2002年1月号 | |||||
| |||||
宮 道 繁 (株)エム・システム技研 代表取締役社長 | |||||
あけましておめでとうございます。 バブル崩壊といわれて11年が過ぎ去り、新しい世紀に入っても、まだ土地価格が下がり続けているのは一体なぜなのか、考え込まされてしまいます。ともあれ土地神話が消えて、土地担保でしか融資できなかった日本の銀行は、不良債権処理に追われ、本来の姿に戻れないまま合併が進み、巨大銀行が生まれました。 そこへ携帯電話、パソコン、インターネットのマーケットが急速に拡大して、ITブームが到来し、電子関連産業が活気づき、不況脱出が現実のものになると思われました。その結果、世の中は非常に便利になり、情報が溢れるようになりました。しかし、バーチャルの世界と実物の流通の世界とはどこかで思惑違いがあったのでしょう。ITマーケットが失速し、株価が大幅に下落する結果となり、日本の銀行は再び保有株式の含み益が大きく損なわれ、苦境に立たされています。 その上に、アメリカで発生した同時多発テロで、先が見えにくくなっています。日本国内は、産業を引っ張ってきた電機メーカー各社も半導体不況をもまともにうけて、大幅なリストラを迫られていると伝えられています。 このような環境で2002年の新年を迎えたわけですが、小泉政権下で、累積財政赤字666兆円の解消と、郵貯、厚生年金、国民年金等国民の財産を食い尽くす特殊法人の大改革がスタートしようとしています。ここからも何やら痛みがぞろぞろ出てきて、経済の見通しがなかなか立たない年になりそうです。 私たち産業陣は、今が踏ん張り所ではないかと考えます。よく見ますと、システムLSIは、巨大な回路を1チップの中に収容し、便利で安価、豊富に入手できる環境ができあがっていました。その上、このLSIには、高度な通信技術や情報処理技術まで凝縮されているので、これらのチップを使いこなす技術さえあれば時代が求める新製品を容易に創れるため、エム・システム技研にとっては願ってもないチャンスがやってきたように思います。 プラグインユニットの中に電子部品をコンパクトに収めて、変換器を中心に様々な計装用機器を創ってきたエム・システム技研は、これらのLSIを組み込むことで、オープンネットワークの各種通信機能をもったリモートI/Oや、それら通信ネットワーク相互を結ぶネットワーク変換器を続々と商品レパートリーに加え、より高度な計装を構成できる世界の実現に向かって走り始めています。 半導体メーカー各社が、便利さを競って、得意なシステムLSIを大量、安価に供給するようになったからではないかと思うのですが、その昔、大量のケーブルを使って計測信号を中央に集めていた計装システムは、今や小形コンパクトで通信機能をもち、かつ、経済的にも優位なリモートI/Oと、パソコンとで構成されるようになってきました。パソコンには、Windows上で走る美しくて便利なSCADAソフトのインストールされたものが100万円程度で販売されるようになり、中小のシステムインテグレータにとって成長のチャンスといえるでしょう。 事務機としてのパソコン側からは、イーサネットLANが大量に使われて、工業計器側から見ると破格の値段で高機能を提供してくれます。またFA側からは、PLCで大量に使われているオープンフィールドネットワークが提供され、それらがLSIとともに機能アップして、計装の世界を一変させたというのが本当のところではないかと思います。 通信革命は止まる所を知らず、携帯電話、PHSで情報伝送の無線化を果たし、ケーブル通信ではISDN、ブロードバンドなどで、高速化を実現し、それらの豊富なインフラが、それに対応した集中管理用のデータ伝送機器のマーケットを開放しています。 エム・システム技研は、工業計測とローカルネットワークと広域ネットワークを有機的に結びつけて、大規模から中小規模にわたり経済性を失わない集中管理システムを自由に組み立てられる世界を実現するために、計装システムの構築に便利な諸々のコンポーネントを取り揃えて、迫り来る計装新時代に打って出るべく、その開発作業を急ピッチで進めております。このあたりの具体的な話は、この『エムエスツデー』に順次掲載して参りますので、よろしくご愛読のほどをお願い申しあげます。 ■
|
| ||||