2000年7月号

小規模EIC統合システム

㈱オーネスト 技術部長 増本 和人/技術部システム2Gr長 川口 春樹
 
は じ め に
 バブル崩壊以降の低成長時代においては、それより前に形成されていた産業構造のパラダイムが大きく変化しつつあります。この変革ウェーブは、産業系プロセス制御監視システムにおいても我々に新たな変革を迫っています。その神髄は「コストパフォーマンスの良い、真に有効なシステムを客先に提供すること」であり、これを実現するシステムのみが採用され、生き残ることになるでしょう。その実現手段として、「ブランド志向から実力志向へ」・「システム構築の産地直送とパターン化」・「良い機能を持ったメーカー製品をマルチベンダー的に積極的にシステムに取り入れて行く水平展開型パートナーシップ」などが考えられます。筆者らは、とくに小規模水処理プラントなどに見られる電気・計装・計算機(EIC)統合システムにおけるコスト対システム機能のアンバランスが深刻な問題であること、そして、これに対するソリューションをユーザーに早急に提供する必要があることを感じています。これらの観点から、まず「監視 操作ソフト(エム・システム技研 形式:SFDN)」を活用した水処理システムの構築事例を述べ、次にこれを発展統合させた小規模次世代型EIC統合システムの基本的な考え方を説明します。

1.監視操作ソフトSFDNによる構築事例
 岡山県加茂川町…JR岡山駅から車で約1時間ほど内陸部に入った空気がおいしい、映画の「八つ墓村」を思い出すような自然の美しい町です。この美しい町の上水・薬注処理プラントは、2000年3月中旬に運転開始された最新の水処理施設です。その遠隔監視・操作制御システム構築の中核ソフトウェアとしてエム・システム技研のSFDNを適用しました。システム構築工期は、1999年11月に機能設計完了、12月末にはシステム出荷というように極めて短期間でした。その構成は現場操作室にパソコンを設置し、それにSFDNをインストールしています。また、現場の薬注制御用としてはワンループコントローラ(エム・システム技研 形式:ABA) 7台を、またアナログ入力およびデジタル入力用のリモートI/OをNestBusで接続しています(図1参照)。SFDNが持つ主な機能は、ワンループコントローラの個別チューニング機能、データのトレンド・バーグラフ表示・各種アラーム監視および日報月報作成などです。また役場の事務所との間は、リモートメンテナンス用市販ソフト「pcAnywhere」(Symantec社製、WindowsNT対応)を使用して遠隔接続され、リモートメンテナンスを可能にしています。このため、役場からの遠隔での監視および操作が可能になり、プラントトラブル時の早期復旧に役立っています。
 以下、本システムの構築に関する筆者らの所感を述べます。
 ●SFDNはわかりやすい。
 システム導入に先立ち、担当者がSFDNのマンツーマン特別講習(講師は本誌の「お客様訪問記」でおなじみの岡 五十さん)を受けたが、2日間の講習でマスターできたこと。これは、SFDNが完成度が高く、わかりやすくできていることを裏付けている。(岡さんの教え方が上手だったのかも・・・)
 ●SFDNは構築しやすい。
 本システムをカスタマイズを含めて、実質1か月で作り上げてしまったこと。手順どおり製作していけば、相当高度な機能まで、容易に実現可能である。
 ●すべての構成機器のインストラクションマニュアルが統一的に完備されている。
 (株)オーネストのように、最適なメーカー製品を組み合わせてシステムを構築して行くエンジニアリングハウスにとっては、このような条件が命綱。エム・システム技研の機器は安心して採用できる。

2.アプリケーション例
 10数年前、それまで個別に構築されてきた「電気」「計装」「計算機」各システムの統合が強く求められ、いわゆる「EIC統合システム」として新しいプラント制御の中核を担うようになりました。この流れは現在も受け継がれていますが、対象となるシステムの規模は大型プロセスが中心でした。しかし近年において、排水の総量規制、省エネ法改正など法的規制が強化され、小規模プラントといえども(とくに環境関連では)、帳票機能・PID制御監視機能・制御シーケンス機能の導入が図られようとしています。また、遠隔集中監視/リモートメインテナンス機能も積極的に採用され始めています。これはEICすべての機能を含んだものです。しかしながら小規模プラントゆえに、既存の大型プロセス向けの統合システムではコストの点で対応できません。現状では、電気制御・計装・データ処理ロガーなどは、個別に発注・構築され、そのインタフェースのわずらわしさ、またその結果、コストアップになるなどの問題が生じています。さきに挙げた加茂川町のシステムにおいても、電気制御が別メーカーであったために、取合い設計に時間を要し、現地試運転でも、数点のインタフェーストラブルが発 生しました。筆者らも、データロガー・計装制御・電気シーケンス制御を客先の求めに応じて個別に構築してきました。
 しかし、次ぎに列挙する理由から、小規模プロセスに特化したコストパフォーマンスの良い、新しいEIC統合システムのアーキテクチャの構築が可能と判断し、その検討に着手しました。
 ①SFDNのごとく、ロガー機能・操作監視機能に安定的に適用できるSCADA(制御/操作/監視ソフト)が安価に入手できるようになってきたこと。
 ②プログラマブルコントローラ(PLC)の進歩。高速演算・PID制御機能の保有・各種インタフェース/通信機能の保有。
 ③ テレメータリングシステムの進歩。
 ④ パネルコンピュータ・タッチ式パネル表示器などの高性能化。
 ⑤ 多重伝送ターミナルの進歩。
 システム化・構成機器選択の基本方針としては、次の諸事項を前提としました。
 ① システム機器メーカーの標準品を構成機器として採用すること(特注品は排除)。
 ② 安価で高機能であること(マルチベンダーでもかまわない)。
 ③ソフトウェアパッケージを準備すること。ただし、実現する機能は小規模プラントでの必要機能に限定する。
 ④「マウスレス・タッチパネル方式」・「リモートメンテ機能」を標準とすること。
 ⑤システム構築範囲(対応領域)がフレキシブルに組み合わせられること。
 ⑥トータルエンジニアリングの標準的構築手法を確立できること。
そして、検討の結果得られたシステム機能構成が、モデルS(図2)とモデルM(図3)です。モデルSは、PLCをメインコンポーネントとし、パネルコンピュータ、グラフィックパネルなどから構成されています。またソフトパッケージとしてはロガー用(MASCOT-C・PACK)と計装用(MASCOT-I・PACK)が用意されています。モデルSは階層ブロック構成が要求されるプロセスに適しています。モデルMはエム・システム技研の演算器/制御機器を中核として構成され、ソフトパッケージとしてSFDNを採用して行きます。モデルMは規模の大きいプロセスまた遠隔監視制御が要求されるプロセスに適しています。このほかに「多変数マルチプログラマブルコントローラ」もシステムに標準装備され、高級アドバンスド制御が可能ですが、紙面の都合上、詳細説明は割愛します。

お わ り に
 筆者らのテーマは、小規模プロセスに適用できるコストパフォーマンスの良い統合システムの提供、限界までのコスト低減の追求、および機能の安定化・オペレータにやさしいシステムの追求にあります。この機能限定型の小規模EIC統合システムを「EIC-Jr(ジュニア)」と命名しました。「EIC-Jr」の活用により、コスト的に対応できなかった客先プラントの統合的機能の実現、すなわち、自動化・省力化・自動レポーティングなどの各種ニーズに対応して行きます。今後は、エム・システム技研、デジタルなど有力機器メーカーとの水平パートナーシップをさらに強化して、よりよいシステム商品を提供し続けて行く所存です。     ■

本記事についての照会先:
 株式会社 オーネスト
 技術部長 増本 和人
 技術部システム2Gr長 川口 春樹
 〒802-0077 福岡県北九州市小倉北区馬借 2-6-1
 第8藤本ビル8F
 TEL/FAX:093-512-6360
 E-Mail: kawag@beige.ocn.ne.jp

MsysNetは、エム・システム技研の登録商標です。
戻 る 進 む

*. 本ウェブサイト上に掲載されている情報は、掲載した時点での情報です。記載内容はお断りなしに変更することがありますのでご了承ください。

*. 本ウェブサイト上の表示価格には消費税は含まれておりません。ご注文の際には消費税を別途頂戴いたします。

MG 株式会社エムジー

Copyright © 1992 MG Co., Ltd. All rights reserved.