2002年1月号 | ||||||||||
流 量 の お 話
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(有)計装プラザ 代表取締役 佐 鳥 聡 夫 | ||||||||||
たとえば、車のガソリンを買う場合を考えましょう。給油ポンプに瞬時流量計が付いていて、その指示値が50L/minになるよう調節しながら1分間給油したとします。これで50Lのガソリンを買ったと納得できるでしょうか?「ポンプの起動から一定の流量値になるまでの給油量はどうなるのか」とか「給油中に流量の指示が振れていたじゃないか」など次々疑問が出るのは必定です。 ガソリンに限らず、液体を正確に受け渡すには、やはり計量カップで1杯ずつ測り取るような仕組みが必要です。実はこの計量カップを内蔵した流量計が今回解説する容積式流量計です。名前の由来は英語のPositive Displacement Meter(略称PD Meter)、すなわち流量計に内蔵された計量室の容積がはっきりと決まっていることから来ています。
図1に示すように、ケーシングの中に1対のまゆ形回転子があります。回転子には歯車(パイロットギア)が組み付けられていて、これが相互にかみ合い回転子が擦れ合わないようにしてあります。また摩擦を避けるため、回転子とケーシング内壁の間にわずかの隙間が設けられています。 流体がケーシング内に入ると回転子は流体に押され、回転子は外側に回転します。すると回転子とケーシング内壁との間に計量室A・Bが交互に形成されます。その結果、流体はA・Bいずれかを通り下流側に排出されます。これは計量カップで1杯ずつ測り取る作業を連続的に行うのと同じです。回転子の回転数を数えれば積算流量が分かります。 測定対象となる流体は主に液体ですが、オーバルギヤ式とルーツ式の場合は気体用としても使えます。
1)精度が高い 計量カップで測るのと等価ですから、測定精度は指示値の0.5~0.2%という高いレベルです。 2)高粘度でも使用できる 多くの流量計では、流体の粘度が高くなると、精度を保証できる流量範囲が狭まります。ところが、容積式流量計の場合は、粘度が高くなると回転子とケーシングの隙間からの漏れが減り、精度を保証できる流量範囲が広がります。 3)直管部が不要 測定原理上、計測値と管路内の流速分布とは無関係なので、差圧式流量計で要求されるような上下流直管部を必要としません。 4)電源が不要 流体からエネルギーを得て動作するため、積算表示するだけであれば外部電源は不要です。ガソリンスタンドや灯油販売車のように、引火性のガスが存在する可能性の高い場所で使用するには、ありがたい特長です。 次に短所について述べます。 1)異物に弱い 流体中に固形物があると回転子とケーシングの間に挟まり、回転子の動きを止めます。繊維状の異物も回転軸に絡まって回転子の動きを止めるので禁物です。 したがって、通常は上流側に異物除去用のストレーナを設置します。ストレーナの点検・洗浄の際には流れを止める必要があり、流れを止められない場合はバイパス配管を設置します。図2に標準的な設置例を示します。 2)定期点検が必要 容積式流量計では、定期的に軸受けや回転子の状態を点検する必要があります。形式によっては液のシールに摺動部品を使うこともあり、その部品は当然磨耗します。 流量計の機構が複雑なため、分解・点検・組立・実流校正作業を自社内で行うには、技術レベルの高い作業者を必要とします。これらの作業をメーカーに依頼することも可能ですが、メーカーで整備完了するまでの期間、操業に支障がないか、あらかじめ検討すべきです。 3)低粘度の限界 高粘度の液体に使える反面、低粘度になると回転子とケーシングの間からの漏れが増え、精度が低下します。ピストンや摺動ベーンを用いるタイプは漏れが少なく、ガソリン程度までは測れますが、液化ガスのような低粘度液体は測定が困難です。 4)コストが高い 流量計本体もさることながら、ストレーナ、バイパス配管、設置工事などを勘案するとかなりの費用になります。また定期点検に要する費用も加えると、TCO(Total Cost of Ownership)が高いことは否めません。
長所を発揮できる分野では、今後ともシェアNo.1の地位を保つことでしょう。 容積式流量計の出力信号は基本的にパルスなので、瞬時流量を知りたい場合は、図3に示すように信号変換器でパルス信号をアナログ信号に変換します。 ■ |
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