2002-2003計装豆知識
- NEMA規格の電気機器用容器/2003.12
- 特定小電力無線局/2003.11
- 1ポート形と2ポート形避雷器/2003.10
- USB/2003.9
- IPコード/2003.7
- DoPa/2003.6
- 高調波について/2003.5
- 測温抵抗体の導線方式/2003.4
- ダイヤルアップルータとブロードバンドルータ/2003.3
- 交流の測定/2003.2
- ロータリエンコーダ/2003.1
- セルシン/2002.12
- IPv6/2002.11
- ADSL/2002.10
- 避雷器の応答時間/2002.9
- ネットワークトポロジ/2002.8
- アイソレータの必要性/2002.7
- Ethernetケーブルとハブ(HUB)/2002.6
- 一般電話回線/2002.5
- 携帯電話とメール機能/2002.4
- テレメータ装置と専用電話回線/2002.3
- TCPとUDP/2002.2
- インターネットとイントラネット(2)/2002.1
エムエスツデー 2003年10月号
1ポート形と2ポート形避雷器
分 類
IEC61643-1(低圧用避雷器の国際規格)に従えば、電源用避雷器は、その接続方式によって1ポート形と2ポート形に分類することができます。1ポート形避雷器は被保護機器の給電端子に並列に接続する避雷器で、エム・システム技研では単純並列接続形避雷器と呼んでいます。また、2ポート形は電源ラインに直列に接続する避雷器で、同じく直列接続形避雷器と呼んでいます。
保護性能


ここで1ポート形と2ポート形の保護性能について説明します。図1は、単純化するため、一般には複数本ある電源ラインのうち1本についての保護回路の例を示しています。(a)の1ポート形では、サージ電流が電圧制限素子VLにすべて流れるため、制限電圧νはVLの電流−電圧特性(図2)に依存します。このため、図2から分かるように、1ポート形はサージ電流が大きいと、つまり大きな雷に襲われると、制限電圧νが高くなってしまいます。一方、(b)の2ポート形では、内蔵された直列インピーダンスによってサージ電流がVLに流れるのを抑え、そのほとんどをサージ吸収素子SAに分流させるため、雷の大きさに関わらず安定した制限電圧 ν’を実現できます。
長所と短所
1ポート形は、部品点数が少なく安価である、また機器の負荷電流が避雷器内部を通過しないため、負荷電流の大きさを気にせずに接続できるなどの長所をもちます。一方、直列インピーダンスが存在しないため、雷サージ電流が大きいと制限電圧νが高くなって保護性能が悪くなるという、避雷器としては決定的ともいえる短所があります。
2ポート形は、多段保護になるため部品点数が増え比較的高価になる、さらに、直列インピーダンスの定格電流値によって負荷電流が制限される、などの短所をもちます。しかし、インピーダンスがラインに直列に挿入されるため、雷サージ電流の大きさに関わらず制限電圧ν’が低く抑えられ、保護性能が良いという長所があります。
形式の選定
前述のとおり、1ポート形と2ポート形にはそれぞれ一長一短があるため、使い分けが必要です。たとえば、給電対象の被保護機器のサージ耐力に着目して選定するとすれば、以下のようになります。
被保護機器が絶縁トランス、ヒータ、電磁開閉器、モータといったいわゆる強電機器の場合には、おおむねサージ耐力が高いので1ポート形でも保護できるでしょう。しかし、コンピュータ、計測器、通信機器といった弱電機器の場合には、アースとの間の耐電圧が低かったり、組み込まれている電源回路内に半導体が使われているためサージに対して弱いものがあり、2ポート形の採用が望ましいといえます。
【(株)エム・システム技研 開発部】