2002-2003計装豆知識
- NEMA規格の電気機器用容器/2003.12
- 特定小電力無線局/2003.11
- 1ポート形と2ポート形避雷器/2003.10
- USB/2003.9
- IPコード/2003.7
- DoPa/2003.6
- 高調波について/2003.5
- 測温抵抗体の導線方式/2003.4
- ダイヤルアップルータとブロードバンドルータ/2003.3
- 交流の測定/2003.2
- ロータリエンコーダ/2003.1
- セルシン/2002.12
- IPv6/2002.11
- ADSL/2002.10
- 避雷器の応答時間/2002.9
- ネットワークトポロジ/2002.8
- アイソレータの必要性/2002.7
- Ethernetケーブルとハブ(HUB)/2002.6
- 一般電話回線/2002.5
- 携帯電話とメール機能/2002.4
- テレメータ装置と専用電話回線/2002.3
- TCPとUDP/2002.2
- インターネットとイントラネット(2)/2002.1
エムエスツデー 2002年10月号
ADSL
xDSL
既存の一般電話回線のメタリックケーブルを利用して、データや映像を高速に伝送する技術の総称をxDSL(Digital Subscriber Line)といいます。最近、話題となっているADSLもxDSL技術の一つです。

xDSLでは、4kHzまでの周波数帯域を使う音声信号や、320kHzまでの帯域を使うISDN信号の場合より、高く広い帯域(ブロードバンド)を使って高速通信を行います(図1参照)。ただし、音声信号が電話網全体を経由するのに対し、xDSLの信号はユーザー(加入者)宅と通信事業者の最寄りの局との間のアクセス回線部分にだけ適用されます。
従来、メタリックケーブルでは低周波数帯域の信号しか伝送することができませんでした。高い周波数帯域の信号は、ケーブルの表皮効果で減衰が大きくなり、伝送距離が大きくなるにつれて信号が雑音に埋もれて受信が困難になるからです。しかし、最近ではA/Dコンバータの技術が進歩し、ノイズに埋もれた微弱な高周波信号からもデジタル信号を精度良く復元できるようになり、またデータの符号化処理に使われるDSP(Digital Signal Processor)素子の処理スピードも向上し、より高速な伝送が可能になりました。さらに、LSIの発達に伴って、A/DコンバータやDSL素子の生産が実用的なコストで可能になったため、xDSLの普及が始まりました。
ADSL
xDSLには様々な方式が開発されています。大別すると ①速度非対称型、②速度対称型、③超高速型の3種類があります。速度非対称型の代表がADSL(Asymmetric DSL)であり、ユーザー宅から通信事業者の局へ(上り)の伝送速度と、逆に通信事業者の局からユーザー宅へ(下り)の伝送速度が異なります。ADSLは当初VOD(Video On Demand)をメタリックケーブルで提供する技術として注目を集めましたが、最近ではインターネット通信の高速インフラとして我が国でも急速に普及しつつあります(2002年5月現在で、加入者数約300万)。
現在、日本国内で普及しているADSLには2つのタイプ(仕様)があります。1つは高速版と呼ばれるタイプで、伝送速度が最大900kビット/秒(上り)と最大8Mビット/秒(下り)です。もう一つは普及版と呼ばれるタイプで伝送速度が最大512kビット/秒(上り)と最大1.5Mビット/秒(下り)です。いずれも、極めて高速なデータ通信が可能であり、従来の電話回線を人の歩行速度とすれば、ADSL(高速版)はセスナのスピードに例えられます。ユーザーがADSLを使用可能かどうか、また、どちらのタイプが選択できるかは、地域や通信事業者の種類によって異なりますが、ユーザー宅と局までの距離が約2km以内なら高速タイプが、それ以上で約4kmまでなら普及タイプが、それぞれ使用できる目安といわれています(実際には、個々のケースで通信事業者への問い合わせが必要です)。

ユーザーがADSLを使用する場合の設備構成を図2に示します。一般電話回線に加入しているユーザー宅では、ADSLモデムと呼ばれる装置を新たに設置するだけでADSLが使用可能になり、従来の電話との併用もできます。また、ADSLでインターネット通信を行う場合には、常時接続が可能であり、最近は通信事業者やインターネットプロバイダから、安価な使用料金を特長とした、様々な契約プランが提供されています。
現在、ADSLの用途としては、個人ユーザーによるインターネットの利用がほとんどです。しかし今後は、工業計測の分野でも有力な通信媒体として、広く活用されると考えられます。
<参考文献>
「新情報通信早わかり講座」(日経BP社)
【(株)エム・システム技研 システム技術部】