケーションの種類に関する規定) |
アプリ ケーション層 |
アプリ ケーション層 |
第6層 | プレゼンテーション層 | どのような表現形式で送るのか? (データの種類や送信ビット数に関する規定) |
||
第5層 | セッション層 | どのような対話モードで送るのか? (通信モードや同期方式に関する規定) |
||
第4層 | トランスポート層 | 相手に正確に届いたかどうかの確認方法は? (送受信確認やアプリケーションの識別に関する規定) |
トランスポート層 (TCP/UDP層) |
トランスポート層 (TCP/UDP層) |
第3層 | ネットワーク層 | 相手の識別アドレスは?通信網をどう使うのか? (通信経路の選択や識別アドレスに関する規定) |
インターネット層 (IP層) |
インターネット層 (IP層) |
第2層 | データリンク層 | 伝送路の確保と端末の識別方法は? (通進路の確保やエラー訂正に関する規定) |
ネットワーク インタフェース層 |
データリンク層 (MAC層) |
第1層 | 物理層 | 伝送路に情報を送る媒体、方法は? (物理的な回線や機器類、電気信号に関する規定) |
物理層 |
TCP/IPのプロトコルもOSIの参照モデルと同じような考え方で階層化されていますが、OSI参照モデルでは7層に分かれていたプロトコルをTCP/IPでは5層もしくは4層に分けて考えることが一般的になっています(表1参照)。
そして、TCP/IPはOSI参照モデルのトランスポート層に相当するTCP(またはUDP)、およびネットワーク層に相当するIPの2層を中核として構成されています。
TCPとUDPの違い
コンピュータ同士の通信では、送信側から送られたデータが受信側へ伝達される際に、〈データの損傷〉、〈消失〉、〈重複や遅延〉、〈到着順序のズレ〉などを考慮する必要があります。これらの項目をチェックし、もし検出された場合は自動的に補正することによって、通信の信頼性が確保できます。TCPはデータ通信の際にこのような役割を担い、確固たる信頼性と伝達保証性を提供しています。

なお、TCPでは、データ伝達保証性を重視して、エラーチェックや再送要求などの手続きが増えるために、「高速にデータを届ける」という点において、その性能に制約を受けます。そこで、TCPの伝達保証性を省略し、代わりに高速性を重視したプロトコルとして利用されているのがUDP(User Datagram Protocol)です。UDPでは、送受信確認や再送要求といった伝達保証機能が提供されていないため、TCPに比較してやや信頼性に乏しくなります。しかし、高速性に優れているため、レスポンスが重視される通信サービスやプロセス制御また各種オートメーションの制御Busなどに用いられています(図1参照)。エム・システム技研のMsysNet用制御Busである「L-Bus」やJEMA(日本電機工業会)が推進する「FL-NET」などにもUDPが採用されています。なお、これらの制御Busにおいては、UDPの上位層であるアプリケーション層にユーザーが独自に工夫をして、実用上充分な信頼性を実現しています。ただし最近は、ネットワークの物理層として高速のEthernet(100Mbps)が普及してきたことやパソコンの処理スピードも著しく向上したため、TCPでも相当な高速性が実現できるようになっています。そのため、オートメーションの制御BusにもTCPが用いられるようになってきました。
<参考文献>
池田冬彦 他 エーアイ出版社「図解でわかるTCP/IP基本の基本」
*MsysNetはエム・システム技研の登録商標です。
【(株)エム・システム技研 システム技術部】