2001年12月号 | ||||||||||
流 量 の お 話
| ||||||||||
(有)計装プラザ 代表取締役 佐 鳥 聡 夫 | ||||||||||
たとえば、化学プロセスで反応に影響するのは原料の体積ではなく質量です。その他質量流量計を必要とするアプリケーションはいろいろあります。一般的な体積流量計で質量流量を知るには、別途、測定対象の密度を測り、これと体積を掛け合わさなければなりません。しかも密度測定は、それ自体かなり面倒な仕事なのです。測定対象の温度対密度の関係が分かっていれば、温度測定により密度が推定できますが、他の成分が混じると、これも難しくなります。 この面倒な問題を一挙に解決したのが1970年代の終わりに登場したコリオリ式流量計です。
では、この力がどうして流量計測に役立つかというと、図1に示すように、振動するU字形パイプの中を流体が流れると、2つの脚の間で逆方向のコリオリの力が作用し、パイプがねじられます。コリオリの力は物体の質量と速度に比例するので、パイプのねじれ角度を測れば質量流量が分かります。 とはいえ、実は台風から振動パイプまで話をつなげるのには、かなり面倒な解説が必要です。誌面が限られていますので、例によって詳しい話は私の運営する計装プラザ(http://www.keisoplaza.co.jp/ )をご覧ください。
1)質量流量が直接測れる なんと言ってもこれが一番の長所です。複雑な補正システムなしに、流量計単体で質量流量が得られます。 2)高 精 度 指示値の0.15%という高い精度で測定できます。ただし、ゼロ点がずれている場合は、その分バイアス誤差となるので、ご注意ください。 3)流量範囲が広い 最大流量の1/100まで測定可能です。 4)多種類の流体に適合 一般的な液体のほか、高粘度液、スラリーにも使えます。電磁流量計のように、測定流体の電気伝導度の制約もありません。気体も、高圧下では密度が高くなり測定可能です。 5)直管部が不要 原理的に流速分布の影響を受けない測定方式なので、流量計前後の直管部が要りません。 6)脈動流に追従可能 応答が速く、流れに脈動成分が含まれていても追従できます。 7)流量以外の信号も得られる これはいわばおまけの特長ですが、振動パイプの固有振動数は流体の密度によって変わるので、密度信号も同時に得られます。また、パイプの弾性率補正のために温度も測っているので、流体温度も表示できます。 正に理想的な流量計としての条件をすべて備えているようですが、これにも他の流量計同様、次のようないくつかの弱点があります。 1)値段が高い パイプを曲げて振動させたり、わずかなねじれ角の差を検出したり、機械的にも電気的にも高度な技術を必要とするため、他の流量計より高価になります。ただし、体積流量計の出力を密度補正するシステムよりは安価です。 2)圧損が大きい 測定部は何の障害物もないパイプなので、一見圧力損失が少ないようですが、パイプ内の流速が早いため、かなりの圧力損失を生じます。パイプを細くし、流速を上げるのは、コリオリの力を強くし感度を上げるためです。 なお、高粘度液やスラリーの中には非ニュートン性流体と呼ばれるものがあり、単純な計算では圧損が予測できないことがあります。 3)振動の影響を受けやすい 逆説的な言い方ですが、測定に振動を利用するので、外部振動の影響を受けやすいのです。初期の製品はコンクリートの床に直接ボルト止めし、配管への接続はフレキシブルチューブを使ったほどでした。その後、図2に示すように、U字形チューブを2本向かい合せに配置して共振させ、外部振動の影響を排除する方法が考案されました。この場合2本のチューブを同じ状態に保つ必要があり、片方に気泡や沈殿物が溜まるとバランスが崩れ、計測誤差を生じます。 4)掃除がしにくい 流路が曲がっているので、内部の清掃がしにくいと指摘されることがあります。この問題は、流路が直線的で、かつ1本しかないシングルチューブ型が開発されて解決しましたが、この形式は外部振動の影響に弱いので、取り付けはメーカの指示どおり慎重に行う必要があります。システム設計の際注意が必要です。
また変わったアプリケーションとしては、建設現場から出る濁水の濃度管理があります。掘削した土砂などを含む濁水を直接放流することは現在禁じられており、放流前に濁水中の土砂を凝集剤で固め分離する必要があります。濁水の密度は、含まれる浮遊物質の量に比例するため、流量と同時に密度を監視し、ちょうど適当な量の凝集剤を添加しています。 以上述べたように、質量流量の計測を切実に必要とする分野では、この流量計は大いに歓迎され、歴史が最も浅いにも関わらず、今や主要な形式として不動の地位を占めるまでになりました。 ■ |
| |||||||||
|